現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ボルボ XC90 PHEV試乗レポート フラッグシップにふさわしい力強い走りと質感

ここから本文です

ボルボ XC90 PHEV試乗レポート フラッグシップにふさわしい力強い走りと質感

掲載 更新
ボルボ XC90 PHEV試乗レポート フラッグシップにふさわしい力強い走りと質感

2016年1月末に日本で発表されたオールニュー「XC90」だが、T5エンジン、T6エンジン搭載モデルよりやや遅れてプラグインハイブリッド(PHEV)モデル「XC90 T8 Twin Engine AWD インスクリプション」が導入され、試乗する機会ができた。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

新世代プラットフォームを採用したXC90は、当初からPHEVモデルが構想されており、新プラットフォーム(SPA)はモーター、バッテリー搭載を前提とした設計になっている。もっともボルボは、2011年のジュネーブモーターショーでV60 PHEVを発表し、2012年後半から日本には未導入だがヨーロッパではこのモデルを発売しており、XC90 PHEVが初めてというわけではなく十分な経験を持っている。

V60 PHEVはディーゼル・エンジンを搭載したPHEVであったが、XC90はDrive-Eエンジンの最強力バージョンであるT6エンジンとモーターを組合わせたPHEVとしているところが新しい。なお、XC90 PHEVの正式な車名は「XC90 T8 ツインエンジンAWD」で、グレードは最上級のインスクリプションのみという設定だ。

車名のT8とは、V8型エンジンに匹敵するパワーを発生することを意味し、ツインエンジンとは、スーパーチャージャー+ターボチャージャーを装備する320psのT6エンジンとリヤアクスルに搭載する駆動モーターを表現している。このT6ガソリン・エンジンとモーターを組合わせたシステム最高出力は407ps/640Nmだから、確かにV8型エンジンを上回る実力を持っている。

また、他メーカーのPHEVモデルは、標準モデルよりダウンサイジングし、出力も少し低めのエンジンと駆動モーターを組合わせている例がほとんどで、XC90 PHEVは最も強力なT6エンジンと駆動モーターを組み合わせているところがポイントだ。ただしDrive-Eエンジン自体がダウンサイジング・コンセプトではあるのだが。

XC90 T8 ツインエンジンAWDは、エクステリアで取り立ててPHEVを強調しているわけではないが、タイヤはシリーズ中で最も大径の275/40R21という迫力あるサイズだ。そして21インチホイールのスポーク越しに見えるブレーキもフロント:366mmφ、リヤ:340mmφと大径になっているのが分かる。

インテリアは最上級のインスクリプションならではのラグジュアリーでセンスのよい上質な仕上げで、プレミアム感が満喫できる。また、シフトセレクターノブは、PHEVモデルはスウェーデンの高級ガラスメーカー「オレフォス」製のクリスタルガラスで、高級な工芸品に包まれた雰囲気は否応なく実感できる。なおシフト操作はこのPHEVモデルだけはバイワイヤー式なので、フェザータッチで操作できる。

試乗モデルはオプションのエアサスペンション仕様だ。PHEVの走行モードはインスツルメントパネル中央の大型ディスプレイの画面上で、またはセンターコンソール上の回転式ダイヤルで簡単に選択できる。

モードは、「ピュアモード:EV走行」、「ハイブリッドモード:デフォルトのモードで自動的にEV、ハイブリッド走行を使い分ける」、「セーブモード:電池容量を残すモードで、電池残量33%以下の場合は自動的に充電し、33%以上の場合はハイブリッドモード走行で電池残量33%を維持」、「AWDモード:滑りやすい路面などで強制的にリヤモーターも駆動して4WDに」という4モードが選択できる。それ以外にXC90シリーズ共通のパワーモード、オフロードモード、インディビジュアルモードも選択できる。

EVモードでの航続距離は日本のJC08モードでは35.4kmだが、ヨーロッパ(NEDC)モードでは43kmとなり、PHEVとして十分なバッテリー容量(9.2kWh)であることがわかる。なおPHEVにしたことで、燃料タンク容量は71Lから50Lに20Lほど減らされている。

リチウムイオン・バッテリーはセンタートンネル部に格納されており、エンジン車と比べてわずかにトンネルの高さがアップしているが、これは注意しないと分からないレベルだ。バッテリーがこの位置にあることで、多くのPHEV車がトランク下面に置いているのに比べ重量バランス(フロント:52%、リヤ:48%)がよいことと、万一の衝突時に高電圧のバッテリーが最も安全に保護されるという利点がある。さらにこの配置によりスペースを犠牲にすることなく3列シートのレイアウトが成立しており、このクルマはPHEV唯一の7人乗りを実現しているのだ。

