1年に1度のフェラーリの祭典
イタリアの自動車メーカーであるフェラーリは、10月26日から29日にかけて、レーシングカーを中心とするイベント「フィナーリ・モンディアーリ2023」を開催した。
【画像】特別の中の特別【フェラーリの超限定モデルや近未来的コンセプトカーを写真で見る】 全49枚
フェラーリのオーナー、フェラーリ愛好家(「ティフォシ」とも呼ばれる)、そしてフェラーリの従業員がイタリア・トスカーナ州に集い、美しいマシンの数々に見惚れ、耳を傾け、ハンドルを握った。
フィナーリ・モンディアーリは、ワンメークレース用の車両から、世界に数台しかない貴重なクラシックカー、特別なワンオフモデルまで多種多様な「跳ね馬」を嗜むことができる、毎年恒例の自動車イベントである。
今回は、そんなフィナーリ・モンディアーリ2023に登場したマシンの中から、特に興味深かった17台を取り上げたい。
フェラーリ250 T6 61スパイダー・ファントゥッツィ
その型破りなデザインで注目された250 T6 61スパイダー・ファントゥッツィは、エアロダイナミクスの名の下に「シャークノーズ」をフェラーリで初めて採用した。このデザインは実際に耐久レースで成功を収め、現代のF430にも影響を与えている。
写真の車両は、1961年と1962年にセブリング12時間レースで優勝した後、ラルフ・ローレンが所有していたもの。
フェラーリ250 GTOデイトナ
今回のフィナーリ・モンディアーリで最も高価なのが250 GTOデイトナであった。その価格は7000万ドル(約105億円)と、史上3番目に高価なクルマでもある。
新車当時、購入者はエンツォ・フェラーリ氏自身によって厳選された。それ以来、250 GTOデイトナは1960年代の最高のスポーツカーの1つとして世界的に知られている。
250 GTOは基本的に250 GTベルリネッタSWBを大幅に改良したもので、最高出力300psの3.0L V12エンジンを搭載し、アジリティを高めるために軽量アルミニウム製ボディを採用。1962年から1964年にかけてわずか36台が製造された。
フェラーリ166 MM
イタリアの自動車レース「ミッレ・ミリア」にちなんで名付けられた166 MMは、2.0L V12エンジンを搭載し、1948年から1953年の間にわずか47台が製造された。通常、オークションでは400万ユーロ(約6億4000万円)から500万ユーロ(約8億円)の値がつく。
フィナーリ・モンディアーリには、英国で最古とされるシャシーナンバー43の車両が登場。愛好家のダドリー&サリー・メイソン=スタイロン夫妻の所有で、今年の英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、ダドリー氏自身が運転してヒルクライムに挑んだ。
フェラーリ360モデナ
最も楽しく、親しみやすいフェラーリの1台として知られる360。2シーター、ミドシップエンジン、後輪駆動のスポーツカーで、最高出力400psのV8を搭載し、0-100km/h加速4.5秒のタイムを誇る。表面的には極めてオーソドックスに見えるだろう。
しかし、滑らかなフロントエンド、F1の風洞実験に基づいた形状のヘッドライト、ドア後ろのインテークに空気を送り込むベルトラインなど、90年代前半に登場したフェラーリの中では特に美しい部類に入る。一見特徴のないボディは、ほぼ時代を超越したタイムレスなデザインである。
さらに、6速マニュアル・トランスミッションを搭載しており、クラッチペダルを持つ2000年代最後のフェラーリの1つとなっている。
フェラーリFXX
エンツォをベースとし、2005年にわずか29台しか製造されず、後述の599 XXと同じく希少なモデルとなっている。そのうち1台はミハエル・シューマッハのために特別に確保された。
599 XXとは異なり、エンツォに搭載されていたV12エンジンの排気量を6.0Lから6.3Lへと大型化。最高出力も660psから800psに向上し、変速100ミリ秒のF1にインスパイアされた6速トランスミッションが採用されている。
フェラーリ599 XX
新車価格は120万ポンド(約2億2000万円)からで、相当な富裕層でなければ購入できない。基本的にレースには出走できず、公道を走ることもなく、わずか29台しか製造されなかったため、実物を目にする機会はまずないだろう。しかし、一度出逢えば忘れがたい存在となる。チタン製のエグゾーストパイプからV12エンジンが発する騒音がその主な理由だ。
最高出力730ps、最大トルク70kg-m、レッドライン9000rpmまで迷わず回転し、0-100km/h加速を2.9秒以下で駆け抜け、最高速度は(ショートレシオギアによって制限されているが)315km/hに達する。
フェラーリFXX-Kエボ
ラ・フェラーリベースのFXX-Kに続くモデルで、エアロダイナミクスの強化により最高速度域で830kgのダウンフォースを発生する。200km/h走行時のダウンフォースはGT3マシンに近い640kgだ。
また、波紋をほとんど立てずに空気を切り裂くために、さまざまな仕掛けが施されている。リアにはアクティブ・リアスポイラーと連動する固定式ウイングが装着され、リア中央にはセンターウイング、リアコーナーにもウイングが備わっている。
フェラーリF430スパイダー
これまでにゴールドのホイールを履くグリーンのフェラーリを見たのは数えるほどしかない。
このF430スパイダーは、日焼けした内装、ブリティッシュ・レーシング・グリーンのボディ、宝飾品のような色のホイールのおかげで際立っていた。その性能的な実力については各々で判断してもらうとして、黒、グレー、赤を基調としたフィナーリ・モンディアーリで目を引くことは間違いない。
