9月17日、2023年F1第16戦シンガポールGPの決勝レースが行われ、カルロス・サインツ(フェラーリ)がポール・トゥ・ウインで今季初、そして2022年第10戦イギリスGP以来となるF1キャリア2勝目を飾った。2位にランド・ノリス(マクラーレン)、3位にルイス・ハミルトン(メルセデス)が続き、アルファタウリの角田裕毅はリタイアとなった。
マリーナベイ市街地サーキットを舞台に開催された第16戦は前戦と同じくハードタイヤにC3(ホワイト)、ミディアムタイヤにC4(イエロー)、ソフトタイヤにC5(レッド)と、最も柔らかいコンパウンドが割り当てられているなか、多くの車両はスタートタイヤにミディアムを選択。
一方、3番グリッドのシャルル・ルクレール(フェラーリ)、15番グリッドの角田、17番グリッドのオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ピットスタートの周冠宇(アルファロメオ)の4台はソフトをチョイス。
そして11番グリッドのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、13番グリッドのセルジオ・ペレス(レッドブル)、16番グリッドのバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)の3台はハードタイヤを装着している。
なお、既報のとおり予選Q1でクラッシュを喫したランス・ストロール(アストンマーティン)は決勝を欠場。気温30度、路面温度37度、湿度71パーセントというコンディションのなか、19台が出走する62周のナイトレースはスタートを迎えた。
ターン1ではサインツがホールショットを守り、ソフトタイヤを履くルクレールが2番手に浮上しフェラーリ勢が1-2体制を構築する。
スタートでわずかに出遅れたラッセルは5番グリッドスタートのハミルトンとターン1進入で並ぶ。ただ、ハミルトンはターン1をオーバーランしつつも3番手に浮上。4番手にラッセルというオーダーに。一方、15番手スタートの角田はペレスとの接触により、1周目にレースを終えることに。
ハミルトンは2周目にラッセルに、5周目にランド・ノリス(マクラーレン)にポジションを譲り、これで6周目時点でサインツ、ルクレール、ラッセル、ノリス、ハミルトン、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)のトップ6となった。
7周目にはミディアムタイヤを履く首位サインツと、ソフトタイヤで追う2番手ルクレールのギャップが1秒まで広がる。一方、11番手スタートのフェルスタッペンはリアム・ローソン、ハース勢の2台をかわし6周目には8番手に浮上する。
サインツは9周目に1分39秒626をマークしファステストを更新。それでもサインツとルクレールのギャップは9周終了時点で1.1秒ほどだった。その翌週の10周目、フェラーリからルクレールに対し「サインツへのギャップは3秒がターゲットだ」と無線が飛ぶと、11周目に2台の差は1.4秒まで広がる。
一方の3番手ラッセルにはメルセデスチームから「フェラーリはルクレールを犠牲にするようだ」と無線が飛ぶ。この時点でフェラーリはサインツが勝利を手にするには、対ラッセルを考えより多くのギャップを広げておく必要があると考え、ソフトタイヤを履くルクレールのペースをコントロールしようとする。
ただ、ルクレールも12周目には「サインツのペースが落ちていないかい?」と無線を飛ばし、サインツとのギャップを1.2秒に保つが、14周目には2.4秒までギャップを広げる。ただ、ルクレールは何かをアピールするかのように、15周目に1分39秒613のファステストを更新する。しかし、16周目にはサインツが1分39秒398を記録しチームメイトの記録したファステストをミディアムタイヤで易々と塗り替える。
さらに、16~17周目には「5周以内にサインツから5秒広げる必要がある」とルクレールに対し、さらにギャップを開けるよう指示が飛ぶ。18周目にはルクレールはサインツとのギャップを3.2秒まで広げる。
19周目にローガン・サージェント(ウイリアムズ)がウォールにヒットし、フロントウイングを破損。自走してピットに戻ったが、フロントウイングの破片をコース上にばら撒くかたちとなり、20周目にセーフティカー(SC)が導入される。
20周目終わりにミディアム&ソフト勢がピットインしハードタイヤに交換。フェルスタッペン、ペレス、ボッタスのハードスタート勢はコース上にステイし、リスタート時点のオーダーはサインツ、フェルスタッペン、ラッセル、ペレス、ノリス、ルクレール、ハミルトン、アロンソ、オコン、ボッタスというトップ10に。
6番手(ピット組4番手)に順位を下げたルクレールは「何があったんだ?」とチームに無線。フェラーリは「トラフィックがあったから待つ必要があった」と説明する。
レースは23周目に再開され、サインツは一気にフェルスタッペンとのギャップを広げる。22周走行したハードタイヤを履くフェルスタッペン、ペレスはペースが上がらずメルセデス勢にかわされる。
これで24周目には首位サインツの0.7秒後方に2番手ラッセルという状況に。さらに24周目にはラッセルがフェルスタッペンを攻略し3番手に浮上する。SC導入でラッセルとのギャップを広げ切ることが叶わなかったサインツは一気に追い詰められる。
