AIまちづくりへ向けた技術実証実験がスタート
2022年7月4日、ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所が茨城県常総市と、AIや自動運転などの先進技術を活用した知能化マイクロモビリティと、それらモビリティを支えるまちづくりの実現を目指した、「AIまちづくりへ向けた技術実証実験に関する協定」を締結したニュースも記憶に新しい。
ホンダが常総市(茨城県)とAIや知能化マイクロモビリティを活用した「AIまちづくりへ向けた技術実証実験に関する協定」を締結
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7月4日、ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所は、茨城県常総市と、AIや自動運転などの…
2022年11月1日、その実証実験に関する具体的な内容と技術の発表が発表された。
そのポイントとなるAI(人工知能)は、人と分かり合える独自の協調人工知能で「Honda CI(Cooperative Intelligence)」だ。このHonda CIをコア技術を用いた「Honda CI マイクロモビリティ」が2種類用意され、茨城県常総市の施設で実証実験が行われることになる。
CIマイクロモビリティのコンセプト
ホンダの安全理念やHonda CIのコンセプトを語る本田技術研究所代表取締役社長・大津啓司さん。ホンダは「道を使うだれもが安全でいられる女子に遭わない社会つくりたい」という思いを「Safety for Everyone-共存安全-」という安全理念として標榜している。そのためには全ての道路利用者の交通リスクを取り除き、「自由な移動の喜び」と「豊かで持続可能な社会」の実現を目指している。
具体的な取り組みとして、安全運転システム、知能化運転支援技術、安全・安心ネットワーク技術を高め2050年には「全世界でホンダのバイク・クルマの交通事故者ゼロ」を掲げる。
Honda CIの技術概要を説明する先進技術研究所知能化領域エグゼクティブエンジニア・安井裕司さん。一方で、高齢化社会や地方の過疎化に伴う交通インフラの弱体化、労働人口の減少など、自由な移動を取り巻く環境は厳しい。その厳しい状況を打開していくためには、人とわかり変える協調人工知能があらゆる交通状況において事故なくストレスフリーに移動するために必須の技術になってくるのだ。
では、そのために研究されている具体的な内容はどのようなものだろうか?
CIマイクロモビリティの技術「地図レス協調運転」
高精度地図に頼らずカメラの映像ベースで周辺環境を認識し、目的地まで安全を維持しながら自動走行することを目指した技術。そのための3つの機能を実験する。
■リアルタイム道路構造理解(車道)
カメラからの画像情報だけ(=地図レス)で交差点やカーブなどの環境、歩行者や車両などの他車を認識し、リアルタイムで走行可能領域を素早く理解し決定する機能。
■空間認識・走行マップ高速変換
車道のように区画線や縁石などのがないオープンスペースにおいて、障害物の距離や物体構造を瞬時に立体化し、人間の目と同じように走行可能な領域を素早く認識してマップとして生成する機能。
■人・環境協調、行動計画
さまざまな走行環境を考慮したリアルタイムのルート最適化アルゴリズムを用い、目的地まで熟練のドライバーのように安心でスムーズに移動できるルートを決める機能。
地図レス走行の実験車両。コース内を手番し運転で走行する。カメラなどを収めた実験用ユニット。実験用に複数のカメラを搭載する。カメラの映像からリアルタイムで生成される走行マップを映すモニター。車両外のカメラで対象物を認識する一方、車内カメラでドライバーの視線を認識。ドライバーが対象物を見落としているようなら車両が教えてくれる。対象物を立体視するためにステレオカメラを搭載する。CIマイクロモビリティの技術「意図理解・コミュニケーション」
Honda CIにより、人間のように言葉や身振りを理解し、モビリティが自ら考え、提案できるコミニュケーションを可能とする。
