現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【東京モーターショーに登場した幻の国産スポーツカー5選】市販化が熱望された「童夢‐零」「MID4」「RX500」を現在見学できる場所は?

ここから本文です

【東京モーターショーに登場した幻の国産スポーツカー5選】市販化が熱望された「童夢‐零」「MID4」「RX500」を現在見学できる場所は?

掲載 7
【東京モーターショーに登場した幻の国産スポーツカー5選】市販化が熱望された「童夢‐零」「MID4」「RX500」を現在見学できる場所は?

高い評価を受けていたにもかかわらず市販化されなかった幻のモデルたち

これまで毎年のように、数多くのクルマが誕生してきました。記録的に販売台数を伸ばしてモデルチェンジを繰り返し、長寿モデルとなったクルマもあれば、反対に高い評価を受けながらも販売台数を伸ばすことなく1代限りで姿を消したモデルもありました。そうした販売モデルとは別に、1台だけ作られたクルマ、私たちがいくら欲しいと思っていても手に入れることができない、言わば「幻のクルマ」も少なくありませんでした。今回は、そんな記憶に残る「幻のクルマ」を振り返ってみることにします。

【幻の限定国産スーパースポーツ3選】1台だけ販売したホンダ「NSX-R GT」のほかにも幻の市販車が存在していました

モーターショーには数多くのコンセプトカーが登場していた

2023年からジャパン・モビリティ・ショーへと名を変えた東京モーターショー(TMS)には毎回のように、数多くのコンセプトモデルが出展されてきました。その中には現実味の薄い、まさにショーのために誕生したコンセプトモデルもあれば、将来的な市販を目指したモデルも少なくありませんでした。

そんなコンセプトモデルの中で印象に残った1台が、1970年の第17回東京モーターショーに出展されていたマツダ「RX500」でした。同年のTMSにはトヨタと日産、国内ビッグ2からトヨタ「EX7」や日産「270X」といったミッドシップのコンセプトカーが出展されていましたが、2ローターのロータリー・エンジン(RE)をミッドシップに搭載したRX500の方が随分と現実的でした。

と言うのもライバル(?)が、内外装ともに超未来的なデザインだったのに対して、RX500は、鋼管スペースフレームだったことを別にすれば、スタイリングもインテリアも、随分現実的なものに仕上がっていましたし、実験車という役割からカウルワークには各種のプラスチックを使用するなど先行開発車としての「実務」を担当しながらも、同時に当時のマツダが進めていたREのフルラインナップ化についてもフラッグシップという位置づけでもあり、販売に向けては多くの期待がよせられていました。

メカニズムの概略ですが、先に触れたように鋼管スペースフレームのミッドシップに「カペラ」と同じ573cc×2ローターの12Aエンジンを搭載し、サスペンションは前後ともにパイプアームを組み合わせたダブルウィッシュボーン式と、当時のレーシングカーに倣ったパッケージとなっていました。ボディのアウターパネルは樹脂製で、左右のドアはフロントのバルクヘッド上部とフロントウインドウ上部の2カ所にヒンジを持つバタフライドア、そしてヘッドライトはリトラクタブル式で、ミッドエンジンと合わせてスーパーカーの「三種の神器」を全て備えていたことになります。

3リッターV6エンジンをミッドに搭載した4WDのスーパースポーツ

そんなRX500以上に現実的だったコンセプトカーが、第27回となる1987年のTMSに出展されていた日産の「MID4-II」。日産が研究開発を進めているさまざまな新技術を盛り込んだ実験車でしたが、「II」というからにはもちろん「I」もありました。こちらは1985年のフランクフルトショーでお披露目されています。両車は、エンジンをミッドに搭載した4輪駆動という基本パッケージは共通していました。しかしIは日産が当時、主にサファリラリーにスポット参戦していた世界ラリー選手権(WRC)の最上級カテゴリーとして企画が進められていたグループSへの参戦を期して開発されたのに対し、IIはIの反響が大きかったことで、実際にスーパースポーツとして市販すべく開発された、という違いもあり、スタイルも含めて大変更が施されていました。