リスタート後、ハードタイヤでのペースはラッセルの方が俊敏だった。サインツはセクター1自己ベストで逃げようとするが、ラッセルはセクター全体ベストで間合いを詰める。
さらに27周目にはハミルトンがフェルスタッペンをかわし4番手に浮上。ハードタイヤスタートのフェルスタッペンは苦しい戦いが続き、28周目にはルクレールが5番手に浮上すると、6番手フェルスタッペン、7番手ペレスというオーダーに。
一方、一時は0.6秒差まで迫った首位サインツと2番手ラッセルだったが、29周目にはその差は1.3秒まで広がった。ラッセルは「サインツは僕らのペースを下げようとペースをコントロールしている」と無線を飛ばす。
それを証明するかのようにサインツは5番手ルクレールから1秒近くペースを落として走行。その間に3番手ノリスが2番手ラッセルのDRS圏内に入る。ただ、1ストップ作戦なのはラッセルも変わらず、ラッセルに対しても「タイヤをセーブしてくれ」と無線が飛ぶ。
サインツを筆頭にラッセルもペースをコントロールしたことでノリス、ハミルトンも接近。トップ4が2.1秒以内という数珠繋ぎの状態でレースは折り返しとなる32週目を迎えると、ここからは上位勢は総じてペースコントロールとなり均衡状態が続いた。
一方ハードタイヤで引っ張るレッドブル勢のペースは鈍い。ペレスは40周目にピットに入り、コース上最後尾となる18番手でコースに復帰。フェルスタッペンは41周目にピットインするが、15番手でコース復帰。レッドブル2台は後半ミディアムタイヤで追い上げにかける。なお、変わってローソンが10番手と入賞圏内に浮上する。
そんな中、42周目には5番手ルクレールがトップ4台の隊列に追いつき、トップ5台が4.1秒以内という僅差となる。タイヤマイレージはほぼ同じなだけに、どこで、誰が最初に仕掛けるか。そのタイミングを測りながらの走行が続く。
43周目、オコンがパワーユニット関連のトラブルか、ターン2でマシンを止め、バーチャル・セーフティカー(VSC)が導入される。もし、このタイミングまでレッドブルがハードタイヤでステイしていれば戦況は大きく変わったに違いない。
なお、このVSCの間に上位勢では2番手のラッセル、4番手ハミルトンがピットイン。メルセデスはダブルピットで新品ミディアムに履き替え、勝負にかけた。
これでオーダーはサインツ、ノリス、ルクレール、ラッセル、ハミルトン、ガスリー、ピアストリ、そしてローソンが8番手に。なお、このVSC中にアロンソはソフトに交換も、右リヤタイヤ交換に手間取り15番手まで後退することに。
VSCは45周目に解除され、この時点でラッセルとサインツは13秒差。首位サインツ、2番手ノリス、3番手ルクレールはVSC解除から自己ベストペースで周回も、フレッシュタイヤの4番手ラッセルはファステストペースで飛ばし、46周目には1分36秒273をマーク。10秒前を走る3番手ルクレールとの間合いを縮めにかかる。
一方、50周目にはフェルスタッペンがローソンをかわし8番手に浮上する。9番手に後退したローソンだが、10番手ヒュルケンベルグまでは4.6秒のギャップをキープしており、念願のF1初入賞が見えてきたが、後方からアルボン、ペレスが接近する。
レースも残り10周となった53周目、4番手ラッセルが3番手ルクレールのDRS圏内に入った。このタイミングでラッセルと首位サインツは7.6秒差まで縮まっていることもあり、ルクレールはラッセルを抑え切ることが仕事となる。
しかし、ラッセルは53周目のターン14でルクレールを易々とパス。さらにハミルトンも54周目にルクレールを攻略。メルセデス2台は間合いを縮めるなか、58周目にノリスがサインツのDRS圏内に入る。さらに、そのノリスのDRS圏内にラッセルそしてハミルトンも急接近。
トップ4が接戦、サインツを除く3台がDRSを使える状況でレースは終盤の局面を迎えたが、サインツは59周目に「フロントタイヤが終わった」と無線。そんな59周目にラッセルがノリスに仕掛けるが、ここはノリスが守る。
ノリスにDRSを使わせるサインツの戦略で、2台は間合いこそ縮まるがノリスもタイヤの限界は近く、オーバーテイクには至らない。4台は均衡状態のままファイナルラップを迎えたが、そんなファイナルラップで3番手ラッセルがターン12進入の際に右フロントタイヤをウォールにひっかけ、そのままクラッシュ。これでハミルトンが3番手に浮上するまさかの展開に。
チェッカー直前の波乱も他車には影響もなく、サインツがポール・トゥ・ウインで62周目のトップチェッカーを受け、自身F1キャリア2勝目を飾った。これでレッドブルの開幕連勝記録(14勝)、そしてフェルスタッペンの個人連勝記録(10勝)の更新をフェラーリが止める結果となった。2位にノリス、3位にハミルトンが続き、レッドブルは表彰台にも上がることは叶わなかった。
以下、4位ルクレール、5位フェルスッペン、6位ガスリー、7位ピアストリ、8位ペレス、9位ローソン、10位マグヌッセンまでが入賞。ローソンはF1初入賞を果たした。
次戦となる2023年F1第17戦日本GPは、9月22~24日に三重県の鈴鹿サーキットで開催される。
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