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新カラーで目指すはもちろんクラス優勝。スバルWRX STI NBR2022仕様のシェイクダウンテストを実施

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新カラーで目指すはもちろんクラス優勝。スバルWRX STI NBR2022仕様のシェイクダウンテストを実施

スバルのモータースポーツ活動を取り仕切るスバルテクニカインターナショナル(STI)にとって、2021年は記念すべきシーズンになった。2009年に「レガシィB4 GT300」でスーパーGT・GT300クラスへの参戦をスタートしてから13年目にして、悲願のシリーズチャンピオンを獲得。
 

しかも栄光のマシンはBRZのフルモデルチェンジを機に新型にスイッチしたばかりの「SUBARU BRZ GT300」なのだから、関係者およびスバリストの喜びはひとしおだろう。
 
歓喜に沸くスーパーGTと並び、スバル/STIのモータースポーツ活動の顔ともいえるのが、2008年から参戦を続けているドイツのニュルブルクリンク24時間レース。「SUBARU STI NBR Challenge」と題し、市販車ベース(VAB型WRX STI)のレースカー「SUBARU WRX STI NBR Challenge」でSP3Tクラス(排気量2L以下のターボエンジン搭載車のクラス)に参戦。「究極の一般公道」と称される1周約25kmのコースを24時間走り続ける過酷なレースで、18、19年と2年連続でクラス優勝、20年はクラス3連覇が期待されたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて20、21年の参戦を見送った。
 
2年のブランクの間にベース車のWRXは2021年11月25日にVBH型にフルモデルチェンジ。国内ではコロナが落ち着きつつあるなかで「来年のニュルはどうなるのか?」と思っていた矢先の12月8日、2022年のニュル24時間レースへの参戦を表明。再度のクラス優勝を目指すべく、富士スピードウェイで2022年マシンのシェイクダウンテストが実施された。
 
ニュル24時間レースに参戦する目的を「スバル/STIファンのために安心と愉しさを提供すること」と語る、STI NBR Challengeの監督を務める沢田拓也氏。特に22年は「先行技術開発の確認」に力を注ぎながら、実戦を通して人材育成やファンコミュニケーションにも取り組み、レースに「勝つ」ことで、その確かさを実証するという。
 
参戦車両は引き続き実績豊富な先代VAB型ベースのSUBARU WRX STI NBR Challengeを使用し、「運転が上手くなる」「技術の信頼性を向上する」「量産技術の流用や活用」をテーマに車両開発を行った。
 
ラップタイムの目標は予選がSP3Tクラスベストの8分55秒でポールポジションを獲得し、決勝ではクラス優勝と総合18位以内、過去最高の周回数更新(146ラップ)を目指す。メカニックはピット作業を108秒(1分48秒)以内に終わらせることを目標に掲げた。
 
マシンの開発コンセプトは将来への布石となる「新たな領域への挑戦」。以下3つの目標(1:将来技術の投入 2:速さ、信頼性の向上 3:ピットタイム、ピット回数の差削減)を掲げ、これらを達成する具体策として
1「総幅11→12インチタイヤと新概念ホイール(10J→11J)」
2「新概念の車体剛性バランス」
3「新電動パワステの採用とチューニング」
4「9ラップの必達、10ラップへの挑戦」
を盛り込んだ。
 
1の「12インチタイヤと新概念ホイール」とは、SP3Tクラスのレギュレーションで総幅12インチタイヤの使用が認められていることに照らして、従来の260mmから280mmにタイヤ幅を拡げて開発を実施。
これに合わせてタイヤのコンパウンド比較や耐久ロング走行などを複数のサーキットで数多く重ねることで、ドライ/ウエットともに最適なコンパウンド構造を見出し、空気圧の適正数値を定めた。
 
さらに、車両開発の初期段階からホイール形状のチューニングを実施。操舵初期からコーナリングの限界域までタイヤの接地性を向上させるため、実走テストにおけるドライバーのコメントや走行データなどもフィードバックしながらタイヤとホイールの最適な組み合わせを採用。従来の総幅11インチタイヤに比べて旋回性や制動力が大幅に向上した。
 
2の「新概念の車体剛性バランス」は、SP3Tクラスのレギュレーションで総幅12インチタイヤを装着すると車両重量を1300kgにすることが義務付けられており、19年仕様のマシンと比べて80kg重くなる。そこで、ボディ剛性バランスの観点から運動性能の向上を狙い、新しい概念でボディの補剛を実施した。
 
その手法だが、はしごフレーム構造の考え方を応用して、フロントサイドフレーム、トルクボックス(サイドシルの前側とフロントサイドフレームをつなぐ部品)、サイドシルを補剛することで、ねじれ剛性を上げすぎずにフロントタイヤが動く力をリヤに遅れなく伝達させて、安定した車体姿勢を作り出すことに成功した。
 
同時に慣性モーメントの計測も実施。補剛した部分の大半が重心よりも下だったことも手伝い、従来のマシンに比べて約9mmの低重心化を実現。慣性モーメントの重量増加分の数値変化を可能な限り抑えられた。
テストを担当したドライバーからは「重量増加を感じさせないほど、車両のバランスがいい」とのコメントが得られたという。
 
3の「電動パワステの採用とチューニング」は、従来の油圧パワステは、悪路でのキックバックやポンプ駆動によるエンジン出力の損失、油圧経路における信頼性の懸念といった課題があった。そこで将来を見据えた先行開発として電動パワステの導入を決断。国内テストではキックバックの減少やスムーズな操舵フィールを確認済みで、路面の悪いニュルブルクリンクのコースではさらに大きな効果が得られるはずだ。
 
また、電動パワステは複数のマップを設定することが可能なので、ドライバーの好みや路面の状況に応じた細かいセッティングを施すことで、さらなる戦闘力向上が期待される。
 
4の「9ラップの必達と10ラップへの挑戦」は、先述のとおりレギュレーションの関係でタイヤ幅の拡大で車重が80kg増える半面、燃料タンクの容量は10L増えて110Lに。これを生かしてピットストップの回数を1スティント(1人のドライバーが担当する周回数)につき9ラップに設定することで、ピットストップの回数を減らす作戦。燃料タンク容量が増えて、理論上は全スティントで9ラップを取ることが可能だが、重量増やタイヤ幅の拡大など燃費を悪化させる要素も加わった。そこで、ニュル参戦を見送った2年間でエンジンや空力などの燃費向上技術を積み重ねて、国内テストは「全スティント9ラップ」の手応えが得られたという。
 
さらに、ニュルでは一般的なガソリンスタンドと同様に給油ガンで給油するのだが、エア抜けが悪いと何度もオートストップ機構が働いて満タンまでに時間がかかってしまう。そこで、燃料タンクを可視化してエア抜きの配管を改良。テストでは1回のオートストップで目標の給油量を実現し、ピット作業時間の短縮につなげる。
 
2022年仕様のレースカーは見た目こそVAB型のWRX STIだが、中身はタイヤ幅の拡大や電動パワステの採用など、フルモデルチェンジしたVBH型を思わせる仕様変更が随所に盛り込まれている。
「我々は常に新しいことにチャレンジするという取り組みのなかで、先行技術を22年仕様のマシンに投入しています。必ず勝って、みなさんと喜びを分かち合いたいと思います」
と抱負を語った辰巳英治総監督。気になるドライバーは来年初頭に発表予定とのこと。2022年5月26~29日に開催予定の第50回ニュルブルクリンク24時間レースで、完熟のVAB型WRXとEJ20型エンジンが有終の美を飾ることを期待したい。
 
〈文=湯目由明 写真=山内潤也〉

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