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今のターボ車は燃費重視でおもしろくない?! 中古でどっかんターボを狙う!

掲載 更新 31
今のターボ車は燃費重視でおもしろくない?! 中古でどっかんターボを狙う!

 1973年にターボ車時代の幕開けを感じさせるBMW2002ターボがデビュー。続いてポルシェからも911ターボが登場した。一方、国産車では、1979年に国産初のターボチャージャーを搭載した日産セドリック/グロリアが誕生した。

 今でこそ、燃費を稼ぐことを主眼に開発された、小排気量のいわゆるダウンサイジングターボが主流だが、1980年代から1990年代前半にかけて装着されたターボは、大径タービンのシングルターボチャージャーで、ターボラグと呼ばれる現象が起きた。

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 これが世にいう「どっかんターボ」である。当時のどっかんターボは、アクセルを踏み込んでも、実際にターボが効き始めるまで時間がかかり、ある回転数から突然ターボが効き始め、爆発的な加速をすることから、こう呼ばれていたのだ。

 現在のターボ車は、このタイムラグはほとんど感じられず、フラットトルクで回転の上がり方もスムーズ、言うなれば優等生。

 しかし、50代以上の一度、どっかんターボを味わったことのあるクルマ好きは面白味がない、体がシートに抑えつけられたあの感触をもう一度味わってみたい……という人もいるのではないだろうか?

 そこで、どっかんターボ車が今中古車市場では、いくらで買えるのか? 中古車事情に詳しい伊達軍曹が徹底解説する。


文/伊達軍曹
写真/トヨタ 日産 ホンダ スバル ポルシェ

【画像ギャラリー】往年のどっかんターボは今も手に入るのか!?

どっかんターボって何?

1973年に登場したBMW2002ターボ。KKK製のターボチャージャーを装着した2L、直4SOHCエンジンは170psを発生。量産車初のターボ車は1962年に発売されたシボレーコルベアモンツァ、オールズモビルF85ジェットファイア

 どっかんターボ。お若い方はご存じない言葉かもしれないが、中高年にとっては甘美な記憶とともに思い出される言葉だ。本稿は、「そんな懐かしのどっかんターボ車を中古で探してみようじゃないか!」というのが趣旨である。

 中高年各位にはいまさらな話だが、お若い方に向けて「どっかんターボとは何ぞや?」ということをご説明しておこう。

 どっかんターボとは、低回転域からスムーズに効き始める最近のターボエンジンと違い、低回転域ではスカスカなのだが、ある回転数以上のパワーバンドに乗るといきなり「どっかーん!」とパワーが炸裂。

 そしてシートバックに身体を押し付けられながらの鬼加速が始まるという、往年のターボチャージャー付きエンジンまたはそれを搭載した車両のことだ。

 ご承知のとおり、ターボチャージャーとは、排気ガスの力でタービンを回し、コンプレッサーで圧縮した空気をシリンダーに送り込むという機構。

 初期の自動車エンジン用ターボチャージャーは、大パワーを得るために大型のタービンを採用していた。

1979年12月に登場した国産初のターボ車「セドリック/グロリアターボ」

 すると当然、大きい羽根というのは回りづらいものであるため、ターボがしっかりした過給圧を得るまでには時間がかかる。

 しかし、あるポイントを越えると今度は急激にパワーが炸裂することになる。それがいわゆる「ターボラグ」であり、初期のターボチャージャー付きエンジンが「どっかんターボ」であった理屈だ。

 最初のうちはそれでも良かったというか、そのどっかーん! といきなり炸裂するパワーに人々は大喜びしたのだが、時が経つにつれてそうもいかなくなってくる。

 「さすがにコレはちょっと扱いづらいんじゃないか? もっとこう幅広い回転バンドで効くターボチャージャーにしたほうがいいんじゃない? そもそも燃費も極悪だし」という、進歩的な考え方をするようになっていった。

 そのため、ターボ界のトレンドは「とにかく大きなタービンを1個付けてパワーを出す」というスタイルから、「低回転域から回りやすい小径のタービンを付ける」という方向へとシフト。

 タービンを小さくするとピークパワーは犠牲になるわけだが、「どっかーんと効き始める不便で危ないエンジンよりはマシ!」ということで、そのトレードオフは受け入れられた。1990年代、マイルドターボ時代の到来である。

 その後は、回りやすい小径ターボを2つ装着する「ツインターボ」にしたり、タービンの素材を軽量なセラミックにしたり、軸や羽根の素材と形状を工夫するなどして、「ターボラグ」あるいは「どっかんターボ」という言葉は完全な死語に。

 そして2000年代中盤以降は「小排気量なのにパワフル。そしてごく低回転域からターボがしっかり効く」という、ドライバビリティ抜群なダウンサイジングターボが主流となった。

 さらに直近では電動スーパーチャージャーが発進時から加給したりもするため、4000rpmぐらいからいきなり猛加速が始まるどっかんターボエンジンは完全な「過去の遺物」となったのだ。

