現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > ホンダF1山本MD前半戦総括(1)分岐点はフランスGP。今だから明かす、フェルスタッペンにだけ起きたパワーロス症状

ここから本文です

ホンダF1山本MD前半戦総括(1)分岐点はフランスGP。今だから明かす、フェルスタッペンにだけ起きたパワーロス症状

掲載 更新
ホンダF1山本MD前半戦総括(1)分岐点はフランスGP。今だから明かす、フェルスタッペンにだけ起きたパワーロス症状

 レッドブル・ホンダのシーズン序盤は、開幕戦オーストラリアGPでいきなり3位表彰台に上がったものの、メルセデスとの実力差を毎回のように実感させられていた。優勝が期待された第6戦モナコGPでも、ペナルティを受けたとはいえ4位が精いっぱい。もはや今季は勝てないのでは、という空気が流れて始めた第9戦オーストリアGPで、堂々の初優勝を遂げた。

 その後も苦手なはずの第10戦イギリスGPで4、5位入賞、続く第11戦ドイツGPで2勝目。さらに初ポールを獲得した第12戦ハンガリーGPは、最後に逆転を許したもののメルセデスを完全に本気にさせたレースだった。それら一連の活躍への分岐点となったのが、「(第8戦)フランスGPで(マックス)フェルスタッペンにだけ起きた、パワーロス症状だった」と、山本雅史マネージングディレクターは舞台裏の真実を語ってくれた。

レッドブルF1がアロンソ起用を一時検討との報道。ガスリーの後任候補として接触か

──────────

──前半戦を終えて、今の思いをお聞かせいただけますか。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):前半戦を振り返って一番思うのは、フランスGPがターニングポイントだったということですね。

──というと?
山本MD:あそこのスタートでフェルスタッペンがシャルル・ルクレール(フェラーリ)に並んで、一瞬抜きかけたことがあったでしょう。覚えていると思いますが。ところがその直後に、軽くちぎられてしまいました。

 実はあの時ホンダのパワーユニットは、オーバーヒートしていたんですよ。マックスのだけ。今だからこそ言えますが。それはどうしてか。なぜそんなことが起きたのかをレース後に解析して、そしてオーストリアに臨みました。

──そういうことだったんですね。
山本MD:もともと4台ともに、熱の兆候はあったんです。

──その前の第7戦カナダGPで、パワーロスの症状が出ていましたね。
山本MD:そう。そしてフランスではマックスだけが、スタートで大幅にパワーが落ちました。まさにパワーロスの症状がデータで残っていて、1周目のスタート直後になぜそんなことが起きるんだと。そこでオーストリアに際しては、オーバーヒート対策を万全にやりました。

 4台走らせるのはこういう時にメリットがあって、膨大な4台のデータを研究所で検証してくれました。オーストリアはものすごく暑かったですが、そういう環境でも本来の性能を発揮できるよう、ぎりぎりのセッティングをしてくれた。それがオーストリアの勝利に、直結したわけです。

 同時にあのレースで、我々のパワーユニットからここまで性能を引き出せることもわかり、イギリス、ドイツ、そしてハンガリーと、いいレースができるようなりました。初優勝後のイギリスについては、「パワーサーキットだから、うまくいっても表彰台かな」と、田辺(豊治/ホンダF1テクニカルディレクター)と話してたぐらいだったんですね。実際、勝利は無理でしたけど、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)に当てられさえしなければ、2位だったかもしれない。そういうレースを見せてくれたおかげで、僕らにも手応えが感じられました。

 カナダのパワーロス、そしてフランスでマックスだけが極端にパワーが落ちた。そこで学習して、オーストリアに行きました。あれが分岐点で、そこから今までいい流れが続きましたね。

──オーストリアからの4戦、コース特性は全然違いますし、暑かったり雨だったり涼しかったり、コンディションも全然違った。なのにすべてのレースで、トップ争いに絡めている。この4戦の獲得ポイントは、フェルスタッペンが一番ですし。そこが、いいですよね。