■インプレッションガソリン車と同様にセンターコンソール部にあるダイヤモンドカットのダイヤル式スターターを回すと、システムONの状態になり、アクセルを踏み込んで走り出すと、もちろんEV走行で、無音状態で走り始める。アクセルをさらに踏み込むとエンジンが始動するが、かすかなエンジン音のためよほど注意しないとドライバーにも同乗者にもわからないだろう。

さらに急加速すると、ドライバーの心をくすぐる気持ちよいエンジン音が高まってくる。このあたりの演出も十分熟成されていることを感じさせる。全力で加速する、強烈な加速が実感できる。もちろんリヤモーターも駆動し、さらにトランスミッション部にある発電/スターター用のジェネレーターも急加速時にはエンジンをブーストするモーターとして作動し、+30ps強が加わるのだ。

アクセルを踏み込んでの加速感は文句なしで、V8型エンジンに匹敵する迫力は本物だ。実際、0-100km/h加速は5.6秒で、T6エンジン車より1秒以上速いのだ。また普通の緩やかな加速時には8速ATが早め、早めにシフトアップし極力エンジンを回さずにする制御もクルマの性格にマッチしている。

巡航時でエンジンブレーキをかけたいようなシーンでは、セレクターを手前に引いて「B」ポジションにする。それもレバーを引くつど減速力が強まり、ギヤ位置の表示も8→7→6と変わるのでまさにシフトダウンしているフィーリングだ。もちろんこれは回生ブレーキを制御している結果を擬似的にギヤ段数で表示しているわけで、エンジンブレーキをかけているわけではない。

フットブレーキは、軽く足を乗せるような減速ではペダルフィーリングが思いのほか固く、最初は少し違和感があるが、しばらく乗っていると慣れるレベルだ。ブレーキペダルは回生と油圧の協調制御しているのは他のハイブリッド車と同じだ。

なにしろ21インチタイヤなので、乗り心地はどうか気になる。 ところが驚くほどよいのだ。前回、T6エンジン搭載のXC90 インスクリプション(同じエアサスペンション仕様)に試乗したが、それと比べてより重厚感のある乗り心地で、低中速域でエアサスペンションらしいボヨンとしたフィーリングも消えている。

このPHEVモデルは、サスペンションからボディの細部に至るまで専用チューニングされているのだが、それ以上に+240kgという車重が乗り心地に効いていると感じた。どっしりして重厚感と路面の凹凸をソフトにいなすしなやかさが絶妙だ。また2列目シートでもフラットな乗り心地で、静粛性も高く、快適そのものだった。

なおスポーティグレードのT6 R-DESIGN(エアサスペンション仕様)はもう少し締まったフィーリングになるが乗り心地はフラット感が強く、これも乗り心地としては高いレベルにある。

XC90は直進安定性の高さも優れているが、小舵角で切ったり戻したりするステアリング・フィールに関してはT6エンジン・モデルでは操舵反力が強くて少し不自然なフィーリングが感じられた。しかし、レーンキーピング・エイドをオフにすると、その気になるフィーリングが解消した。

レーンキーピング・エイドをオンの状態では、けっこうレーン中央に戻す自動操舵力が強く、これが敏感に介入していたのだ。ちなみにレーンキーピング・エイドは前回のT6エンジン車と同様に、右側車線にはかなり余裕のある段階で操舵が介入し、逆に左側車線側は車線ぎりぎりまで介入が働かない状態だった。この原因はセンターライン中央部を認識する制御のキャリブレーションがずれていると思われるが、再調整すれば解決する問題だろう。

2340kgの車両重量、全長5m、全幅1960mmの巨体は、確かに都市部の狭い道路ではもてあまし気味かもしれないが、長距離を苦にせず走る高速ツアラーとしての性能の高さと、荷物を多様に積載できる使い勝手、5人以上での移動といったユーティリティの高さは高いレベルにある。

また片道15km圏内の移動であればEVだけで走行でき、自宅で充電できればガソリンは不要というPHEVならではの環境性能、経済性も、この1000万円を超える価格のクルマのもうひとつの顔ということができる。


この記事を画像付きで読む(外部サイト)

【キャンペーン】マイカー・車検月の登録でガソリン・軽油7円/L引きクーポンが全員貰える!