 だが今回は、そんな過去の遺物にあえて注目したいと思っている。

 まあ普通に運転するぶんにはどっかんターボなど百害あって一利なしで、加給は低回転域や、それこそ発進時から、スムーズかつリニアに効くにこしたことはない。

 だが我々は……、というか我々の一部は、なにも「スムーズかつ安楽に、経済的に移動したいから」という理由だけでクルマを運転するわけではない。

 まぁそれでもたいていの時間は「安楽に移動したい」と内心思っているわけだが、時には合理性や快適性を無視してでも「己の趣味性」をスパークさせたいのである。

 だからこそ、出来の良い多段ステップATやDCTが山ほどある時代でも、「手漕ぎ」ことマニュアルトランスミッションは残っている。

 そして我々(の一部)は、時に往年のターボエンジン搭載車にて「どっかーん!」という野蛮な加速を堪能したいのである。それが、非合理的で馬鹿げた行為だと頭でわかってはいても!

R30型スカイラインターボRS/1983年2月登場

1983年2月、FJ20E型エンジンにターボを装着したFJ20ET型(190ps/23.0kgm)を搭載したスカイラインターボRSが登場

R30型スカイラインターボRSの中古車情報はこちら!

 ということで「今買えるどっかんターボ車」を探してみると、まず考えられるのはR30型日産スカイライン2000ターボRSだろうか。

 1981年8月に登場したR30型スカイラインに1983年2月から追加された2000ターボRSは、FJ20E型DOHCエンジンにターボチャージャーを追加した「FJ20ET」を搭載。当時最強の190psをマークし、翌1984年2月にはインタークーラー付きで205psとしたターボC(2000ターボインタークーラーRS/RS-X)も追加された。

ターボRSのリアビュー。スカイライン伝統の丸型テールライトが特徴的だ

空冷式インタークーラーを装着した2000ターボインタークーラーRS/RS-X(通称ターボC)

 3000rpmぐらいまではハッキリいってスカスカなのだが、最大トルクが発生する4800rpm(ターボCは4400rpm)が近づいてくるといきなり「どっかーん!」と力が炸裂するその様は、当時の男たちを魅了。

 中古車は現在、350万~500万円、あるいは「応談」となっている場合も多いが、150万~200万円ぐらいの個体もそれなりの数が流通している。

初代日産シーマ/1988年1月登場

1988年に投入されたY31型日産シーマ

初代日産シーマの中古車情報はこちら!

 そして1980年代末期におけるどっかんターボ界(?)のイメージリーダーといえばこのクルマ、Y31こと初代日産シーマの3L、V6ターボエンジン搭載グレードだ。

 3ナンバー専用の上級セダンとして1988年1月に発売となった初代シーマは当初、3L、V6自然吸気のVG30DE型エンジンを搭載するという線で開発が進んでいた。

 だが仮想ライバルを2代目トヨタソアラへと変更したことから「もっと強力なエンジン」が必要となり、最高出力255psのVG30DET型3L、V6ターボエンジンも採用することとなった。

シーマに搭載されたVG30DET型V6ターボエンジンは最高出力255psを発生

 このVG30DET搭載グレードのリアサスペンションが沈み込み、前上がりの姿勢のままで突き進む豪快なフル加速が人々の度肝を抜いたわけだが、時代的に当然ながらこれも低回転域からじんわり効くタイプではなく、どっかんターボである。

 現在、ターボ搭載グレードの中古車もまだそれなりに多数流通していて、相場は70万~350万円といったところ。ビシッと整備したうえで、もう一度お尻をググッと下げながらフル加速してみたくなる一台だ。

ホンダシティターボII/1983年10月登場

1983年11月に発売されたシティターボII、通称ブルドッグ。1.2Lクラス初のインタークーラー付き直4ターボエンジンは110ps/16.3kgmを発生

ホンダシティターボIIの中古車情報はこちら!

 そして1980年代の国産ホットハッチを代表するどっかんターボ車といえば、やはりホンダシティターボIIにとどめを刺すだろうか。

 トールボーイと呼ばれたスタイルを採用した初代シティがデビューしたのは1981年11月のこと。またたく間に人気モデルとなったシティだが、ターボモデルが追加されたのは翌1982年9月で、そして1983年10月には伝説のシティターボII(通称ブルドッグ)が追加された。

 最高出力100psのターボIに対して、インタークーラーを追加したターボIIは110ps。そしてエンジン回転数3000rpm以下の時にアクセルを全開にすると、10秒間だけターボの過給圧が10%アップする「スクランブルブースト」なる機能も装備された。

エンジン回転が4000rpm以下でスロットルを全開にした場合、過給圧を10秒間約10%もアップするスクランブル・ブーストを実現

 いわゆるどっかんターボにおける負の特性を、逆に「魅力」へと転換させたその発想は斬新で、凶暴な加速感と強烈なトルクステアと闘いながら、まるで「じゃじゃ馬ならし」のようにクルマをねじ伏せていくおもしろさに、当時の若年層は大いにハマったものだ。

 そんなじゃじゃ馬こと初代シティターボIIはデザイン的にもオシャレさんであるため、ぜひ中古車として買いたいとも思うわけだが、ネックは流通量の少なさ。

 2020年12月中旬現在、確認できた限りでは初代シティターボIIの中古車は全国で2台のみ。それぞれのプライスは225万円と238万円だが、この希少名車(迷車?)に対してなら、それだけのカネを払っても悔いはない、ような気もする……。

EP71型トヨタスターレットターボ/1986年1月登場

EP71型スターレットターボ。画像はマイナーチェンジ後の仕様で、セッティングの変更により最高出力が110psまでアップした

EP71型スターレットターボの中古車情報はこちら!