山本MD:いいですよね。「暑くならないと、勝てないかな」なんて冗談半分で言っていたけど、そんなことなかったですし(笑)

■実りのあった前半戦。印象的だったのは「コースアウトしたハミルトン」
──冬のテスト、開幕戦当時から、マシンパッケージとして大きく進化した印象です。
山本MD:本当に、そう思いますね。

──開幕戦で表彰台に上がった時も、「なかなか簡単には勝てないね」と、言ってましたよね。
山本MD:そう。それが実感でした。もともとメルボルンは特別なコースですから、車体やパワーユニットの本当の実力はなかなか測りにくい。冬のテストは、ほぼほぼうまくいってましたから、メルボルン入りした時も(ヘルムート)マルコ博士や(クリスチャン)ホーナー代表は、「うまくいけば3位表彰台だな」と言っていて、実際そうなりました。

 それはそれでよかったですが、同時に勝つのは大変だなと実感させられました。もちろん初表彰台でしたから、本当にうれしかったですけどね。しかし、ハンガリーの2位は悔しさしかない。人って、恐いですよね(苦笑)。

──トップのメルセデスとの差は、確実に縮まっているという印象ですか?
山本MD:縮まってはいると思います。開幕戦当時は、メルセデスについて行けるという感覚すらなかった。HRD Sakura(栃木県の本田技術研究所)の開発者たち、レース現場のエンジニアたちが、本当にいい仕事をしてくれた。それに尽きますね。

 そして前半戦最後のハンガリーでは、メルセデスのルイス・ハミルトン、レッドブル・ホンダのマックスが、真っ向バトルを繰り広げてくれた。非常に印象的だったのは、レース中にハミルトンが飛び出したシーンがあったじゃないですか。あれは、凄いですよね。もし開幕序盤だったら、軽く抜かれて、ハミルトンが飛び出すなんてことはもちろんなく、あっという間にちぎられて終わっていたでしょう。それがあのレースでは、並んで入って行った。実りのあった前半戦だったと思います。

※ホンダF1山本MD前半戦総括(2)に続く

こんな記事も読まれています

中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
VAGUE
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
WEB CARTOP
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
Auto Messe Web
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
レスポンス
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
AUTOCAR JAPAN
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
AUTOCAR JAPAN
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
AUTOSPORT web
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
AUTOSPORT web
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
くるまのニュース
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
VAGUE
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
WEB CARTOP
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
GQ JAPAN
道東道直結の“新道”がついに完成! 高速道路開通と同時に国道「8.8kmバイパス」の残り区間が拡幅
道東道直結の“新道”がついに完成! 高速道路開通と同時に国道「8.8kmバイパス」の残り区間が拡幅
乗りものニュース
[サウンドユニット・選択のキモ]メインユニット編…交換する意義を考える!
[サウンドユニット・選択のキモ]メインユニット編…交換する意義を考える!
レスポンス
【F1分析】速いチームがコロコロ変わる。実に難解だったラスベガスGP。鍵はもちろん”タイヤの使い方”だけど……
【F1分析】速いチームがコロコロ変わる。実に難解だったラスベガスGP。鍵はもちろん”タイヤの使い方”だけど……
motorsport.com 日本版
フェルスタッペンが4年連続F1チャンピオンに輝く。メルセデスがワンツー飾る【第22戦決勝レポート】
フェルスタッペンが4年連続F1チャンピオンに輝く。メルセデスがワンツー飾る【第22戦決勝レポート】
AUTOSPORT web
“3、4番手”のマシンでもタイトル獲得。フェルスタッペンの底知れぬ才能にマルコ博士も絶賛「彼の実力だけで勝ったレースが4つほどあった」
“3、4番手”のマシンでもタイトル獲得。フェルスタッペンの底知れぬ才能にマルコ博士も絶賛「彼の実力だけで勝ったレースが4つほどあった」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村