こんな記事も読まれています

SUBARUサンバーを快走仕様!「ワイパーモーター不動からの復活」2
SUBARUサンバーを快走仕様!「ワイパーモーター不動からの復活」2
グーネット
2026年には45歳……アロンソのようなドライバーは二度と現れない? ノリス脱帽「僕はそのことをとても尊敬している」
2026年には45歳……アロンソのようなドライバーは二度と現れない? ノリス脱帽「僕はそのことをとても尊敬している」
motorsport.com 日本版
これは踏んでいいのか…? 道路でどんどん増える「ナゾの車線」4選 白や黄色だけじゃない!
これは踏んでいいのか…? 道路でどんどん増える「ナゾの車線」4選 白や黄色だけじゃない!
乗りものニュース
超カッコイイ! 斬新「“サテライト”スイッチ」って何!? どう使う!? もはや懐かしい“SF装備”なぜ流行ったのか
超カッコイイ! 斬新「“サテライト”スイッチ」って何!? どう使う!? もはや懐かしい“SF装備”なぜ流行ったのか
くるまのニュース
RBメキーズ代表、リカルドの復活を確信。改善傾向のパフォーマンス挙げ「具体的な進歩が見られたことは自信にも繋がるだろう」
RBメキーズ代表、リカルドの復活を確信。改善傾向のパフォーマンス挙げ「具体的な進歩が見られたことは自信にも繋がるだろう」
motorsport.com 日本版
走行距離の短さを重視する人が減少傾向! 若者ほど気にせず欲しい車を選ぶ!?【中古車購入実態調査】
走行距離の短さを重視する人が減少傾向! 若者ほど気にせず欲しい車を選ぶ!?【中古車購入実態調査】
カーセンサー
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】全国の道路別・渋滞予測まとめ!
くるくら
ホンダの元祖「ジャイロX」は北の大地が鍛えたヘビーデューティなヤツだった
ホンダの元祖「ジャイロX」は北の大地が鍛えたヘビーデューティなヤツだった
バイクのニュース
優勝争いで再び激突したふたりの王者。勝負に備えたバニャイアとタイヤが限界を迎えたM.マルケス/第4戦スペインGP
優勝争いで再び激突したふたりの王者。勝負に備えたバニャイアとタイヤが限界を迎えたM.マルケス/第4戦スペインGP
AUTOSPORT web
九州のGW渋滞、連休後半は5月3日に最大30km、Uターンラッシュは5月5日か!?【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】
九州のGW渋滞、連休後半は5月3日に最大30km、Uターンラッシュは5月5日か!?【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】
くるくら
[カーオーディオ・素朴な疑問]ツイーターはどこに付けると音が良い?
[カーオーディオ・素朴な疑問]ツイーターはどこに付けると音が良い?
レスポンス
ジャック・ドゥーハン、今季スーパーフォーミュラ参戦の議論もあったと明かす「でもアルピーヌは僕にF1テストをして欲しかった」
ジャック・ドゥーハン、今季スーパーフォーミュラ参戦の議論もあったと明かす「でもアルピーヌは僕にF1テストをして欲しかった」
motorsport.com 日本版
GW渋滞、東名高速は連休後半の5月2~3日に最大45kmの予測! Uターンラッシュは5日か!?【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】
GW渋滞、東名高速は連休後半の5月2~3日に最大45kmの予測! Uターンラッシュは5日か!?【ゴールデンウィーク渋滞予測2024】
くるくら
実は観客10万人以上少なかった!? MotoGP、スペインGPの総動員数“30万人”は誤りと認める「盛り上げようとするあまり……」
実は観客10万人以上少なかった!? MotoGP、スペインGPの総動員数“30万人”は誤りと認める「盛り上げようとするあまり……」
motorsport.com 日本版
トヨタ「スープラ“86”」!? 300馬力超えエンジン+MTの「FRスポーツカー」!  「GRMN SPORTS FR C PLATINUM」とは何だったのか
トヨタ「スープラ“86”」!? 300馬力超えエンジン+MTの「FRスポーツカー」! 「GRMN SPORTS FR C PLATINUM」とは何だったのか
くるまのニュース
ロールス・ロイスの成功の陰にあったサクセス物語。機械の心を読める天才テストドライバー「アーネスト・ハイブス」とは?
ロールス・ロイスの成功の陰にあったサクセス物語。機械の心を読める天才テストドライバー「アーネスト・ハイブス」とは?
Auto Messe Web
フォーミュラE第8戦 ジャガーのミッチ・エバンスがモナコE-Prix制覇!
フォーミュラE第8戦 ジャガーのミッチ・エバンスがモナコE-Prix制覇!
Webモーターマガジン
WRC、”F1スタイル”のチームラジオ放送を目指す? 魅力を引き出すツールになるか
WRC、”F1スタイル”のチームラジオ放送を目指す? 魅力を引き出すツールになるか
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

924.01039.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

43.0979.0万円

中古車を検索
XC90の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

924.01039.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

43.0979.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村