2か月ぶりの開催となるスーパーGT第4戦富士スピードウェイ。通常ならこの時期の富士はサクセスウエイト(SW)の軽いマシンが上位に来やすいレースだが、近年のスーパーGTは持ち込みタイヤと路面コンディションのマッチング、そしてマシンのセットアップがSW以上に需要になっている。今季のGT500は開幕戦で優勝を果たした36号車au TOM'S GR Supraがランキングトップを守り続けている状況だが、レースで強さを見せる近年のトレンドをまさに体現していると言える。その36号車auの坪井翔に第4戦富士の搬入日に聞いた。
坪井といえば、2週間前のこの富士のスーパーフォーミュラで4年ぶりの優勝を果たし、妻の斎藤愛未もKYOJO CUPで2連勝と『最速夫婦』として前代未聞の話題を作ったばかり。まずはその後の坪井家の様子から聞いた。
坪井翔「僕もスイッチが入った」。2連勝の妻、斎藤愛未から引き継がれた最高の日曜日/第4戦富士決勝
「レース直後はちょっとバタバタしていて何もできていなかったのですけど、1日だけふたりの休みができた時に、ふたりでちょっとお高い焼肉屋さんに行きまして、お祝いをしました」と、笑顔の坪井。ちなみに、その時のふたりはどんな様子だったのだろう?
「ふたりとも完全に優勝の余韻に浸っていて(笑)、自分で自分のことはなかなか褒めることができないので、お互い、お互いを褒め合うみたいな。こっちは『KYOJO CUPこれまで苦労してきたけど、初優勝、そして連勝できたし、いいレースだったね』、向こうは『4年ぶりに勝ててよかったね』とポジティブな会話をしていました」と坪井。その焼肉はさぞかし美味だったことだろう。
「無茶苦茶、美味しかったですね(笑)。ふたりともそんなにお酒が好きなタイプではなくて、美味しいものを食べに行くというタイプ。特に妻は食べるの好きでしたので、美味しいものを食べて、また頑張ろうと。ちょっとお高いところでいっぱい食べまして、至福のひと時でしたね」
周囲からの祝福も、まだまだ止まらないようだ。
「はい、まだ続いていますね(苦笑)。レース後にはいろいろな方からお祝いの言葉を頂いたり、ご飯のお誘いを頂いていまして、このGT富士明けにいろいろご一緒させて頂く予定です。僕らのスケジュールが合わなくて押してしまっているだけなのですけど、これから、いろんな方にご飯に連れて行ってもらいます(笑)」
ちなみに、坪井家では夫婦揃って同じサーキットでレースに出場する時は、レース結果で獲得賞金の少ない方が帰りのクルマを運転するという家庭内ルールがあるが、前回のスーパーフォーミュラの帰りは「運転はもう、僕です。2連勝された時点で決まっていたので(笑)。スーパーフォーミュラ前には決まっていました」とのことだ。
■au TOM'S GR Supra、メンタルが心配されるチームメイトの山下健太への坪井の言葉
スーパーフォーミュラの話はさておき、ランキングトップで迎える今週末のスーパーGTではどのような展開となりそうか。36号車は74kgの最重量で今週末を迎えることになる。
「もう2戦目からクルマがずっと重いので何とも言えないのですけど、今週末は今年1年間のスーパーGTで一番辛い状況なんじゃないかなと思っています。周りはどう思っているのかわからないですけど、僕はこの週末のレースが今季のスーパーGTのターニングポイントになるレースだと思っています」と坪井。その理由を聞く。
「この辛い状況で1ポイント獲れるか、獲れないかが、今後のチャンピオンシップの大きな違いになるんじゃないかなと思っているので、予選はビリだと思いますけど、レース展開としては10位で1点獲れるか獲れないか、目標は9位(2ポイント)です。前回の第3戦の様子からも次の鈴鹿はGRスープラが比較的得意ですし、SUGOも重くても戦えると思っています」
「でもこの富士に関しては、今までのレースは3時間(500km以上)とか長いレースが多かったですけど、今回は350kmで基本的に1回ピットで済むので、これまでウチのチームが燃リス(燃料リストリクター)の影響で燃費が良かった分、ピットストップの給油時間で稼いでいた部分がこれまでの2回から1回になるという意味では、レースで前に出られるチャンスがかなり少なくなる。そして第2戦の富士でもGRスープラが少し苦戦したところもあったので、そういった部分を含めて考えると、今まで以上にキツイレースになると思っています。ノーポイントの可能性が一番高いレースですけど、9位を目標にしたいと思っています」と坪井。
理想としては「雨が降って荒れてくれた方が僕らにとっては嬉しいですね」と本音も漏らすが、もうひとつ気になるのが、チームメイトの山下健太のメンタルだ。前回のスーパーフォーミュラ(SF)では優勝候補に挙げられていながら13位に終わり、レース後のSNSでは「SF嫌い!」などメンタルが心配されたが、坪井は山下の実力に太鼓判を押す。
「山下選手に対する信頼度は開幕戦からずっと高いので、そこは全然問題なく心配していないです。本人としてはスーパーフォーミュラにしてもGTにしても凹んでいるところがあって、いろいろな記事でネガティブ発言を見かけますけど(苦笑)、そんなネガティブになる必要のないくらいパフォーマンスを持っている選手で、普通に走れば速いし、強い。当然、ドライバーは結果が出ないとネガテイブになる気持ちはメチャクチャわかるので、そこは僕とチームと支え合っていければいいなと思います」
坪井と山下は、同じ1995年生まれの同世代でありライバルでもあるが、スーパーGTの現場ではSFの話題も普通に話しているという。
「GTの現場でスーパーフォーミュラの話もしますし、これまでお互い結構、苦労しているところがあるので、お互いの気持ちがわかる部分があります。『スーパーフォーミュラ難しいよね』と(苦笑)。それでもふたりともスーパーGTでは切り替えていますね。僕も去年は散々、宮田(莉朋)選手がスーパーフォーミュラで調子が良くて、僕がダメで、みたいな展開でしたけど、スーパーフォーミュラとスーパーGT、しっかり切り分けてプロとしてやってきたので、山下選手も同じで何も問題ないと思います」
今週末のスーパーGT富士、レースの優勝争いだけでなく、チャンピオンシップ最上位の36号車がどのようなポジションでレースを戦うのか。ランキングを争う2位の3号車Niterra MOTUL Zとの関係性も楽しみだ。
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