最新のSは世界最高の座を守れるか
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
ロードテスターが、メルセデス・ベンツSクラスは世界最高のクルマではないかというファーストインプレッションを述べるまでに走る距離は、おそらく一般ユーザーがそういう感想を得るまでより長いはずだ。
今回、モデルチェンジしたばかりのSクラスを取り上げるわけだが、今や自動車マーケットは急速かつ急激な変化の最中にある。そこにおいても、同じ結論を出すことはできるのだろうか。
なにが世界最高かといえば、このビッグなメルセデスは多分、同時期の新型車のなかでもっとも先進的な技術を採用し、熟成と完成が進んでいるというところが、だ。
とはいえ、ハリー・ポッターの魔法がかかったフォード・アングリアには及ばない。フィエスタより安いわけでも、ポルシェより速いわけでも、燃料が不要なわけでも、オフロードを走り回れるわけでも、ましてや空を飛べるわけでもない。もしもメルセデスが、ちょっとだけ魔法のクルマに近い自動運転機能をSクラスに導入していたら、もう少し興奮を覚えたかもしれないが。
要するに、長年にわたり世界初のテクノロジーを数多く採用してきたのだが、それと同時に、Sクラスにはもうひとつ変わらなかったことがある。高級サルーンの代名詞という役割において、それに匹敵するものがほとんどなかったほど、そのステータスを守り続けてきたのだ。
ただ、その長い歴史のほとんどの間、Sクラスはシュツットガルトの特別な最高峰モデルだった。メルセデスのラインナップのヒエラルキーにおいて、間違いなく揺るぎない立場を占めてきたのだ。なにものにも上回られることのない位置だ。
ライバルは増えても衰えぬ期待
そうはいっても、今回の新型にしてみれば、そのポジションが脅かされたように思われたこともあっただろう。それも、一度ならずだ。
いまや、Sクラスよりも高価なメルセデスはいくつか存在する。たとえばフル装備のAMG版セダンやワゴン、GTやスポーツカーがそうだ。しかも、メルセデス・マイバッハ名義の超高級サルーンもある。
そのうえ、身内に新たなハイエンドモデルが加わり、Sクラスに約束されたショールームの一等地を奪い合うことになろうとしている。それはもちろん、すでにメルセデス内部筋が「新たなフラッグシップ」と表現しているEQSだ。
新型Sクラスと異なりオール電力のEQSは、完全新設計のプラットフォームを用いて今年後半にも発売される。ゼロエミッション走行も魅力的だが、室内幅いっぱいに広がるフルデジタルダッシュボードのアピアランスを写真で目にして、衝撃を受けた読者も少なくないだろう。
この手のクルマは必然的に、ほかのコストがかかるプロジェクトに用いられた研究開発のリソースを軒並み吸い上げる。そうせざるをえないのだ。
通常のSクラスがどのようなものなのかは、これから読み進めてもらえれば理解の一助となるはずだ。メカニカル面は既存品に大幅な改良を施して使用し、室内には新たなデジタルテクノロジーを大量に投入している。
デザインはいつも通り、意図的にコンサバティブだが、それは空港のタクシー列のなかにあってもすぐに見分けられるようにするという狙いがあるからだ。「カジノに直行しようぜ!見なよ、Sクラスが回って来たぜ!もう勝ったも同然だな!」といった具合に。
しかし、クラシックでコンサバティブかどうかはともかく、このクルマはまた、今回のような長距離ドライブで、ゴリアテのような超高級車と同行しても、それをダビデのように圧倒するポテンシャルが期待されるものでもある。今回の試乗はバーミンガムの中心部を出発し、ブレコン・ビーコンズを目指したが、その間には市街地と郊外で考えうる限りの道のタイプが揃っていた。実力を試すには、もってこいのコースだ。
高級車が超高級車に挑む
