筑波を舞台にしたインプレッサWRX STIの最速王はどれだ?
新型の発売が待たれる、いまや世界中のスバルファンから一目置かれる存在がスバル「WRX STI」だ。現在ではスバルの走りを担う顔となるモデルだが、その誕生はスバルが「WRC(世界ラリー選手権)」で勝つために生まれたインプレッサからの派生モデル。
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そこで月刊自動車雑誌「CARトップ」が、1980年代から現在まで続けている、新型車の限界性能を筑波サーキットで定点観測する人気企画「筑波アタック」(サーキットテスト)で、インプレッサWRX STIの激闘を振り返る。
負けられないライバル関係がインプ&エボの性能を急激に進化させた
インプレッサWRX STIの歴史は、1992年秋に始まった。奇しくも長くライバル関係が続いた三菱ランサー・エボリューションと同じ年なのだが、これは偶然ではないだろう。 それはスバルと三菱が談合したという意味ではなくて、あくまでもWRCで勝つためにひと回り小さな軽量ボディが必要となり、スバルがレガシィからインプレッサへ、三菱がギャランからランサーへとベース車両をチェンジしたからだ。そして1992年、WRCでも市販車においてもインプレッサWRX STIとランサー・エボリューションの仁義なき戦いが始まった。
インプレッサWRX STI史上最速モデルから発表!
インプレッサWRX STIの筑波サーキット最速タイムを記録したのは、GDB型「インプレッサWRX STiスペックC」となった。車両重量1370kgのWRX STiスペックCだ。タイムは【1分04秒17/2005年年3月】で、これが最速タイムだ。 いわゆる第二世代の中間である涙目の軽量モデルで、エンジンやタイヤ、テスト時の気候(3月)といったコンディションがばっちりハマったこともタイム樹立に起因しているのは確か。ラップタイムはエンジン性能、車両性能に対しての力強さ(パワーウエイトレシオ)、タイヤ性能とテスト時の気温、路面のコンディションなどといろいろな要素が絡み合うが、それがテスト日の筑波サーキットにあったという要因も加わる。
ランキングでいえば、1000台以上という長い歴史を誇る筑波アタックの全体ランキングで30位。海外勢や他社製のスーパースポーツが混在するなかでの27位は、見事としか言いようがない。 ちなみに同日にテストした同モデルの量販仕様である「インプレッサWRX STi」(GDB型/涙目)は【1分05秒01/2005年3月】をマーク。軽量モデルのスペックCがランキングにズラリと並ぶなかで、インプレッサWRX STiシリーズのなかでも8位の好タイムとなる。しかも販売台数の多い充実装備のインプレッサWRX STiながら全体で43位(※2016年時点)と健闘している。スペックCとのタイムの差は充実装備による車両重量増によるものと考えると、その意味ではインプレッサWRX STiシリーズの高性能さを物語る。
コンマ1秒のなかに4台のスペックCがランクイン!
ランキング2位は、【1分04秒63/2004年1月】を記録した「インプレッサWRX STiスペックC」(GDB型/涙目)となった。 続いて3位は、【1分04秒69/2003年2月】を叩き出した「インプレッサWRX STiスペックCタイプRA」(GDB型/涙目)。
4位が「インプレッサWRX STiスペックC」(GDB型/涙目)が【1分04秒71/2002年11月】を記録した。
そして5位にランクインしたのが【1分4秒72/2006年12月】をマークしたGDB型最終仕様(鷹目)の「インプレッサWRX STIスペックC タイプRA-R」だ。 6位以降もGDB型なのが面白い。
6位は標準車の「インプレッサWRX STi」(GDB型/涙目)でありながら【1分04秒84/2002年12月】を叩き出し、続いて7位がインプレッサWRX STiスペックCタイプRA(GDB型/丸目)が【1分04秒89/2002年1月】をマーク。軽量な丸目型スペックCが優位に思えるが、世代交代で涙目に進化した標準車のポテンシャルアップ分が軽量ボディを上まわった結果ともとれる。 8位は先に紹介したので割愛するが、9位は【1分05秒20/2004年1月】をマークしたインプレッサWRX STiスペックC(GDB型/涙目)。 10位は【1分05秒45/2003年6月】を記録したインプレッサWRX STiスペックCリミテッド(GDB型/涙目)となった。
トップ10をなんと2代目モデルの「GDB型」が独占!
