今や日本車でも珍しくなくなった400馬力級エンジンだが、やっぱりハイパワーエンジンはワクワクする! そんな400馬力級エンジンを搭載する国産車の魅力を多角的に解剖していこうではないか。
※本稿は2023年10月のものです
文/松田秀士、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/奥隅圭之
初出:『ベストカー』2023年11月10日号
ランクルにフェアレディZ……400馬力オーバーも扱いやすい!! 燃費ってどうなの? 国産ハイパワー車3台イッキ乗り
■現代の国産車には400馬力級も意外とある!
現在では400馬力オーバー国産車の乗り比べができるほど豊富になってきた。その昔存在した『280馬力自主規制』の時代がウソのようだ
その昔、日本車には『280馬力自主規制』なるものが存在し、輸入ハイパフォーマーとの差は歴然だった。我々ジャーナリストはそんな外国車勢を褒めまくっていたわけで、さぞかし国産車開発陣は恨めしい思いをしていたに違いない。
しかし、そんな自主規制もいつの間にか姿を消し、300馬力はおろか400馬力を超えるエンジンを搭載する国産車も豊富になってきた。
そこで400馬力級のクルマの走りの魅力を味わおう!となったわけ。ステージはもちろん和製ニュルともいえる箱根ターンパイクだ。
■三車三様の魅力的パワーユニット!
日産 フェアレディZ。48.4kgmという最大トルクを1600~5600rpmという広範囲で出力しているのがポイントだ
まずはフェアレディZからドライブしてみよう。3L V6ツインターボのVR30DDTTエンジンの出力は405馬力/48.4kgm。馬力もかなりのものだが、最大トルクを1600~5600rpmという広範囲で出力しているところがミソ。
400馬力超え、と言うと“おお!”となるが45kgm超え、と言ってもへえ!? くらいにしか思わないだろう。
実はトルクを計測機で計り、馬力はその数値をもとに計算式で導き出すのだ。だからトルクのほうが基準でエライのだ。
だからボクはいつもトルクの数値と発生回転数を重要視している。とはいえ一般的には400馬力といったほうがわかりやすい。
そこでZのフィーリングだがこの1600~5600rpm域のレスポンスが素晴らしい。小径のタービンをツインターボとして採用しているからだが、アクセルワークに忠実に反応。
大径タービンは大きなパワーを得られるがレスポンスに劣る。実用面では小径タービンのほうが圧倒的に優れている。しかも9速ATはコーナー速度に合わせてジャストな回転域のギアをセレクトできる。
リアのマルチリンクサスがアクセル操作によるトルク変動に合わせてバンプ/リバンプするフィールが感じられる。右足でリアサスを操作する感覚。パワフルでないとこれは味わえない。
さらにキャスター角を大きくとったフロントサスは直進性も高く、操舵時の転舵キャンバー角も大きくなり操舵グリップが増す。パワーのあるスポーツカーって素晴らしい!
このエンジンをさらにチューンして搭載するのがスカイラインNISMOだ。420馬力/56.1kgmとトルクアップがもの凄い。
これに対応するためにリアタイヤを幅広にしている。セダンゆえ乗り心地も加味したサスペンションの躍動感はZよりも大きく、玄人受けするハンドリングだ。
400馬力級エンジンはZやレクサスLC、IS500、RC Fのようなスポーティモデルだけのものではない。
レクサス LS。高級サルーンの顔をしてすましているが、最大トルクは61.2kgmと強力。発生トルク幅はZより狭い
そこで高級サルーンのレクサスLSに乗り換えよう。こちらに搭載されるのは3.5L V6ツインターボのV35A-FTSエンジンで422馬力(6000rpm)/61.2kgm(1600~4800rpm)と発生トルク幅はZより狭いが61.2kgmと強力。
そのぶん最大出力発生回転は6000rpmとZより400rpm低く、明らかに中速域を重視したエンジンだ。
その違いは走らせれば明らかで、Zが高回転になるにしたがってスポーツカーらしい伸びのある加速なのに対してLSはあっという間に回転リミッターに当たる6000rpmに達する。
2150kgもの重量級なのに。これは10速ATであることも一役買っている。
後輪操舵も持つことで不要にサスを固めることもなく乗り心地はスバラシイ。さらに静粛性もバツグン。それでいてコーナーも予想を上回る速さ。
この重いボディをここまでスポーツできるのはこの優れたエンジンに他ならない。少しステアリングは軽めだが奥の深いハンドリングだ。
■本格クロカンSUVも400馬力級エンジン!