では、ジャイアントキリングの敵役はどうするか。われわれが選んだのは、635psの12気筒を積むベントレー・フライングスパーだ。このクルマのパフォーマンスと運転の楽しさは、昨年のロードテストの際に、われわれを驚かせ、そして喜ばせた。とはいえ、そのほかはメルセデスのサルーンに敵わないのではないかと予想してもいる。
新型Sクラスは、おそらくもっとも楽に英国の高速道路を走れて、オフィスの前に乗り付けられる姿を目にすることも多いクルマになるだろう。上級仕様の4WDシステムを備えたロングボディのS400dは、ベントレーのW12の半分をやや上回るパワーを発揮し、価格はオプション追加後の比較でベントレーの半額以下だ。だからといって、満足度が半分程度ということはないだろう。
過去のSクラスを連れ出した近年のグループテストを振り返ると、競合するアウディやBMWをやすやすと退けている。思い出すのは、ベントレー・ミュルザンヌやレンジローバーのハイエンドモデル、そして中古ながらロールスロイス・ファントムといったラグジュアリーカーの代表格をも圧倒して唖然とさせられたことだ。その超絶的な偉大さは、まさに期待に違わないものだった。
翻って、新型はどうか。そう、おそらくそこまで過剰な期待は抱かないほうがいいだろう。なにもこのクルマが、大型サルーンのマーケットにおいて十分な競争力を発揮できないといっているわけではない。明らかに見て取れる快適さや洗練性、ドイツ車の伝統ともいえる虚飾を省いたラグジュアリーさといった点で、BMW7シリーズやアウディA8より上を行くのに変わりはないはずだ。
もしもショーファードリブンで当たり前のように選ばれるポジションが維持されるなら、そこには妥当な理由がある。それについては、これから説明していこう。そうであっても、自分でステアリングを握るにしろ、運転手へ託すにしろ、高級サルーンとしても、贅沢品としても、はたまたシンプルにクルマとしても、フライングスパーのようなもののレベルに達するだけの資質はないというのが、われわれテスター陣の意見だ。
外観に感じる価格なりの差
一番はっきりしている違いは、バーミンガム・スノーヒル駅にある立体駐車場の屋上に停めていた出発前に見つけられた。フライングスパーは、どこをとっても17万ポンド(約2380万円)の値付けにふさわしい見栄えだ。
高貴なヴィジュアル的存在感はあまりあるほどで、造形のパワフルさも魅力的。クラシックなサルーンであると同時に、超高級GTとしてもデザインされたクルマだ。じつに力強いスタイリングとプロポーション、メリハリがすべてあるべきところにある。野獣的なムードも多少あるが、なかなかハンサムだ。
では、Sクラスは10万4465ポンド(約1463万円)のクルマに見えるだろうか。かろうじてそれくらいには感じられるが、ベントレーより低い水準でありながら、金額以上に思える余地は少ない。Sクラスとしてもやや無個性にすぎるが、グリルなどの要素がちょっとばかり普通だからだろう。
そのグリルには、半自動運転を実現するために多くのセンサーが組み込まれる。メルセデスとしては、ユーザーの期待に応えるべく導入した技術だが、そのせいで鼻先にプラスティッキーで不格好なパネルが据え付けられる。その裏側にあるのは、たくさんのカメラや送受信機だ。コストを抑えつつ組み込むには、これが一番簡単な手段なのだろうが、個人的には好きになれない。
塗装や仕上げにも、わずかながらベントレーに見劣りするところがある。オブシディアンブラックに塗られたテスト車には、オレンジ皮のような肌の荒れが気になるところもあった。ベントレーのエクストリームシルバーは完全無欠の表面仕上げで、パネルのフィットの整合性もわずかながらこちらに軍配が上がる。クロームパーツの輝きでも上回るように思えたが、テスト車ではその一部がグロスブラックに置き換えられていた。
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みんなのコメント
明らかにクラスが違う。
ベントレーは、いいぞ。
こんな感じではないでしょうか。