フェラーリ488 GTモディフィカータ
写真の車両はちょうどピットで休憩中で、ブレーキが加熱したためホイールを外している。488の3.9L V8ツインターボを搭載する488 GTモディフィカータは、「サーキット走行とフェラーリ・クラブ・コンペティツィオーネGTイベント専用」と説明されており、最近フェラーリのサーキットイベントに参加したドライバーにのみ提供された。
最高出力は668psから約700psに引き上げられ、カーボンファイバー製クラッチとトランスミッションのレシオを調整することで、さらなるパフォーマンスを引き出している。
フェラーリ812スーパーファストGTS
最高速度340km/hのフェラーリのグランドツアラー。写真の車両は趣味よくまとめられ、フィナーリ・モンディアーリの駐車場では吸い込まれるような魅力を放っていた。
低回転域でのおとなしさと行儀の良さ、そして9000rpm近いレッドラインに達するまでの4本のエグゾーストからのうなり声、咆哮、慟哭が印象的だ。
6.5L V12エンジンは最高出力800psを発揮し、0-100km/h加速を2.9秒で駆け抜ける。その加速を体感したいなら、オーナーは散髪にあまりお金をかけないほうがいいだろう。
フェラーリ812コンペティツィオーネ
812スーパーファスト・コンペティツィオーネは、マラネロのロードカーの中で最もパワフルな内燃エンジンを搭載しており、830psの6.5L V12エンジンが9500rpmのレッドラインに向かって絶叫しながら駆け上がっていく。
999台のハードトップモデルは、イタリアでは49万9000ユーロ(約8000万円)から、写真の599台の「アペルタ」は57万8000ユーロ(約9250万円)から販売された。
フェラーリ296 GTS
フェラーリで最も敬愛されるモデルの1つ、296のドロップトップ仕様。ティフォシ(愛好家の意)の間ではアズーロ・メタリッツァートと呼ばれるブルーのボディが際立っている。ブラックホイールで引き締めた27万8000ポンド(約5090万円)のフェラーリは、危険なほどに美しい。
296 GTSはまた、息をのむようなダイナミックな走りを見せてくれる、シャープで楽しいクルマである。そして何よりも、その軽やかな3.0L V6ツインターボの鼓動をこれまで以上にはっきりと聞かせてくれるのだ。
フェラーリ・プロサングエ
フェラーリ初のSUVであるプロサングエ(フェラーリは「SUV」と規定していない)には多くの仕様が用意されているが、特注カラーをまとった車両は希少に違いない。シートやブレーキキャリパーもボディワークに合わせて張り替えられている。
中身はスタンダードであり、言い換えれば、現在販売されている中で最もパワフルなSUVである。最高出力725psの6.5L V12エンジンを搭載し、0-100km/h加速をわずか3.3秒、0-200km/h加速を10.6秒で駆け抜ける。
フェラーリは「真のスポーツカー」のハンドリング特性を約束し、ほぼ完璧な重量配分、独立四輪操舵、6ウェイ・シャシーダイナミックセンサー、高度なブレーキシステムを備えている。
フェラーリ・ビジョン・グランツーリスモ
フェラーリは歴史に残る過去のレーシングカーを主に展示しているが、このヴィジョン・グランツーリスモではブランドの未来を表現している。
次世代のロードカーの姿を予感させる1人乗りのコンセプトカーで、バーチャル・レースの世界専用にデザインされ、296 GTBの3.0L V6ターボの強化版を搭載している。
コックピットの周囲と2つのサイドチャネル、ル・マン優勝レーサー499Pにインスパイアされたリアディフューザーと複葉ウイングなど、デザインにおけるエアロダイナミクスの影響は大きい。
フェラーリSF90 XX
フェラーリで最も過激なモデルの1つである最高出力1030psのSF90 XXは、フラッグシップであるSF90を発展させたもの。(XXの系譜にふさわしく)サーキットでのパフォーマンスを最大化することを目的に、F1にインスパイアされた技術を多数搭載している。
フェラーリのチーフ・テストドライバーであるラファエレ・デ・シモーネ氏は、パフォーマンスを劇的に向上させるだけでなく、「ドライバーがクルマを限界までプッシュする自信を与える」ようなクルマを開発したかったと語った。
最もレーシーなモードでは、停止状態からわずか2.3秒で100km/hに到達し、4.2秒後には200km/hに達する。
フェラーリKC23
超エクスクルーシブなハイパーカーの教科書のようなKC23は、価格にして1000万ユーロ(約16億円)ほどの特別な1台である。フェラーリによれば、「非常に想像力に富み、情熱的で厳格な顧客」のために製作されたという。
レーシングカーの488 GT3をベースとし、フェラーリが今後発表するモデルの「魅力の片鱗」を見せてくれるらしい。ラ・フェラーリのようなバタフライドア、薄型ヘッドライト、スリムな「ブレード」状のリアライトなどが主な特徴だ。
フェラーリ・モンツァSP1
ごく限られた富裕層のために作られたモンツァSP1は、彫刻的で空力に最適化された1人乗りのスピードスターだ。写真の車両は世界に1台のみの仕様で、価格は1000万ユーロ(約16億円)。KC23と同じ顧客が購入したと言われている。
812スーパーファストでおなじみの6.5L V12を搭載し、最高出力810ps、最大トルク73kg-mを発揮する。重量も比較的軽く、カーボンファイバー複合ボディのおかげで1500kgを実現している。参考までに、ポルシェ911 GT3 RSの車重は1525kgである。
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