創設2年目を迎える南半球のTCRリージョン選手権、TCRサウスアメリカ・シリーズの第6戦が8月27~28日にアルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドで開催され、昨季のクリティバとブエノスアイレス戦でもゲスト参戦で表彰台を獲得したエステバン・グエリエリが、ファビオ・カサグランデ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)とのペアで1時間の耐久戦を初制覇した。
また、このイベントが注目の実戦デビューとなった“南米発”の新型モデル『トヨタ・カローラGRS TCR』は、チアゴ・カミーロ/ホルヘ・バリオ組が一時5番手まで浮上し、序盤戦で快走を披露したものの、残念ながら技術的問題により10周時点で勝負権を失う結果となった。
第6戦テルマス耐久にWTCR参戦の豪華スターが集結。トヨタのデビュー戦陣容も確定/TCRサウスアメリカ
今季もWTCR世界ツーリングカー・カップに参戦するレギュラー勢より、サンティアゴ・ウルティアはPMOモータースポーツ“復帰”し、ホセ-マニュエル・サパーグとマシンをシェアしてリンク&コー03 TCRをドライブ。そしてALL-INKL.COM・ミュニッヒ・モータースポーツで長年僚友を務める“アルゼンチン・エクスプレス”のふたりは、前述のとおりグエリエリがスクアドラ・マルティーノへ。一方のネストール・ジロラミはSCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”にも参戦するブラジルの強豪クラウン・レーシングとジョイントし、自身も参戦したアルゼンチンの人気ツーリングカー選手権スーパーTC2000(STC2000)で今季大活躍を演じる17歳、イグナシオ・モンテネグロとタッグを組んだ。
またイベント直前にはもうひとりの大物ゲストもアナウンスされ、2022年よりヒョンデ所属のファクトリー契約ドライバーとなったミケル・アズコナが、ペドロ・アイッツァ(スクアドラ・キアレッリ/ヒョンデ・エラントラN TCR)のコドライバーとしてシングルカー体制のチームを後押しすることとなり、総勢20台計40名の豪華エントリーが集った。
そして一際の関心を集めた新型『トヨタ・カローラGRS TCR』は、レースウイークの週末を前に“TOYOTA GAZOO Racingラテン・アメリカ”での参戦体制とともに、そのカラーリングを公開。チーム代表を務めるダリオ・ラモンダは「我々は最初のレースで、このクルマの可能性を示したいと思っている」と意気込みを語った。
「いよいよデビューが迫ったこのカローラGRSによって、トヨタ・ブランドが世界中のサーキットで争われるTCRカテゴリーで、今すぐにも競争力を発揮できると確信している」
■力走を続けていたカローラがまさかのガレージイン
その言葉どおり予選から躍動をみせたカローラは、セッションを通じて快走を披露し、カミーロとバリオのベスト合算でいきなりの3列目6番手グリッドを獲得。前方トップ5には、ポールポジション獲得のウルティア/サパーグ組(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)を皮切りに、ファン-アンヘル・ロッソ/リカルド・リサッティ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がコンマ3秒差でフロントロウに。
そして2列目には、初年度チャンピオンチームとして今季はホンダからクプラへスイッチした、ラファエル・レイス/ベルナルド・ラヴァー組と、アルセウ・フェルドマン/マティアス・ミラ組(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)のクプラが並び、5番手のモンテネグロ/ジロラミ組(クラウン・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が、カローラの隣からスタートする構図となった。
迎えた1時間勝負はスタートから波乱続発の展開となり、サパーグはポールからうまく逃げてリードを保ったものの、その背後には5番グリッドからジャンプアップしたジロラミが迫り、8番手発進だったグエリエリも4番手に躍進する。
そして3周目には早くもリンク&コーが首位陥落となり、ジロラミ、ロッソ、グエリエリのシビック3台がトップ3を形成。一方でクプラのレイスはワイドラインになった際にダメージを負いピットへ。続く5周目には、ホンダ同士のバトルでジロラミとロッソがコンタクトする接近戦を繰り広げ、その渦中でグエリエリが2番手へと進出し、続く6周目には“チームメイト対決”も制して早くも首位に立つ。
ときを同じくして、ポールシッターだったサパーグのリンク&コー03 TCRは右フロントリムを破損し、ピットで2周をロスして大きく後退。シビック3台の背後では4番手マティアス・ミラのクプラに続き、カローラが5番手で力走を続けていたものの、フロントサスペンションに異変を感じたカミーロはそのままガレージインし、10周目にして早くも試練のときを迎える。
14周目以降ドライバー交代のピットウインドウが開き、21周目には最後まで引っ張ったグエリエリがカサグランデにスイッチ。レース時間残り20分を切ったところで、カサグランデ、フェルドマン、モンテネグロのトップ3に変わり、その背後にはアズコナのヒョンデが浮上してくる。
25周目にはバリオがステアリングを引き継ぎ、長い修復を経たカローラがトラックに復帰。デビュー戦でのロングランデータ収集に励むことに。その一方で、首位3台はコンマ差圏内のテール・トゥ・ノーズとなり、このバトルに乗じて約3秒差からギャップを詰めて来たアズコナも加わり、最後のドラマが待ち受ける。
■レース後「本当に理解できない」と怒りをあらわにするアズコナ
首位争いの隙を突いて17歳のモンテネグロが28周目に抜け出すと、アズコナもカサグランデを捉えて表彰台圏内へ。残り2分で2番手フェルドマンのクプラと何度もポジションを入れ替えてのバトルを展開したWTCRのスターは、2番手で高速右コーナーへステアリングを切り込んだが、そのイン側にクプラが衝突。さらにあろうことか、グラベルトラップを突っ切るようにスロットルを踏み続けたフェルドマンは、まさに“Tボーン状態”でヒョンデを弾き飛ばし、バトルのすぐ脇をすり抜けていったカサグランデの背後でコースへと戻る。
この場外乱闘にも助けられ、勝利に向け「イージー・クルージング」に入っていた17歳にも悲劇が襲い、1時間レースのチェッカーまであと90秒のところで、首位29号車のシビックはエンジンがオーバーヒートしてスローダウン。ボックス内で見守ったジロラミも愕然とした表情を浮かべる展開で、目前だった勝利への望みが絶たれてしまう。
これでカサグランデ/グエリエリ組の34号車がトップでフィニッシュラインを越え、フェルドマン、アズコナの順でチェッカー。しかし、2位争いの攻防に対してレーススチュワードはフェルドマンを「失格処分」とし、アズコナ組が繰り上げの2位、そして選手権ポイントリーダーのファブリツィオ・ペッツィーニ/カルロス・オクロヴィッチ組(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)が繰り上げ3位を得る結果となった。
「本当に理解できない。クレイジーなんてもんじゃない」と、レース後に怒りをあらわにした招待選手のアズコナ。「彼(フェルドマン)は僕を殺したいと思っていた。彼はグラベルに乗ってからも完全に加速していた。僕はクルマごとひっくり返るだろうと思ったよ」と、状況の説明を続けたアズコナ。
「僕は彼のためイン側に1台分のスペースを残したけど、それを全然理解していない。前のコーナーで接触があったのは分かっていたので、次のコーナーで2台分空けてポジションを戻したけど、こんなハードな仕打ちを受ける意味がわからない。僕にとって、この動きは非常にクリアなものさ!」
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