2018年11月10日。場所は滋賀県にあるダイハツのテクニカルセンター。ここではダイハツ技術会の記念イベントが開催されていた。そのなかで発表されたのが、完全にレストアを完了した往年のレーシングカー“ダイハツP-5”だった。
このダイハツP-5とは、ミッドシップのレーシングカーで1968年の第5回日本グランプリでは、総合10位という成績を収めている。
なんだ10位かと思ってしまうところだが、同じグリッドに並んだのは、日産R380、トヨタ7、ポルシェ906という錚々たる名門たち。
それもトヨタ7が3ℓ V型8気筒/330ps、R380が2ℓ直列6気筒/220ps、ポルシェ906が2ℓ水平対向6気筒/210psという中で、ダイハツP-5は直列4気筒、わずか1.3ℓの140psというエンジンを搭載。
こんな小さなエンジンで、世界を相手にし、そして総合10位で完走して見せたのだ。
そんな破天荒な、と考えるところだがダイハツにはこれまでP-1から始まるレース参戦で培ってきた技術があり、軽量&コンパクトであることで得られる空力性能の高さ、燃費のよさなどを味方にできるとの判断もあったようだ。
いずれにしても、小さなクルマの可能性の高さをはっきりと印象づける戦いぶりとなった。
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そんなP-5だが、10年前に一度レストアされている。しかしその時にはエンジンが見つからず、走る状態ではなかった。もっと正確にいえば、エンジンもないことから、展示用として復元されたもの。
それがこのほど自動車工房である“山本自動車”からP-5用エンジンR92B型が発見され、一挙にP-5を走らせようという計画が生まれた。
レストアに関しては、ダイハツ技術研究会を中心として有志によって行なわれた。エンジン外観はかなりの劣化を感じさせるものだったが、エンジン内部に大きな問題なく、交換部品の手当てやハーネス系の構築が大きな作業となっていた。また、10年前に復元されたボディは、あくまでも展示用であったことからメンテナンス性は考慮されておらず、レーシングカーの構造とは異なる部分もあった。そのことから、改めて作り直した部分も少なくなかったという。
全体の作業は若いエンジニアが中心となったが、ディストリビューターなど現代にはないパーツに触れたりその機能を考えたりと古の技術への理解を深めることができた模様。さらに退職した当時の開発者へのヒアリングなどから、現代では想像もできない苦労や工夫の数々を勉強することができたという。
エンジンに火を入れると、1.3ℓとは思えないほどの力強い爆音。静かに鎮座していた往年のマシンが、一気に血流をみなぎらせるかのようだ。
その後は、テストコースでの短いテストランを行ない、P-5完全復元の証を示した。
全長3850mm、全幅1650mm、全高990mmのボディもまた、競合からはふた周りほど小さい印象。車重はわずか510kg。登場から50年を経過する現代に現れたちび助は、まさに小さなクルマの夢を伝える存在となった。
なおこのモデルは、2019年の東京オートサロンに展示予定だとアナウンスされた。会場ではエンジンがかけられないのが残念だ。
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