 初代ホンダ シティターボIIに続いて登場した伝説のホットハッチというか伝説のどっかんターボハッチバックは、1986年1月に発売されたEP71型トヨタスターレットターボSだろう。

 1984年10月のフルモデルチェンジで登場したEP71型スターレットは、特にスポーツ仕様のSiは「かっとびスターレット」として素晴らしい走りを見せたが、ターボモデルを擁する競合と比べると、やや力不足な感は否めなかった。

 そこで1986年1月、切り札として投入されたのが「ターボS」だった。エンジンは3バルブSOHCの2EE型にインタークーラー付きターボを装着した2E-TELU型。スイッチ操作で過給圧を低く制御する2モードターボシステムを採用し、通常時105ps/15.2kgm、ローモードでは91ps/13.4kgmとなった。

 自然吸気版のかっとびスターレットより23ps強力なエンジンを得たターボSはまさにキャッチフレーズの「韋駄天ターボ」そのものだったが、シャシー性能がパワーに追いついておらず、ハンドリングは韋駄天というよりも「じゃじゃ馬」。そこを理解したうえで乗りこなす必要があるFFホットハッチだったのだ。

 1987年12月のマイナーチェンジではセッティング変更によって最高出力が標準モードで110ps、ローモードで97psまでパワーアップするとともに、グリル一体型フォグランプやリアのツインスポイラーを装備し、キャッチフレーズも「辛口ターボ」となった。

 そんな古典的な「どっかん+じゃじゃ馬」を2020年の今、あえて堪能してみたいとは思うが、いかんせん中古車は希少。

 確認できたかぎりでは2020年12月中旬現在、1988年式ターボSが1台流通しているのみである。そのプライスは168万円。これが安いと見るか、高いと見るか……、ある種の歴史遺産と考えれば納得の範囲ではあるのかもしれない。

GC8型スバルインプレッサWRX STiバージョンIII/1996年9月登場

インプレッサWRX STiバージョンIII(GC8)。高回転型タービンにより、4000rpmから異次元のトルクを発揮する

GC8型インプレッサSTIバージョンIIIの中古車情報はこちら!

 これらより時代が下ると、さすがにどっかんターボのどっかん度も低下というか緩和されていく。

 だがスバルインプレッサWRXのGC8こと初代は、特に1996年9月に登場したSTiバージョンIII(280ps/35.0kgm)は高回転型タービンの採用により、4000rpmからの爆発力は異次元というか、身体を一気に持っていかれる感が強いクルマだった。

 といっても1990年代後半のターボ車だけあって「低回転域はスカスカ」というわけではなく、その意味ではどっかんターボ車ではない。だが4000rpmから上があまりにも凄いため、体感的に「どっかん」だと感じられるのだ。

 そんなスバルインプレッサWRX STiバージョンIIIを中古車として探す場合にも、残念ながら「流通台数の少なさ」という点がネックとなる。

 2020年12月中旬現在、筆者が確認したかぎりではその台数は全国でわずか3台。走行8万km前後の2台は150万~180万円あたりで販売されているが、走行5万km台のワンオーナー車には約260万円という値札が付いている。

ポルシェ911ターボ(930型)/1975年登場

1975年に登場した初代ポルシェ911ターボ(930型)。どっかんターボの権化ともいえる1台だ

ポルシェ911ターボ(930型)の中古車情報はこちら!

 最後に、どっかんターボ特集といえば「ポルシェ911ターボ」を無視するわけにもいくまい。

 現在の911ターボは、どっかんの「ど」の字もないモダンなツインターボを採用しているが、1975年(日本は1976年)に発売された930型の初代911ターボは「どっかんターボの権化」。

 その後の964型で登場したターボとターボ3.6も、ツインターボ化された993型と違ってシングルターボであったため、これまた絶好の(?)どっかん系だ。

 ならばそれを買えばいいのではないか……ということで探してみると、930型で1200万円以上、964型のターボ(3.3L)が1500万円以上、希少なターボ3.6は2500万円以上が相場ということで、「……探すだけ時間の無駄だった」ということのみが発覚したのであった。

【画像ギャラリー】往年のどっかんターボは今も手に入るのか!?

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みんなのコメント

31件
  • 古いターボ車は、どれも高騰している状態で手が出ない感じ。
    安かったGX81のターボも今は200万越え。軽のアルトワークス初期型もいい値段。
  • どれもクルマおやじが泣いて喜びそーな車ばかりだな。完全足元みられてる価格になってるが、それでも昔を懐かしんで買っちゃう人居るんだよな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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