2020年11月10日に発表された新型NC750Xは、エンジンからフレーム、デザインに至るまで大胆な進化を遂げた。ホンダは日本でも2021年モデルとして販売することをすでに発表している。 月刊『オートバイ』のメインテスター太田安治氏が、これまでのモデルと新型の大きな違いを解説!
モデルチェンジのたびにツーリング性能を高める「NC750X」。新型はいっそうの扱いやすさに期待
2012年に登場したNC700Xに初試乗したときの印象は、「ん? ホンダ車らしくないな……」だった。
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新開発のエンジンは拍子抜けするほど扱いやすいものの、僕がホンダのエンジンに抱いている「気持ちよく高回転まで回ってパワーが湧き出す」イメージとはかけ離れた、高回転域をバッサリ切り捨てた設定。ハンドリングは素晴らしく安定性が高い反面、操っている実感は薄い。扱いやすくて疲れない優れた旅バイクだと感心しながらも、どこか中途半端で物足りないとも思った。
その後の2014年にNC750Xとなり、2016年には大幅マイナーチェンジを受けたが、そのたびにエンジンとサスペンションの設定がアップデートされ、オートバイとライダーの一体感が高まって旅バイクとしての快適さに非日常を楽しめる爽快さが増していった。2018年4月にはトラクションコントロールも搭載、2018年11月から販売されている現行型は、シリーズすべてにグリップヒーターとETC2.0車載器が標準装備された。
度重なるモデルチェンジで着実に進化してきただけに、新型への期待はこれまで以上に大きい。
4馬力アップとレブリミットの600回転アップで峠道をリズミカルに駆け抜けられそうだし、前後サスペンションのストローク量をあえて減らしているのは、加減速時の車体姿勢変化抑制の意味もあるはず。前後タイヤのグリップ状態を感じ取りながら積極的に操る楽しみが濃くなっているだろう。
加えて車重が6kgも軽くなり、シート高が30mm下がったことも見逃せない。大型モデルに不慣れなライダーだけではなく、体力的な問題でダウンサイジングを考えているベテランライダーにも魅力的なポイントだと思う。
そしてこのエンジンはDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)との相性が抜群で、NC750Xのために作られたミッションなのでは? と思うほど合っている。
新型は「アダプティブ・クラッチ・キャパシティ・コントロール」と呼ばれる、スロットル開閉時にクラッチを微妙にコントロールする新機構が採用され、スムーズさに磨きが掛かっているようなので、オートマチック変速に偏見を持つライダーも一度試乗すれば認識が変わると思う。僕個人はマニュアル派だが、NC750Xを買うならDCT仕様を選ぶ。
新型NC750Xは外装デザインによってアドベンチャーイメージを漂わせているが、中身はベーシックなロードスポーツ。各種電子制御が加わり、多様なシチュエーションで楽しく安全に走れるパッケージングとなった。ツーリング指向のライダーなら、日本に最適な旅バイクとして魅了されるに違いない。
文:太田安治
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あと3、4リッターあると最高