CLでクラシックカーについて記事を書くと、必ずと言っていいほど出てくるのが「自動車税のグリーン化特例」による、旧型車の重課税の話題です。
この「グリーン化税制」は2002年度に始まり、低燃費車や低排ガス車などのエコカーは自動車税を環境性能に応じて減税し、ガソリン車は車齢13年、ディーゼル車は11年経過した車両は環境負荷が高くなるという理由から、おおむね10%重課税、2014年度からは乗用車は15%増税となっています。
しかし、一方で使用者によって年間の走行距離が違い(排ガスの総量、エンジンの経年劣化の違い)、使用過程車の廃棄と新車の製造工程の環境負荷が考慮されていないためその効果を疑問視する声も当初から多くあります。
さらには世界一厳しい排ガス制度と車検制度がセットで運用され、公道走行している車両はほぼ全てコンディションも排ガス濃度も含めて行政の厳しい管理下にある日本で、保安基準を満たしている車両のユーザーにそこまで負担を強いる合理性があるのかという意見もあります。最近では自工会会長の豊田章男トヨタ自動車社長が、自動車の税負担が諸外国に比べて高すぎると訴えて話題になりましたが、そもそも何故日本の自動車税は高いのでしょうか?
複雑すぎる日本の自動車税制
おそらく、相当なカーマニアでも日本の自動車関連の税金の内容を正確に言える人は少ないのではないでしょうか?
・自動車に課税される税目
自動車税、軽自動車税、自動車取得税(ただし2019年に廃止予定)、自動車重量税、消費税
・燃料に課税される税目
揮発油税、地方揮発油税、軽油引取り税、石油ガス税、消費税
2018年10月現在9種類の税金が存在しています。また同じ「車両を保有する事」に課せられる税金でも、自動車税は都道府県、軽自動車は市町村、自動車重量税と消費税は国と管轄が違うのです。また一般財源と元は特定財源として創設された税金だった(詳細は後述)、消費税が課税された金額にかけられるため二重課税の問題があるなど、その徴収方法には非常に不透明で何が問題点か納税者にもわかりにくくなってしまっている部分があります。
日本では自動車を所有する事自体が贅沢?
すでに、第二次大戦前から自動車が普及していて、そもそも自動車が発明される前から馬車などが日常の移動の道具として使われていた欧州や、自動車が無ければ生活そのものが成り立たないアメリカと違い、長らく移動手段が徒歩で、乗り物で移動する事は特権階級にのみ許された行為であった日本では、自動車は贅沢品とみなされていたという側面が大きいでしょう。
国によって税額はまちまちですが欧州やアメリカで自動車は生活必需品とみなされ、また、税金は車検の有効期間分だけ納めるものであり、日本のように車検が切れていても所有しているだけで自動車税を徴収されるということはありません。クラシックカーを複数種有している愛好家の方で、ローテーションで車検を取っている方には理不尽に感じている方も多いと思います。また、自動車ではないですが道路に関しても道路は誰でも自由に使える公共財とみなされ、基本高速道路は無料もしくは低く設定されています。
一方、自動車が贅沢品とみなされている日本では、長らく排気量、車体サイズ一つでも5ナンバー枠と言われる小型自動車の規格を超え、3ナンバー枠と言われる普通乗用車になったとたん税額が禁止税のように高くなる時代が続いていました。90年代の規制緩和による自動車税の見直しで税額は排気量ごと区分になり新たに2.5Lの区分もできましたが、それまではたとえワイドボディの3ナンバーでも税額が跳ね上がったものです。そのため本国には廉価版の2L仕様があるのに日本では車体サイズの関係で税金が跳ね上がり日本に導入されなかったクルマもあります(W115型メルセデスベンツ200、フェラーリ208等)。
その一方で、昭和30年代、国民用の大衆車として注目を浴びた軽自動車(360cc)は元々、自動二輪車やオート三輪からの派生であり、1950年年代までの日本ではむしろ自動二輪車は趣味用というより実用用途がメインでした。そのため税金も自動二輪車準拠の金額で非常に安く、また1973年までは車検も免除されていました。
現在軽自動車税が乗用車10800円、商用車5000円で、また軽自動車は会計上では資産とはみなされず、「国交省に登録」ではなく、「軽自動車検査協会に届け出」となっています。ボディサイズ、排気量、定員、積載量に上限のある軽自動車は今もなお日本では贅沢品ではないというわけです。日本の自動車税はアメリカ、欧州と比較すると14倍~2.5倍といいますが、世界基準準拠で見ると、日本の自動車税は軽自動車くらいの税額が妥当ではないかという豊田章男自工会会長の主張はこのあたりに根拠があるのかもしれません。
欧州では「道路」は公共財
よく、日本には「車輪の付いた乗り物の文化が無い」というクルマ好きの嘆きを聞くことがあります。「すべての道はローマに通ず」「シルクロード(絹の道)」という言葉があるように、古くから西洋では交易が盛んで、必然的に車輪の付いた乗り物で移動する事が生活や文化に根付き、あらゆる国と貿易をすることで新たな技術や文化を会得し、技能をもった人の国家間の移動も盛んでした。ミステリーが好きな人にはお馴染みの「フリーメイソン」も、元々は国をまたいで仕事をする石工職人の身分と安全を保証し技術伝承と移動を円滑にするための組合(ギルド)から始まった物と言われています。
当然、物と人の移動が盛んになれば道路が必要になります。古代ローマ帝国ではアッピア街道、サラリア街道(塩の街道)等さまざまな街道が整備され、交易だけでなく、軍隊の移動に利用されローマ帝国は領土を拡大していきます。このローマ街道こそCL読者にはご存知「石畳で舗装された道路」で、ローマ時代にはすでに馬車が対面通行できるように幅4mの車道と両脇に幅3mの歩道が別に作られていたといいます。ちなみに当時のローマ街道を走っていた馬車のトレッドはそのまま馬車の標準規格となり20世紀に入ってからも、そのまま自動車のトレッドの標準規格に引き継がれ、日本の5ナンバー規格のトレッド幅ともほぼ一致します。
また、道路やトンネル、橋を整備する際にその土地の領主や名士が建設費用を寄付するとそのまま街道や橋に寄付した人物の名が付けられ、そういう形で地図や歴史に家名が残るというのは一族の名誉になったことでしょう。ローマ時代のに整備された街道は今も一部残っており中には、当時の石畳のまま残っている場所もあり、ローマ時代に馬車が行き交っていた石畳の道を現在もなお自動車が通行しているケースもあると聞きます。
日本では高速道路や自動車専用道路などは通行料金を徴収されることが多いですが、欧州では「道路」は公共財で、無償で利用できる事が基本であり、国によっては高速道路が補修費用のために有償で、日本と同様ETCシステムを導入している国も存在しますが、それでも定額制だったり、従量制でも距離当たりの金額が日本の半分以下と聞いています。
国家が通行料で道路の整備費用を調達するよりも、道路や自動車を生活や生産活動の必需品とみなし、道路を無料もしくは低料金で開放し、自動車の税金を安く抑えることで、物流コストが下がり、多くの人が自動車を所有、移動し、経済活動や文化交流が活発になれば結果として税収が上がり、その分道路の整備費用の財源も確保しやすくなるというわけです。
しかし、日本では近代になるまで道路の整備が遅れ、また自動車というより乗り物そのものが特権階級の贅沢品だった事もあり、長らく道路整備の財源確保のために、高速道路の有料制や自動車に高額な税率を設定する必要がありました。次回は日本の道路行政と高額な税負担について書こうと思います。
[ライター/鈴木 修一郎 画像/CL編集部]
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