「エッセ」だけで行われる熱き戦いが再び
2020年に初開催となり、今年2シーズン目を迎えることとなった「オール・ジャパン・エッセ・カップ(AJEC)」は、その名の通り、ダイハツ・エッセだけで行われるシリーズ戦で、まさに”エッセ使い日本一”を決めるシリーズとなる。
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ダイハツ・エッセとは、6代目ミラをベースとしたシンプルな実用車として2005年から2011年まで販売された5ドアハッチモデル。最高出力58ps/最大トルク6.6kg-mを発揮するKF-VE型エンジンに車重700kg台の軽量なボディが相まって軽快に走るモデルだ。中古市場のタマ数も多く価格もリーズナブルで、気軽にモータースポーツを楽しむのに最適な一台である。
昨年はシリーズ初開催ということで、ジムカーナ、ヒルクライム、サーキットトライアルという異なる競技を3回のワンデーイベントとし、1イベントに2戦ずつの決勝走行、3大会計6戦が行われた。今シーズンは、全4大会8戦というスケジュールで開催が予定され、競技内容は昨年同様、ジムカーナ、ヒルクライム&ダウンヒル、サーキットトライアルがあり、さらに新たなSSジムカーナという競技が加わることとなっている。
2021年開幕戦は恵那モーターパークでジムカーナ
そのAJEC開幕戦は、5月2日に岐阜県恵那市にある恵那モーターパークでのパイロンジムカーナからスタートとなった。今回からオープンクラス、そしてエッセ以外の新規格軽自動車での参戦が可能なkrt.66およびkrt.66Tといったクラスが設けられ、エッセ以外のエントリーも受け付けることとなっており、エントリーは25名を数えることとなった。ただ、スケジュールが他のイベントとかぶったこともあって、昨シーズンのタイトルを獲得した加藤正夫選手を始め、シリーズ上位に入っていた中川勇気選手、保科学選手、安部由和選手といった有力選手が不在という状況になってしまった。
今回からエッセもクラス分けを行っており、初心者やエンジョイしたい人向けの「E3」クラス、エンジン・ミッション・LSD・ECUを変更していない無改造車両の「E2」クラス、車検適合範囲での何でもありの「E1」クラスと、3クラスが用意されていた。
ジムカーナ・ラウンドは、第1、2戦の2本のベストタイムで得たポイントの合計で順位を競うことになる。つまり、まずは第1戦、練習走行2本ののち決勝走行2本となり、決勝走行でのタイムの良いほうでの順位でポイントを獲得。続いての第2戦はコースレイアウトを変更して行われ、同じく練習走行2本そして決勝2本を走り、ベストタイムで順位を競いポイントを獲得する、というものだ。
恵那モーターパークのある笠置山周辺は、朝から雨が降ったりやんだりの不安定な空模様となっていた。そのため路面もウェットからハーフウェットを行ったり来たりという状況が続く。
1戦目のAコースでは、西脇裕一選手(#23 KRT・YHT甲信飯田・ウエストSR・SP青エッセ)がE1クラスのトップ。1本目はパイロンタッチとなってしまったものの、2本目できっちりまとめて1分切りの59秒38のタイムで走り切った。その西脇選手に続くのは59秒台のタイムを出したもう一台である行徳 聡選手(#18 Purple Esse/59秒74)、そして1分1秒15で武藤功二選手(#22 K’S BRIG エッセ)が追いかける展開となった。そしてコースが変更となった2戦目のBコースでは、1本目に行徳選手が55秒93のタイムでトップに、そして武藤選手が2番手タイム(56秒49)でこれに続く。2本目は行徳選手は自身のタイムを上回ることができず、武藤選手は逆に2本目に55秒75でトップに浮上し逆転となった。
ただ、AJECのリザルトは、タイムの合算ではなく各戦で得たポイントでの合算だったため、A、Bともに2位だった行徳選手と、3位、1位となった武藤選手は同ポイント。優勝決定戦がこのBコースでの仕切り直しとなり、これで競り勝った武藤功二選手(#22 K’S BRIG エッセ)がエッセカップ今季初勝者となった。
All Japan Esse Cup第2ラウンド「林道アタック・ラウンド」は6月6日(日)長野県木曽地方で開催となる。今回参戦台数2台のみであったオープンクラスについては、なんでもありのオープンだけでなく、ヴィッツやデミオなどの1500cc以下の車両を対象とした「Compact 1.5」、そしてスズキ・スイフトスポーツのワンメイククラスとして「Compact S」というクラスを新たに増設しており、エッセを中心に、参加車両ニーズを掘り起こしていくということのようだ。
6月の第2ラウンドに続き、シリーズ第3ラウンドは9月19日(日)、モーターランド鈴鹿でのサーキットトライアル。そして最終ラウンドは12月12日(日)、愛知県のキョウセイドライバーランドでのSSジムカーナとなる。
エッセカップに参戦するフレッシュマンたち
2シーズン目の開幕戦を迎えたオール・ジャパン・エッセ・カップ(AJEC)には、初参戦の面々もいた。今回はそのなかでも、初めての自動車(4輪)競技参戦という2名の方をピックアップしよう。
草間りさ選手(E3クラス/#2 602PTG レンタル エッセ)
モータースポーツになにか参加してみたいということで、今回人生初のモータースポーツ競技に参戦となったのは、草間りさ選手(E3/#2 602PTG レンタル エッセ)。旦那さんは、全日本ラリー選手権にも参戦する草間一朝選手であり、ダブルエントリーで一朝選手も参戦。ということで今回は、家族連れで参戦となった。