メカニズム的に見ていくと、Iでは前後ストラット式だったサスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンに、リアもマルチリンク式へと変更され、搭載するエンジンも3L V6ツインカム(V6なので4カムシャフト)のVG30DEからIIではツインターボで武装したVG30DETTとなり、搭載方向も横置きから縦置きにコンバートしています。前後を逆に搭載し、プロペラシャフトからセンターデフを介して前後輪を駆動するレイアウトとなり、エンジンの出力は230psから330psにパワーアップ。スタイリングも一新され、スポーツ・クーペからミッドエンジンをアピールするスーパースポーツに変身していました。

市販化に向けた準備が進んでいた

さらによりリアリティの高かったコンセプトカーとして、いっそう期待の高かったモデルが1970年のTMSに出展されたいすゞの「ベレットMX1600」でした。その前年、1969年のTMSに「ベレット1600MX」の名で出展されていたモデルの後継で、より一層市販モデルとしての佇まいを見せていました。

1969年の1600MXはトリノに本拠を構えるカロッツェリア・ギアがデザインとボディ架装を担当し、日本から送られた箱型断面のサイドシルとバルクヘッドで構成されたシャシーにスタイリッシュなボディを構築しています。ただしスタイリッシュではあったものの、当時の国内では少し進み過ぎたデザインとなっていました。

この1600MXをベースに開発されて1970年のTMSでお披露目されたMX1600は、リトラクタブル式のヘッドライトを固定式の4灯式ヘッドライトに変更し、リアの大きなガラスウインドウをベネシャンブラインドに替え、さらにボディパネルをスチールパネルからFRPカウルに変更。いずれも軽量化には大きく寄与していました。エンジンは、「117クーペ」と共通の1.6L直列4気筒ツインカムで最高出力は140ps。それをミッドシップに搭載するシャシーは、基本的にレーシングカー(グループ6のレーシング・スポーツ)のいすゞ「ベレットR6クーペ」と共用していてフロントサスペンションもR6と同様のダブルウィッシュボーン式でしたが、リアサスペンションはストラット式に交換され、市販モデルに向けての準備が進んでいることが窺われました。

国内屈指のコンストラクター、童夢が手がけた2台のスポーツカー

これは既存の自動車メーカーではなく、レーシングカーの製作なども手がけるコンストラクター(レーシングカー製作会社)で、京都に本拠を構える童夢が手がけたモデルですが、1978年のジュネーブショーでお披露目された「童夢-零」も忘れられない1台でした。

林みのるさんが立ち上げた童夢は、国内屈指のコンストラクターとしてル・マン・カーやF1マシンなど数々のレーシングマシンを生み出してきましたが、その第一歩となったモデルがミッドシップ・スポーツカーの童夢-零でした。

メカニズム的にはフレームにボディカウルを組み付けるパッケージでしたが、レーシングカーに多く見られる鋼管で組んだスペースフレームではなく鋼板を溶接してくみ上げたフレームを採用していました。これは将来的にアルミハニカムを使ったフレームへの発展を考えてのことだったようです。このフレームに組み付けるサスペンションは前後ともにダブルウィッシュボーン式で、コイル/ダンパー・ユニットは前後ともにアウトボード式。フロントは一般的でしたがリアはアップライトのトップにユニットのボトムを組み付ける特徴的なレイアウトとなっていました。

搭載されたエンジンは日産のL28型で、公称された最高出力は170psでしたが、排気ガス浄化デバイスが組み付けられていて実効出力はもう少し低かったと思われます。しかしメーカーとのコネクションの無い、新興のコンストラクターにとってL28は、最も手に入れやすかった「高性能エンジン」だったことから、こうした選択となったようです。童夢としてはナンバー取得を考えていたようですが、運輸省(現・国土交通省)の対応が厳しく、結局はナンバー取得を諦めざるを得なくなったようです。