トヨタ ランドクルーザー300。LSと同じエンジンを搭載するが、LSよりもさらにトルク重視の設定。66.3kgmというトルクで2トンを越える車体をグイグイと加速させる
そして、実はLSと同じエンジンを搭載するのがランクル300。ただし出力特性は415馬力(5200rpm)/66.3kgm(2000~3600rpm)とLSよりもさらにトルク重視の設定に変更されている。
10速ATも同じで、走らせれば明らかに低回転域からトルクで加速させるフィール。これにはかなり驚かされる。
この巨体(2440kg)をなんの苦もなくグイグイと加速させるのだ。しかもディーゼルエンジンにはない小刻みな爆発回転フィーリング。
ランクル300はホンモノのオフローダーの常識ともいえるラダーフレームを採用している。このフレームとのマッチングが素晴らしい。
操舵に対してやや遅れて反応する車体に対して、アクセル操作に機敏過ぎず、しかもスムーズに立ち上がるパワーによってコーナリング性能が問われるターンパイクでも気持ちよく走れる。
さて、流行のターボエンジンを搭載するこの3台だが、NA(自然吸気)エンジンにも400馬力オーバーは存在する。5L V8エンジンを搭載するIS500やRC Fだ。
2UR-GSEエンジンは481馬力(7100rpm)/54.6kgm(4800rpm)と非常に高回転型。トランスミッションは8速ATだ。
ボクはIS500の前身ともいえるIS Fでニュル24時間を完走してクラス4位になったことがあるが、2UR-GSEエンジンの素晴らしい点はアクセルレスポンスが格段に優れてること。
今回のターボエンジンとの大きな違いはエンジンブレーキ。NAは構造的にエンブレがよく効くのと、大排気量&マルチシリンダーになるほどにエンブレがよく効く。
これがアクセルレスポンスに繋がり、リアタイヤの縦方向のグリップ力を右足でコントロールできる。
縦方向のグリップ力をエンジンブレーキに使えば横方向のグリップが減少するわけで、これを利用してコーナリングの特性を変化させることができるのだ。NAのハンドリングはターボとはまたひとつ異なることがキモなのだ。
ただし時代のトレンドはターボ、そしてモーター。このターボエンジンたちがこれからどのように進化していくのかより楽しみになってきた。
■日常使いでは、燃費極悪ってことはない!?
今回比較した400馬力オーバーの3車、さぞかしガスっ食いの極悪燃費かと思いきや、思ったほど悪い数字ではない。現代の400馬力車の隠れた魅力だ
さて、今回取材に持って行った3車なんだけど、3~3.5LのV6エンジンを搭載する純内燃機関で、マイルドハイブリッドですらない。
しかもランクルなんて車重は2.4トンで車高も高いため前面投影面積も大きいし、タイヤだってゴツイ。
燃費に有利な条件は皆無というクルマなんだけど、都内から首都高3号線経由で東名高速~小田原厚木道路という経路で小田原市内までの約85kmを走って、実燃費は8.2km/Lだった。
淡々と高速道路を走った……というわけでもなく、東名高速は横浜町田から海老名まで渋滞でストップ&ゴーの繰り返し。
この区間15kmほどは一般道を走るような走行条件だったことを考えれば、決して悪い数字ではない。Zなんか11.4km/Lで、大健闘だ。
動力性能は一般公道での実用面での加速性能の参考程度に見ていただきたいのだが、やはりフェアレディZはシャープな加速性能が気持ちいい。
ランクル300の動力性能は想像以上で、特に高速道路での追い越し加速は重い車重やモロに受ける空気抵抗をものともしない怒涛の勢い。2000rpmで66.3kgmの最大トルクをたたき出す3.5Lツインターボの底力を思い知らされた。
400馬力級が本気を出したらどんな動力性能を見せつけるのか?は、JARIテストコースで実施したテスト結果を参照してほしい。
発進から100km/hに至る加速は5秒台。400mまでの加速タイムは12秒台という実力だ。スープラRZは400馬力にちょい届かない387馬力だけど、トラクションがよく発進加速が速い。Zは大雨のなかのテストでゼロヨン1秒以上はロスをした。
●松田秀士の結論:最新エンジンは大出力でも扱いやすく燃費もいい!!
●実走行燃費
・フェアレディZ:11.4km/L
・ランドクルーザー300:8.2km/L
・レクサスLS500:8.9km/L
●400馬力軍団 街中動力性能(0→50km/h)
・フェアレディZST(9AT):3秒23
・ランドクルーザー300 ZX:5秒01
・レクサスLS500:4秒90
●400馬力軍団 街中動力性能(80-120km/h)
・フェアレディZST(9AT):3秒35
・ランドクルーザー300 ZX:4秒50
・レクサスLS500:4秒70
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みんなのコメント
それまでは、高級車と言えば大きなエンジンを積み燃費が悪いことが良しとされていた風潮がある。一方トヨタは、ガソリン車も併売するモデルではハイブリッドの方が値段が高く(機構が複雑なので当たり前だが)、それでいて静寂性などのメリットをもたらし、お金持ちがハイブリッドを買うようになった。
欧州のダウンサイジングターボも、環境意識よりもトヨタの低燃費車に対抗するため。そしてハイブリッドを打ち負かそうとしてEVに逃げ込んでいる。そのいずれも失敗しそうで、先に動くトヨタが利する形になっている。
それでいながら、GRヤリスのようなモデルまで作るからある意味恐ろしい企業。