フォードがハイパーカー投入を検討
米国の自動車メーカーであるフォードは、耐久レースのトップクラスにハイブリッド・ハイパーカーを投入することを検討しており、1969年以来のル・マンでの完全勝利を目指してフェラーリと直接対決することになるかもしれない。
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初代GT40が途絶えて以来、フォードは(1980年代初頭の不運なC100を除いて)スポーツカーレースの上層に顔を出すことはなかったが、モータースポーツへの注力を強化している今、サルト・サーキットのフロントグリッドに返り咲く可能性がある。
モータースポーツ部門のフォード・パフォーマンス(Ford Performance)のグローバル・ディレクターであるマーク・ラッシュブルック氏はAUTOCARの取材に対し、フォードが「どこでレースができるか、あるいはレースすべきかを常に研究している」と語った。
世界耐久選手権(WEC)のGT3クラス、ダカール・ラリー、世界ラリー選手権(WRC)、NASCAR、オーストラリアン・スーパーカー、パイクスピークへの参戦に加え、2026年にはレッドブルとともにF1への復帰を目指す。同社はすでに「他のどのメーカーよりも多くの場所で戦っている」とラッシュブルック氏は言う。
しかし、トヨタ、フェラーリ、プジョー、ランボルギーニ、アルピーヌ、キャデラック、ポルシェ、BMWなどとは異なり、ル・マン・ハイパーカー(LMH)やル・マン・デイトナh(LMDh)のプロトタイプクラスには参戦していない。
将来的にハイパーカーの投入を検討するかとの質問に対し、ラッシュブルック氏は「与えられた使命に責任を持つためには、あらゆる機会を意識する必要がある」と答えた。
同氏はWEC復帰を後押しする要素として、耐久レースの知名度と競争力が高まっていること、さらにFIAがLMHとLMDhの同時参戦を認めたことを挙げた。
「モータースポーツは全体的、世界的に見ても非常に強く、そしてすべての種目で非常に強い。しかし、ここ3年のスポーツカー・レースは相対的に盛り上がってきており、その理由の多くは世界的な収斂にあると思います」
「GTEとGT LMがGT3に収斂したことで、GTレースは1つの焦点に絞られ、マスタングGT3を持つ意味が生まれました。プロトタイプでも同様ですが、まだLMDHやLMHが残っているため、本当の意味での収斂には至っていません。ただ、少なくとも一緒にレースできるようにはなりました」
フェラーリとの対決は?
ラッシュブルック氏は、フォードがLMDhとLMHのどちらを選択するかについては明言を避けた。LMDhでは、電気モーターの配置やシャシー(サプライヤー4社から選択)など既製部品を多く使用しなければならない。LMHでは、メーカーにとって設計やエンジニアリングの自由度が高い。
「LMDhを選ぶメーカーもあれば、LMHを選ぶメーカーもある。もちろん我々も検討していますが、どうするかまではお話することはできません」
フォードは2020年、eスポーツに参戦するためのバーチャルレーシングカーとして、ハイパーカーのP1を公開した。実車の生産計画は示されていないが、その後、実物大のコンセプトカーを製作した。
現在、GT3クラスでマスタングがフェラーリ296に戦いを挑んでいるが、1960年代以来のル・マンでの完全優勝を望むかという質問に対し、ラッシュブルック氏は「今年のル・マンでも彼らとレースしましたし、またやるつもりです」とだけ答えた。
フォードのジム・ファーレイ最高経営責任者(CEO)はモータースポーツ・マニアとして知られ、自身も熱心なレーシングドライバーであることから、同社のレース活動を強く推進している。ラッシュブルック氏によると、これは新しいプログラムの承認を得るうえでありがたいことだという。
「彼はモータースポーツとは何か、モータースポーツに何が必要かを理解し、そこから得られる利益を理解しています。しかし、彼はビジネスの観点から、責任ある持続可能な方法でモータースポーツを行うよう、我々に説明責任を課してきます」とラッシュブルック氏は言う。
ファーレイCEOは以前から、このような活動は商業的に実行可能であることが証明された場合にのみ許可されると述べていた。同氏はAUTOCARの取材で、「我々は持続可能なビジネスのためにレースを拡大してきました。これまでは、成功を助けるためにスポンサーをしてきましたが、今ではカスタマービジネスを立ち上げています」と話している。
フォード自身はモータースポーツチームを運営しておらず、ハイパーカープログラムも専門組織によって運営されることになるだろう。
実際、ラッシュブルック氏は「参戦するすべての場所において、我々はチームを所有していない」と強調した。
レッドブルとは協業せず
注目すべきは、フォードのF1パートナーであるレッドブルが、新型ハイパーカーのRB17を独自開発したことだ。レッドブルは開発の初期段階でフォードにこのプロジェクトを持ちかけたが、フォードの製品戦略とは相容れないと判断された。
ラシュブルック氏は、フォード・パフォーマンスがレッドブルとの協業を見送った理由について次のように説明している。
「利益が得られるかどうかがポイントでした。クリスチャン(・ホーナー氏、レッドブル代表)とその話をしたとき、我々はフォードGT MkIVを市場に投入しようとしていました。RB17ほどではありませんが、素晴らしいサーキットマシンです」
「そこで我々は、この分野における野心がGT MkIVで満たされていると感じました。最新のフォードGTもそうですが、オリジナルのGT40を彷彿とさせる、当社の伝統に忠実なものです」
EVレースには消極的
ラッシュブルック氏は、フォードがハイブリッド・ハイパーカーをル・マンに投入する可能性は認めたものの、近い将来のフルEVによるモータースポーツ参戦については否定的だった。
フォード・パフォーマンスのEV戦略は現在、スーパーバン、F-150ライトニング・スーパートラック、マスタング・マッハE 1400など、単体のデモカーが中心となっており、これらをレースプログラムに適応させる計画はないという。
「状況を見守る必要がある」とラッシュブルック氏は言う。「デモカーでの成功を考えると、フルEVのレースシリーズに参加する緊急性はあるでしょうか? 正直なところ、現時点ではありません。しかし、もし我々の柱に合致するような、理にかなったものが出てくれば、参加を検討したい」
「ただし、それは正真正銘のモータースポーツでなければなりません。それに、無理にフォーマットを変えたくはない。もし突然、ル・マン24時間レースが完全電動化されると言われても、テクノロジーが追いついていないので理にかなっているとは思えません。24時間という形式も変えれば、それはもはや24時間レースではなくなってしまいます……」
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