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ヤマハ「Y-AMT」+MT-09 vs BMW「ASA」+R1300GSアドベンチャー【注目のクラッチレス機構を徹底比較・後編】

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ヤマハ「Y-AMT」+MT-09 vs BMW「ASA」+R1300GSアドベンチャー【注目のクラッチレス機構を徹底比較・後編】

近年スポーツバイクの分野にも搭載され始めたクラッチレス機構。前回のホンダE-ClutchとDCTに続き、今回は2024年にヤマハとBMWが市場に投入した2つのクラッチ&変速の自動制御機構を比較紹介しよう。この2機構は、クラッチ&変速の各アクチュエーターで自動制御する点は共通ながら、それぞれねらった方向が異なる点が興味深い。

Y-AMT:左手変速に注力し、ステップワークの自由度を追求したヤマハの新機軸

【画像16点】ヤマハとBMWの最新クラッチレス機構をじっくり見るべし!

【ヤマハ・Y-AMT】
試乗車:MT‐09ABS Y-AMT(価格:136万4000円/車重:196kg)
■STDモデルとの価格差/重量差:11万円/3kg
■特徴
2024年の新型MT-09で搭載されたクラッチレス機構がY-AMT(ヤマハ・オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)。シフト用/クラッチ用アクチュエーターをそれぞれエンジン背面に搭載し、ベースエンジンに大きな変更を加えることなく、自動化したシステム。変速にはECUとMCU(アクチュエーターの制御を司るモーター・コントロール・ユニット)が通信で連携し、ECUはシフトアップ時のエンジン点火/噴射、シフトダウン時の電子制御スロットルなどをコントロール。MCUは最適なシフト操作/クラッチ操作をアクチュエーターに指示。クラッチは自動制御でつなぐ・切るを行い、レバーは非装備のため大型自動二輪AT限定免許で運転可能だ。
変速は左グリップにあるシーソー式シフトでの指操作で、親指側でダウン、人差し指側でアップ。シフトペダルは非装備。MTモードはライダー主導で変速する設定ながら、減速から停止に至るまでには、カシャカシャのエンジン内部でクラッチとギヤ変速のメカニカル音が聞こえ、自動的に1速に落ちる機能も持つ。
自動変速のATモードも装備し、DとD+という2種類のシフトプログラムが設定されている。街中や高速道路などでは穏やかな自動変速のD、レスポンスのよい加減速を味わうならD+という使い分けとなる。

■長所
節度のあるハンド操作での変速が特徴。親指でのシフトダウンのほか、シート式反対側のシフトアップは人差し指で操作するものの、その形状を生かして、人差し指で前側に弾く操作でもシフトダウンが可能。指で押す・弾く操作をすれば、ギヤ抜けは起こさず確実に変速。右グリップのスイッチで、MTからATモードへ簡単に切り替えられるのも便利だ。

■短所
シフトダウンの親指側ボタンがやや奥まった位置にあり(個人的な印象)、最初は瞬時に見つけられず減速で慌てる場面もあったが、使い続ける内に慣れるだろう。ATモードはD、D+ともに低いギヤで回転を引っ張る傾向が強く、街中を高めのギヤで流したいときなど(例:トップ6速の50~60km/hレベル)、思うようにシフトアップしない場面も。また減速時は逆にダウンのタイミングが乗り手の想定よりも遅く感じる場合もある。ただし、そうした場合は乗り手がボタン操作でシフトアップ、ダウンの介入をすることもできる。

■ミニインプレッション
ヤマハはクラッチレスでのレバー操作解消に加え、足操作の負担をなくすねらいでシフトペダルを非装備にした。左手がクラッチ操作不要となった分をハンド変速に当て、左足は変速操作がなくなった分をステップワークに集中させるという明確な意図で、新たなスポーツバイクの世界を提案した。そのため、シフトペダル操作を付加することはないかもしれないが、個人的にはあったらうれしい。
また、ハンド操作のマニュアル変速は、節度のある確実な操作感で、機構の真摯な造り込みが伝わってくる。一方で、ATモードは、短所で前述したようにライダーの意に沿わない場面が時折あり、ハンドシフトを介入させることもあった。

