この記事をまとめると
■デトロイトショー2022を取材した筆者はフォード・ブロンコに着目
懐かしの「名前」が蘇ったと思ったらアレ? 前と「まったく違う姿」で復活したクルマ5選+α
■2017年のブロンコ復活宣言ではメディア関係者が歓喜した
■歴代モデルのオマージュについて考える
名車はファンに支えられている
現行フォード ブロンコがデビューしたのは2020年。それに先立ち2017年に開催されたデトロイトショーでのフォードのプレスカンファレンスにて、ブロンコの復活が宣言された。筆者はその場に居合わせたのだが、会場に集まっていたメディア関係者が“イエーイ”と声を上げて喜んでいたのを覚えている。
ブロンコの初代は1966年にデビュー。筆者は世代的にもブロンコは後期モデルのイメージが強く、“フルサイズの2ドアSUV”というイメージを持っていたのだが、初代は“コンパクトSUV”としてデビューしていたようである。
アメリカの映画やテレビドラマを見ていると、劇中に歴代のブロンコがたびたび登場しており、その意味ではアメリカ人にとっては親しみのあるモデルであるのは間違いないようで、2017年の“復活宣言”に歓喜したのも理解できる。
フォードは現行ブロンコと同じように、2005年にデビューした5代目マスタングでも初代をオマージュしたようなエクステリアを採用するなどして大ヒット。今回、つまり2022年のデトロイトショーでデビューした7代目までその流れを継承している。しかし、単に見かけだけをオマージュしているわけではない。聞いた話では5代目開発に際しては、開発現場にマスタングオーナーを呼び、助言を積極的に採り入れて進められたようであり、その過程で後輪のリジッドサスペンションの採用なども行われたとのことである。
現行型はブロンコシリーズ初の4ドアをラインアップしたり、弟分ともいえるモノコックボディの“ブロンコスポーツ”なども用意するが、ブロンコについてはラダーフレームを採用し、走破性能も十分考慮された設計となっている。
“車名だけ復活”は長続きしない
最近はめっきり少なくなったが、中国メーカーが世界の名車をオマージュ(パクり)することがある。最近も中国国内でVW(フォルクスワーゲン)のニューあるいはザ・ビートルあたりをオマージュした4ドアモデルを発売したようだ。中国であり、時節柄BEV(バッテリー電気自動車)となることもあるが、写真などで見る限りは上辺だけオマージュしたような印象はぬぐえない。
しかしフォードに限らず、たとえばシボレーならカマロ、ダッジならチャレンジャーというように、マスタングに続けと歴代をオマージュしたモデルを発売しているが、見た目だけではない魅力にあふれている。ただそれらの影には車名の“つかいまわし”のような復刻版も存在する。
1960年から1976年の間ラインアップされ、その後2012年に復活したダッジ ダートはそもそも世代が進むにつれコンパクト化していったのだが、2012年に復活デビューしたモデルはアルファロメオプラットフォームを採用する、FF方式の文字どおりのコンパクトセダンとなっていた。歴代モデルを強くオマージュして開発された気配はなかったものの、筆者は兄弟車のクライスラー200を運転したことがある。アルファロメオプラットフォーム、フィアット製のエンジンを搭載しており、その走りの良さに舌を巻いたが(アメ車らしさより欧州車らしさを感じた)経営方針などもあって短命に終わっている。このような、突然のように“車名だけ復活”というケースもあるが、長続きしないことが多いと筆者は分析する。
日本車でも過去に“名車”と呼ばれたモデルは多いが、見かけだけではなく、ハード面でもしっかり継承していこうという復刻版は記憶にない。GR86やスープラなどはあるが、これはキャラクターを継承しているだけで、見かけのイメージは継承していない。
マスタングやカマロはアメリカがいまよりも数倍、数十倍輝いていた時代の象徴。その時代をオマージュした最新型にアメリカ人が熱狂するのは、単にクルマというだけでなく、古い世代ではその“古き良き時代”を思い出しているのかもしれないし、若い世代では経験していないそのような“今のアメリカとは違う時代”に何か新しいものを感じているのかもしれない。
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