F1用エンジンをベースにした童夢の新たなスーパーカー

そんな童夢ですが、零の発表から11年後の1989年に、新たなモデルを発表することになりました。同年のTMS、富士重工(現SUBARU)のブースでお披露目された「ジオット・キャスピタ」です。ジオットというのは京都の服飾メーカー、ワコールが出資してできた会社でプロジェクトのプロデュースを担当し、実際の設計・開発は童夢が設立したジオット・デザインが担当する格好で進められました。

富士重工のブースでお披露目されたのは、搭載するエンジンが、スバルがイタリアのモトーリ・モデルニとF1用に共同開発した3.5Lフラット12ツインカム(フラット12だから4カム)60バルブだったため。そのパッケージングは最新のスーパースポーツカーの「定義」に則っていて、カーボンファイバー(CFRP)で成形されたボディ/モノコックにハイパワーなミッドエンジンを搭載するというもの。F1用がベースでロードゴーイング用にチューンし直されていましたが、それでも公称出力は450psと十分なものがありました。

CFRP製のモノコックに組み付けられるサスペンションは、前後ともにダブルウィッシュボーン式でプッシュロッドを使ってコイル/ダンパー・ユニットを作動させるインボード式となっています。搭載するエンジンですが、1号機は前述したようにスバル-モトーリ・モデルニ製のフラット12を搭載していましたが、プロジェクトから富士重工が抜けたのち、2号機では英国のレーシングエンジンビルダーであるエンジン・デベッロップメント社、通称「ジャッド」のGV型3.5L V10ツインカム(V10だから4カム)に換装されています。こちらもロードゴーイング用にチューンし直され最高出力は575psと公称されています。

市販されることなかった幻のクルマにもミュージアムで会える

今回紹介した5台(関連を含めて7台)は、いずれも期待は高かったものの、市販されることなく現在に至っています。そのうち、マツダRX500はレストアされて広島市にあるヌマジ交通ミュージアムに走行可能な状態で収蔵され、時に触れて展示されています。日産MID4-Iは実際の製作を手がけた高田工業に保管され、同MID4-IIは神奈川県座間市にある日産ヘリテージコレクションに収蔵展示されています。

また童夢-零とジオット・キャスピタの2号機は米原市にある童夢が収蔵し、本社ロビーなどで時おり展示しています。またジオット・キャスピタの1号機は石川県小松市にある日本自動車博物館に収蔵展示されています。いすゞ ベレットMX1600に関しては現存するとの情報もあり、こちらも分かり次第紹介したいと思いますが、「R1」オーナーとして個人的には2003年のTMSに出展されたスバル「R1e」が気になるところです。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
メルセデス、ラスベガス初日の好調は「なんでか分からない」予選に向けて”ダスト乞い”?
motorsport.com 日本版
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
Moto2チャンピオンに輝いた小椋藍、日本人初となる『トライアンフトリプルトロフィー』を受賞
AUTOSPORT web
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
Auto Messe Web
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
なんとも物騒な「煤殺し」ってなんだ!? トラックドライバー御用達アイテムの正体とは
WEB CARTOP
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
東京海上日動、顧客連絡先不明の代理店を新たに2社確認 合計124社に
日刊自動車新聞
WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
WRC最終戦「ラリージャパン2024」開幕! 日本勢の「TGRチーム」活躍に期待! 会場はすごい熱気に! 高橋プレジデントや太田実行委員長が語る! 今大会の「見どころ」は?
くるまのニュース

みんなのコメント

7件
  • bel********
    いすゞのベレットMXは、2012年のカーグラフィックで見たので、誰が所有してるかは分からないけど現存してますね。ベレットR6もサーキット走行可能な様にレストアしてましたね。
  • nih********
    童夢零は名前もエクステリアデザインも最高にカッコいいと、個人的には思います。
    歴代コンセプトカーの中で最も好きなモデルの一つかも。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

666.0901.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

89.51119.0万円

中古車を検索
RXの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

666.0901.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

89.51119.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村