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最後かもしれないランボ製自然吸気12気筒エンジンは精緻で豪快だった──エストリル・サーキットでアヴェンタドールSVJを堪能する

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最後かもしれないランボ製自然吸気12気筒エンジンは精緻で豪快だった──エストリル・サーキットでアヴェンタドールSVJを堪能する

スーパーカーの世界では、高性能な限定(台数もしくは期間)モデルで、そのジェネレーションを締めくくることを常とする。アヴェンタドールの前期型ではSV(スーパーヴェローチェ、クーペ600台・ロードスター500台)がそれで、後期型でもその登場が期待されて当然だった。

デビューから7年が経った2018年夏。モントレー・カー・ウィークの人気イベント“ザ・クエイル・モーター・スポーツ・ギャザリング”において、アヴェンタドールの最終型とも言うべきSVJが、ついにワールドプレミアされた。

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まずはクーペのみで、世界限定900台。加えて、スペシャルなボディコーデをまとったSVJ63も63台限定生産されると発表された。ちなみに、63という数字は、ランボルギーニ社の創立年(=1963年)にちなんだもの。今後、この数字は何かとキーになると考えてよさそうだ。

「J」。日本のスーパーカーファンにとっては、特別な名前。スペイン語でJOTA。本式の発音はホータとなるが、イタリア語でイオタと読んだ。ミウラの時代にあった、それは伝説のマシンから引用されている。

従来のネーミング作法に則れば、LP770-4 SVJと呼んでいたであろう、アヴェンタドールの最終進化系モデル。注目のポイントは、エンジンのパワーアップとA.L.A.の装備およびそれに伴うエクステリア変更、である。

6.5リッターV12自然吸気エンジンにはこれまでにも、700cv(デビュー時)、720cv(アニヴェルサリオ)、750cv(SV)、740cv(S)といういくつかのパワーバリエーションが用意されてきた。SVJ用では、出力もトルクも従来とはまるで違う性能曲線を描く。シリーズ最強となる770cvを得て、パワーウェイトレシオはなんと驚きの2以下、1.98kg/psを達成した。

もうひとつのポイントがA.L.A.で、これはランボルギーニが特許をもつアクティヴ・エアロダイナミクス・システム。ウラカン・ペルフォルマンテにおいて初めて採用されたものだ。

簡単に言うと、車速や加減速など動的状態に応じて車体の前後に装備した電動フラップを動かすことで空力的な負荷を積極的に変化させ、ダウンフォースを高めたり、ドラッグを低くしたりする技術である。

進化したシステムを搭載したという意味で、SVJではA.L.A.2.0と呼んでいる。A.L.A.の活用を前提とした統合的車両制御システムが新たに開発されたことが、実はSVJにおける走りの最大注目ポイントだったと言っていい。

アヴェンタドールSVJの国際試乗会はポルトガルのエストリル、アイルトン・セナが初めて勝ったサーキットで行われた。

インテリアにはSVからのさほどの変更点はない。TFT液晶メーターのデザインが変わって、A.L.A.の作動状況が分かるようになっている。

赤いカバーをあげてエンジンスタートボタンを押した。V12ユニットが轟然と目を覚ます。軽くブリッピングしてみれば、荒々しくも精緻な回転フィールが右足裏に伝わってきて、ドライバーの心を掻き立てる。

1台ずつプロの操る同じ色のSVJをサーキットで追走するという、贅沢なテストが始まった。

レーサー気分になってピットレーンでマシンを左右に振ってみれば、ノーズが軽く自在に動く。これは面白くなりそうだ、と気分を高めてコースイン。何気なく右足に力をこめた瞬間、身体にガツンと衝撃が走った。車体に力が漲って、全力で反応してきたからだ。そのまま蹴飛ばされたかのように加速。軽さがはっきりと伝わってくる。それでいて安定している。いきなり肉体と車体が融合してしまったかのような一体感が生まれた。

先導車のペースも、みるみる上がっていく。ドライブモードを“ストラダーレ”(ノーマル)から、まずは“スポーツ”にスイッチした。本来ならサーキットテストであることだし、いきなりコルサ(サーキット)を試すべきだったが、以前、SVをサーキットでテストした際、“スポーツ”のほうが“コルサ”よりも運転しやすく、楽しかったと記憶していたからだ。

ところがどうだ。SVJでは、よりリアに駆動を振り分ける“スポーツ”では、丁寧に扱わないとすぐにアンダー&オーバーが出て、なんだか危なっかしい。そのくせ右足の動きにパワートレーンが潔く反応し、なおかつ低回転域からトルクがしっかりと出ていることに加えて、リアへの駆動配分が以前よりも3%ほど増して前輪の自由度が高まっているため、神経を使わざるをえない。SVに比べ“スポーツ”モードでは、かなり神経を使うクルマになった。もっとも、サーキット舗装がつい最近、新しくなったばかりで油分がしみ出し、とても滑り易い状態だった、というのもその大きな要因ではあったのだが。



精緻で豪快な12気筒自然吸気エンジン

だんだんと気苦労が楽しさを上回ってきた。SVではまるで楽しめなかった“コルサ”に仕方なく変えてみる。ニュートラルステア志向で、さほど面白くはない代わりに、結果的には速く走れてしまうというモードだ。

予想に反して、SVJのコルサモードは、SやSVより断然に楽しめた。振り回せる感じのSV+スポーツモードとはまったく別種の楽しさだ。A.L.A.の恩恵=“神の手”を存分に感じつつ、ありあまるパワー&トルクを自在に使うことができる。結果的に、アヴェンタドールをまるでウラカンのように操ることができているような感覚に。自在に操っているという感覚さえ常に伝わってくれれば、たとえオンザレール感に終始したとしても楽しめる。速度がぐんぐん上がっていく=タイムが速くなっていくのが手に取るように分かるから、これはこれで愉快なパフォーマンスではあった。

最終コーナーのパラボリカ・アイルトンセナを立ち上がり、全開でホームストレートを駆けぬける速度も、260、270、ついには280km/h近くへと、周回を重ねるごとに数字が伸びていった。8000回転以上のパワーのつき具合といい、中速域から溢れ出るトルクフィールといい、すべてを自分の右足裏でコントロールしているという感覚は、この時代、贅沢の極みと言っていいだろう。

豪快なサウンドに加えて、右足から身体が次第にエンジンへと吸い込まれるんじゃないか、と思ってしまうほど精緻で豪快な回転フィールは、高回転型の大排気量12気筒自然吸気エンジンでしか味わえないもの。そんなメカニカルな重厚感を背負って走る経験こそ、ランボルギーニのフラッグシップにふさわしい。

自然吸気の12気筒を積んだランボルギーニは、このSVJシリーズが最後になると思われる。次世代モデルからはモーターアシストを活用してCO2排出量を抑えつつ、さらなる高性能を目指すとすでに宣言した。

ピュアな12気筒を楽しむなら、今のうちというわけだ。

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