まさかトップ10のすべてが第二世代のGDB型に集中したことは驚きだ。インプレッサWRX STIシリーズの長い歴史のなかで、ここまで第二世代(GDB型)ばかりに集中した理由は、軽量モデルのスペックCが1390kg(17インチ仕様)であったのに対して、その後、モデルチェンジして登場したGRB型スペックCは1450kg(18インチ仕様)もあり、やはり重量が足かせになったことは否定できない。 筑波アタックでは、グレード違いの車両を持ち込み比較テストを行うこともあったが、インプレッサWRX STIは標準仕様に対して、軽量なスペックCの方がつねに速いラップタイムを記録している。昔から言われていたことだが、スポーツカーの運動性能にとって「軽さこそが正義」。走りの楽しさこそ重量(軽さ)では測れないが、ことサーキットでの限界テストとなると、軽さがタイムに対して有利に働くことが明らかになった結果ともいえる。
初代GC8型も4年間の進化でラップタイムを2秒も短縮
ちなみにトップ10ランク外になるが、第一世代の最速は初代GC8型「インプレッサWRX STiバージョンIII」が【1分05秒92/1996年12月】で13位にランクイン。当時は2Lターボとは思えないほどの好タイムを記録。それは第一世代のインプレッサWRX STiだけでなく、ライバルの三菱ランサー・エボリューションの第一世代と比べても、目を見張る速さを誇っていた。 余談ながら1992年11月のテストで初登場したGC8型の軽量モデル「インプレッサWRXタイプRA STiバージョン」のタイムは【1分07秒99】で、GC8型の最速タイム比較すれば4年間で2秒も縮めたことになる。この短期間で大幅な性能の向上。これが現在にも続くWRXの歴史を紡がせる人気の原点と言える。 そして14位に入ったのは、【1分05秒95】を記録したインプレッサWRX STI(GRB型)で、GRB型としてはそれまで5回のタイムアタックを行っているが、これが第三世代の最速。第三世代は、WRC(世界ラリー選手権)のレギュレーションが不利な状況に変わってしまったことから翻弄されたモデルであり、5ドアでデビューしたと思ったら、途中で4ドアが追加されるなど、開発陣は苦労されたに違いない。 そのなかでこのタイムは十二分に素晴らしい。また先代のインプレッサWRX STIスペックCタイプRA-Rのような走りに特化したモデルがあればまた結果は違ったはずだ。
プレミアム路線への傾倒で最速王争いは終焉
そしてもうひとつの理由に挙げられるのが、走りの質を求めたこと。時折限定発売されるSTIのSシリーズはプレミアムとして定着しており、数少ない国産プレミアム・スポーツながら発売と同時に完売が続いていた。そうなると、ベースとなるWRXがそちらに近づくのは当然。単純な速さだけではなくて快適性と扱いやすさまで求められるようになり、タイム一辺倒ではなくなったことが伺える。WRXは世界から愛される日本のプレミアム・スポーツとなったのだ。 現在のWRX STIはその性能向上の理由となったWRCには参戦しておらず、インプレッサの名前が完全に外れた第四世代のVAB型は、素晴らしい性能を備えたプレミアム・スポーツとして人気を誇った。それゆえに新型WRX STIにも多いに期待したいところ。次期型モデルの購入を検討している人も新型へとしっかり受け継がれるDNAを、ラップタイムとして可視化した進化の過程を考察してみてはいかがだろうか。
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戦うオーラがなくなって魅力もなくなる車は過去多数あったが・・・