<ヤマハMT-09 Y-AMT主要諸元>
■エンジン 水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク78.0×62.0mm 総排気量888cc 圧縮比11.5 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力88kW(120ps)/10000rpm 最大トルク93Nm(9.5kgm)/7000rpm 燃費20.8km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速2.571 2速1.947 3速1.619 4速1.380 5速1.190 6速1.037 一次減速比1.680 二次減速比2.812
■寸法・重量 全長2090 全幅820 全高1145 軸距1430 シート高825(各mm) キャスター24°40′ トレール108mm  タイヤF120/70ZR17 M/C 58W  R180/55ZR17 M/C 73W 車両重量196kg
■容量 燃料タンク14L エンジンオイル3.5L
■車体色 ディープパープリッシュブルーメタリックC(ブルー)、マットダークグレーメタリック6(マットダークグレー)
■価格 136万4000円(STDは125万4000円)

ASA:既存のマニュアルスポーツから自然に乗り換えが可能な、BMW流クラッチレス機構

【BMW・ASA】
試乗車:R1300GSアドベンチャーASA(価格:354万9000円※車体色によって異なる/車重:269kg)
■STDモデルとの価格差/重量差:9万7000円/2.5kg(※推定値)
■特徴
2024年にR1300GSアドベンチャーの一部仕様として採用されたクラッチレス機構がASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)。次年度以降はR1300GSにも採用される模様だが、同機構の特徴もヤマハのY-AMTと同様、シフトアクチュエーターとクラッチアクチュエーターを装備(ASAの場合はエンジンケースに内蔵)し、クラッチの自動制御、シフトの変速制御を実施。クラッチは手動での操作がないためレバーは非装備で、大型自動二輪AT限定免許で運転可能。
Y-AMTと異なるのは、変速操作を手ではなくシフトペダル操作のままとしたことで、通常の変速と同様のシフトパターンとなっている。マニュアルモード(Mシフトモード)とATモード(Dシフトモード)の切り替えは、左グリップにあるボタンのひと押しで簡単に切り替えが可能。

■長所
Mシフトモードは「クラッチ操作のないクイックシフター付きのマニュアル変速」と言えるもので、発進と停止でも違和感のない自動クラッチ操作が確かめられる。変速も違和感がなく、ライディングモードごとに特性の変わるATのDシフトモードも、それぞれに加速・減速の特徴を持ちつつ、滑らかな変速を実現。Mシフトモード、Dシフトモードとも、停止時には1速へ戻る自動シフトダウン機能があるほか、Dシフトモードの作動中でもライダーの変速操作が介入できる。

■短所
試乗時の記憶を色々たどってみても、特に短所を思い出せない。強いて言えば、1~3速での加速など、上手いライダーのシフトアップ&クラッチ操作のほうが滑らかな場合があるかもしれないが……。

■ミニインプレッション
以前に展開した同車の試乗記に詳しく書いたが、適正なリニア感のあるマニュアルモードは、滑らかな自動発進と停止が行え、全回転域でうまい操作をしてくれるクイックシフターの変速マナーだと感じた。制御性能を上手に練ったBMWのASA機構の優秀さもあるだろうが、変速操作を足のままとし、シフトタッチの感触も通常のマニュアルシフトとほぼ同じだからとも言える。
新しい操作方法を選んだほう(この場合はヤマハY-AMTのハンドシフト)は、慣れるまでの違和感がどうしても拭えず不利な評価をされがちだが、それを差し引いてもBMWのASAは、高い完成度だと感じる。特にAT変速のDシフトモードは各ライディングモードのプログラムに沿った加速・減速時の変速の滑らかさ、同時に変速タイミングでのエンジンの制御も馴染みやすく、違和感を覚える場面はほとんどなかった。

<BMW R1300GSアドベンチャー ツーリングASA主要諸元>
■エンジン 空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク106.5×73mm 総排気量1300cc 圧縮比13.3 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力107kW(145ps)/7750rpm 最大トルク149Nm(15.1kgm)/6500rpm 燃費20.4km/L(WMTC値)
■変速機 6段リターン 変速比 1速2.438 2速1.714 3速1.296 4速1.059 5速0.906 6速0.794 一次減速比1.479 二次減速比2.910
■寸法・重量 全長2280 全幅1012 全高1540 軸距1534 シート高820/840-850/870※アダプティブ車高制御comfort装備車両(各mm) キャスター26.2° トレール118.8mm  タイヤF120/70R19 R170/60R17 車両重量269kg
■容量 燃料タンク30L エンジンオイル5.0L
■車体色 レーシングレッド/レーシングブルーメタリック/ブラックストームメタリック/アウレリウスグリーンメタリックマット
■価格 343万2000円~

report●モーサイ編集部・阪本一史 photo●岡 拓/BMW

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