「モータースポーツは、もともとF1がずっと好きだったんです。主人がヒルクライムにも参戦し始めて、それを見ていたら、上りだけだから自分でもできるかなと思って、少しずつやりたいなと思うようになって、そこからです。今日は見られて恥ずかしいって思ってたんですが、でも全然楽しかったですね。で、やっぱり練習しなきゃって思いました。次戦はヒルクライムですから、今回みたいに見られることもなく失敗してもわからないから(笑)、次回も楽しくやりたいと思います」
今回はレンタル・エッセで参戦。マニュアルの運転も久しぶりで、一朝選手の練習走行時に横に乗って内容を確認したりして、走行を重ねるごとに車両が速くなっていくのは実感できたそうだ。残念ながら結果は初心者&エンジョイクラスである「E3」クラス最下位だったものの、次戦が楽しみ、である。
大森俊太郎選手(E2クラス/#8 K’sレンタル黒エッセ)
レーシングカートを長年経験してきた大森俊太郎選手(E2/#8 K’sレンタル黒エッセ)は、この春、普通免許を取得してまだ一カ月半の18歳。初心者マークもバッチリ装着しての参戦となった。
「父親は昔からジムカーナやヒルクライムをやっていたこともありますが、私にとってはこういった大会は初めて。今日は父親と一緒にレンタル・エッセで参戦しました。将来いろいろレースをやってみたいって思ってますけど、とりあえず4輪でまずは遊べたらいいなということで、今はカートを中心にやっています。でも父親を見てきたので、ヒルクライムとか、コ・ドラでもいいのでラリーをやってみたいなと思っています。実際に走ってみると楽しかった。ギヤ操作もそうですし、駆動方式に慣れてないんですが、もう少し速く走りたかった。この先練習してもっといいタイムを出せるようにしたいです」
父親の大森風生選手と同じ車両でのダブルエントリー参戦だった。Aコースで3位、Bコースで4位となり、ポイントで同着3位となって、3位決定戦に臨んだものの、残念ながら敗退して結果は4位。父親がクラス2位となっていたので、親子での表彰台獲得と行きたいところだったが、ちょっと残念な結果となってしまった。
今回表彰台に上がったベスト3をチェック
総合3位:西脇裕一選手 (#23 KRT・YHT甲信飯田・ウエストSR・SP青エッセ)
総合3位に入った西脇裕一選手(#23 KRT・YHT甲信飯田・ウエストSR・SP青エッセ)は、エッセを複数台所有するエッセ使いのひとり。
「ポイントというととくにないんですけどね。みなさんやっている通りで、軽量化のためにリヤシートや内装を外します。これは効果あります。足がしっかりしていれば十分走れるんですけど、足まわりやそのバネレートは皆さんバラバラですね。自分のこの足も買ってきたまま、バネも8kgくらいですかね。ジムカーナだけでなく、ヒルクライム、オールマイティに走るなら、自分的にはこれくらいでいいかなって感じで使っています。 昨年のヒルクライム・ラウンドではオープンデフのノーマルミッション車でそれなりのタイムも出たので、クロスミッションだとかデフだとか必ずしも必要ということではないのかな、と感じてます。いかにトラクションをかけて上手に走らせられるかじゃないですかね? 何年かエッセに乗り続けているので、だいぶエッセの走らせ方はわかってきていると思います。エッセを速く走らせるコツは、ステアリングを切らない、ですね。アクセルとブレーキで姿勢を変えてリヤタイヤを上手に使うのもポイントです。今日はジムカーナでしたので、サイドターンを使いたかったのでブレーキを強化はしましたけど」
総合2位:行徳 聡選手(#18 Purple Esse)
全日本ラリー選手権など内外のラリーに参戦し、このAJECの主催をするK’sFACTORYに所属する行徳 聡選手(#18 Purple Esse)はこの日2位の結果となっている。「このクルマは、ボディ補強をしっかりやっています。ホワイトボディ状態にしてスポット増しをしています。これでボディ剛性が全然違いますね。軽量化はリヤシートを外して内装はがしてってところまでです。 エンジンはとくにやってなくて、エアクリーナーが変わっているくらいです。スロットルもノーマルですし。このクルマはLSD入れて、1-4速はK’sの試作のクロスミッションを入れてます。シュピーゲルの足は、フロントが8kg、リヤが4kgってところです。 エッセの走らせ方ですか? あんまりやってないんでよくわからないですが、ある程度まではどのクルマも同じでしょうし…、とくにこれと言ってないですね」
総合1位:武藤功二選手(#22 K’S BRIG エッセ)
今季AJEC初戦を制したのは、全日本ジムカーナにも出場している武藤功二選手(#22 K’S BRIG エッセ)
「昨年、このエッセカップ用に購入した車両で、デフ、ミッション、ファイナル、エアクリーナー、ブレーキといったところに手を入れてきました。で、今回はミッションを5.5から5.9に下げて加速をよくしました。車両としては、タワーバーもついてないですし、後ろの補強バーもついてなくて、前後スタビだけなんで、補強はして行きたいし、全体的な軽量化をもう少し進めたいところです。 このクルマ、ショックがダメだったので、今回ビルズさんに作っていただいた足を入れました。といっても事前にセッティングしたわけでなくて、今日この場でつけたばかりでセッティングは出てなくて、エンジンマウントあたりからジャダーがすごくて、次回に向けて、そのあたりも対策したいですね。車両はやることはいくらでもあるって感じですね」
と三者三様の答えが返ってきた。ただ、それなりにいじっても楽しめ、リーズナブルに遊ぶことができる、という魅力は変わらない。このエッセ・カップ、さらに盛り上がっていきそうな予感である。
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