■意図のキャッチボール
ユーザーとモビリティが互いに見えているものを”言葉”で伝え合い、人間同士のように自然なやり取りで、移動する位置を理解し合う。
■対話によるユーザー特定機能
複数いるユーザー候補から特徴的な違いを判断し、人間のように対話でユーザーを特定する。
■ユーザーとの交渉・提案
人間の経験と「事前知識」として登録することで、ルール・マナー・危険度などのネガティブな要素を避けるようにしたり、人間のように周囲の状況を考えて提案や交渉を行う。
1人乗りを想定したCiKoMa実験車両。コミュニケーションによる自動運転を行う。実験用のため人は乗れない。ユーザーの呼び出しを受けて、目的の場所まで自動運転でやってくる。目的の場所に人が複数いる際は会話でユーザーを認識。目的の場所の変更にもフレキシブルに応じて移動してくれる。「あっちの方」といった曖昧な表現にも会話で対応する。実証実験用の2つのマイクロモビリティ
■搭乗型の「CiKoMa」
1人~複数人までの乗員数を想定した電動モビリティで、ユーザーは言葉で呼び寄せて、無人自動走行で移動。好きな場所で乗り降りできるだけでなく、乗員の意志を反映した自由な自動運転が可能な移動手段を目指した乗り物だ。
今回の実証実験で使用されるモビリティは4人乗りで、施設内での移動に用いられる。実験当初はドライバー運転でデータを蓄積し、そのデータに基づいて自動運転へ移行していくという。
CiKoMaの4人乗りモデル発表では各技術公開用の車両は別々であったが、実証実験自体はこの4人乗りCiKoMaに今回公開されたHonda CIによる地図レス協調運転の各技術試験車両、コミュニケーション技術などを搭載した車両を用意して行われる。
■ロボット型の「WaPOCHI」
手のひら静脈認証で特定したユーザーの服装や髪型、体型などの特徴を画像で認識・記憶し、ユーザーを追従し続ける電動マイクロモビリティロボット。荷物を運んだり、人混みを先導したり、「歩く」という行為を楽しむ・助けることを目的として開発されている。
WaPOCHI実証実験が行われる施設は2つ
「AIまちづくりへ向けた技術実証実験」に向けて協力なリーダーシップを発揮する神達岳志市長。■水海道あすなろの里
まず2022年11月から、同市内にある里山テーマパーク「水海道あすなろの里」。キャンプや合宿、農業体験、動物とのふれあい、各種イベントが楽しめる体験型施設だ。
ここではCiKoMaの4人乗りモデルで、AIが認識困難な境界の曖昧な走路に対応するための地図レス協調運転技術の進化に取り組むことになる。実験はグリーンスローモビリティ(ドライバーによる運転)と安全雨天支援の組み合わせからスタートし、地図レス協調運転の進化に合わせて自動運転に 移行していく計画となっている。
■アグリサイエンスバレー
続いて2023年春からは「アグリサイエンスバレー」が予定されている。こちらは圏央道常総インターチェンジにオープン予定の産業団地で、企業エリアに加え観光農園や道の駅も併設する「食と農と健康」をテーマにした複合産業施設だ。
ここではCiKoMaの4人乗りモデルに加え、WaPOCHIによる地図レス協調運転と意図理解・コミュニケーション技術を用いた自動走行技術とユーザー追従技術を検証していく。
CiKoMaで無人走行を目指すのはあすなろの里と同様で、WaPOCHIは販売スタッフ追従からスタートし、一般ユーザーの利用試験に進む予定だ。
“いつでも・どこでも・どこへでも”
今回の発表で、協調人工知能によりモビリティが自律的に動き、呼べば来る、自動的に目的地まで連れて行ってくれる、ユーザーの意思を反映できる、会話による交渉ができる……といったモビリティの実現が着々に進んでいるのを実感した。
多くのSF作品で描かれてきた未来、クルマで言えばアメリカのカーアクションドラマ『ナイトライダー』のKITTが実現する未来はもう遠くないのかもしれない。
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