「カーアダプテーション(Car Adaptation)」という言葉はご存じでしょうか?何らかのハンデを持つドライバー、パッセンジャーが愛車に乗れるよう車を改良、改造するサービスのことを表す言葉で、欧米ではチューニングショップと並んで一般的なサービスです。
高齢化社会の今、クルマにもっと乗り続けたいが、年齢的、身体的に諦めなければならなくなったという話が身近になっています。とは言え、我々クルマ好きにとってはクルマに乗れなくなることはとても辛いこと。そんな場合の選択肢に「カーアダプテーション(Car Adaptation)」というものがあることをご存じでしょうか。福祉車両、介護車両と言えばわかりやすいかもしれません。
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日本での福祉・介護車両の主な使われ方は、その名の通り、健常者がサポートするべき人を福祉・介護施設等と自宅を移動するための送迎クルマではないでしょうか。一方、欧米では昔から年齢的、身体的なハンデをカバーして、自ら乗車または自ら運転するために必要な装置、器具を装着してクルマをカスタマイズするということが普及しています。「福祉・介護車両」という言葉は存在しません。「カーアダプテーション」という言葉が使われ、チューニングカーショップと同様に確立したサービスとなっています。
ドライバー、オーナーの都合で様々なカスタマイズが必要になるため、欧米の自動車メーカーは「福祉車両」のようなものは生産していません。自ら運転するための、ハンドル、アクセル、リフトなどのパーツを製造する専門メーカーがたくさん存在していて、スペシャルショップに依頼して、必要なパーツを使ってカスタマイズするというスタイルをとっています。
今回は、30年以上に渡ってクラシックメルセデスを乗り継いだメルセデスフリークにヤナセが所有している「メルセデス・ベンツ V220d ロング福祉車両」を体験していただいたドライビングレポートです。
世界的なミニバンブームですが、主に欧州車は商用車をベースにしています。メルセデス・ベンツはコマーシャルバンを乗用車に仕立てています。その成り立ちから、走行性能、快適性が高いのは折り紙付きです。
メルセデス・ベンツと言えばヤナセというくらい長くメルセデス・ベンツを扱っていますが、ヤナセでは福祉車両へのカスタマイズはVクラスだけではありません。他モデルのカスタマイズ事例も多数あり、使用状況などを相談の上、装備の仕様を決めていきます。
ヤナセの福祉車両:https://www.yanase.co.jp/service/adaptation_vehicles
便利なリフトを搭載このVクラスはイタリアのフィオレラというメーカーの昇降リフトが装着された車両で、スロープよりも労力なく、安全に乗り降りができます。
メルセデスV220dロングの車体後部に装着されたイタリアのフィオレラというメーカーの昇降リフト。リフトを収納した状態。昇降能力は360kg。シンプルかつ確実な装置操作は本体のスイッチまたはオプションのリモコンで行います。リフトはとても頑丈で、作動中に揺れたりしないのでとても安心感が高い造りになっています。
フィオレラのリフトは絶妙な昇降のスピード、高い剛性感で不安なく利用できます。乗車中は車椅子から隣のセカンドシートに座っていただきました。シートレイアウトは思いのまま7人乗りのVクラスをヤナセがカスタマイズしたこのクルマには重厚感があって、とても座り心地の良いキャプテンシートが標準装備されています。セカンド、サードシートは前後のスライド、取り外しができるので、複数のレイアウトが可能です。今回は車椅子を入れるためにセカンド、サードシートを1つずつ取り外しました。※このクルマは乗車定員が変更されています。
メルセデスの乗り心地を堪能訪れた長野県白馬村まで大半が高速道路となりましたが、このVクラスはロングホイールベースということもあって、安定感は抜群。直進安定性はもとより、最後部に軽くないリフトを載せているにも関わらず、まったくピッチングなどの不快な揺れはありません。メルセデスにはうるさいパッセンジャーもご満悦でした。
ドライバーも快適ドライバーの視点からもVクラスの快適性を存分に楽しむことができました。ベースがコマーシャルバンだけあってドライバーの負荷を軽減する、荷物を大量に積んでも安全に走ることができるという基本性能の高さを感じました。FRということもありコーナリングもレーンチェンジも自然で、ミニバンでありながら積極的にドライビングを楽しむことができます。
定評あるメルセデスの2リッターターボディーゼルはレスポンスがよくトルクフルなエンジン。パワートレインは最高出力163馬力、最大トルク380Nmの 2リッター直列4気筒直噴ディーゼルターボエンジンに9速AT「9G-TRONIC」の組み合わせです。高速道路を走っていると坂道でもっとパワーがあればと思う時があったので、車重からいくとドイツ本国にある237馬力の300dの方がベストマッチかもしれません。
東京と白馬の高速道路を使った往復で710kmを走って使った燃料は55.26リットルでした。燃費はリッター12.7kmほどとなり、ミニバンなのにハンドリングも楽しめて経済的なメルセデスということができます。
Auto Bild誌でも高評価ドイツのAuto Bildの長期テストでもVクラスの評価は高く、テスト車の「V 220 d(W447)」は10万kmを走り、最高評価の「1」でした。「長距離走行時の快適性、広々とした空間、燃費のよさ、アダプティブLEDヘッドライトなどの車載オプションで感銘を与えた」とコメントしています。
乗りたいクルマに乗るということドライバーもパッセンジャーもドライブが楽しい。これぞメルセデス!なVクラスでした。例え、運転はできずとも、より快適なドライブができるように、愛車をチューニングして、乗りたいクルマに乗るのも、また一つのカーライフだということを実感しました。
Text&Photo:アウトビルトジャパン撮影協力:ヤナセオートシステムズ、MVCJ、白馬リゾートホテルラネージュ
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