運営元:旧車王
著者 :小村英樹
日本アルミ弁当箱協会会長の「ちょっと斜めから見た旧車たち」Vol.4
新生Z32専門店は、しだいに旧車屋へ!
[前回までのあらずじ]
今から25年前の1997年、平成9年に中古車販売店の営業の仕事をスタートした筆者。
雇われ店長で、70スープラ専門店からZ32専門店へ転換。
紆余曲折を経て、有名店にまで昇りつめたものの、燃え尽き症候群に陥る。
ノルマや数字に追われる仕事からも逃れたいと思っていたところ、まさかの会社消失。
10年間走り続けてきた道がいきなりなくなった。
今までのお客様のためにも独立しかないと決意し、新たな道を作るべく「新生Z32専門店」を立ち上げることに。
たくさんの方に応援、ご協力いただいたご恩は一生忘れないだろう。
ついて来てくれたスタッフにも感謝です。
■前の会社の延長でいけるはずもなく、前途多難のスタートに前の会社が消失してから間を開けてはダメだと思い、急遽土地を借りて、1ヶ月後の2007年1月に新店舗をスタートさせました。
ショップ名は、「Zが一番!」という思いを込めて「Zone」(ゼットワン)にしました。
何とかお店らしい雰囲気になり、順調なスタートが切れるはずが・・・。
前の会社が負債を残して辞めてしまったので、そこにいた私は周りからそっぽを向かれ、四面楚歌状態に陥ったのです。
誰からも取引きしてもらえず、ローンも取り扱えない、部品の仕入れもできない、オリジナルパーツも作れない・・・。
いきなり大きな壁にぶち当たりましたが、悩んでいる時間はありません。
お取引きしていただきたい会社に、土下座して回りました。
輪をかけて、この頃からスポーツカーの人気に陰りが出はじめてきたので、先行きが不安な前途多難なスタートとなったのです。
もちろんZ32一車種ではやっていけるわけがなく、Z33も扱っていましたし、それ以降のフェアレディZも扱う予定でした。
その証拠が、当時の看板です。「FAIRLADY Z PRO SHOP」 と、Z32だけに拘っていません。
■お店のスタイルを変化させるのが怖かった当時、筆者は前のお店のスタイルを引き継いではじめるのがベストだと思っていました。
中古車販売ありきで、車検やメンテナンスは安く。
デモカーは前の会社の社長に退職金替わりにいただいたので、この点はラッキーでした。
今までのお客様に安心感を与えるため、前のお店と変わらない雰囲気を作ることが大事だと思い込んでいたのです。
ところが「新生Z32専門店」と謳ったものの、何の進化もなく、新鮮味もなく、惰性ではじめたような旧態依然としたお店です。
新たなお客様から見たとき、まったく魅力はなかったでしょう。
しかも、スポーツカーはますます人気が落ちて、売却の相談に溢れました。
整備は、タイミングベルト交換以外、お金をかけてメンテナンスする方も少なったかなと思います。
その結果、クルマの程度もみるみる落ちていったのです。
『Z32の価値を上げるのが専門店の役目ではないか!』
このままで良いわけはない!
頭では理解していても、お店のスタイルを変えることに恐怖を覚えました。
■このままではZ32がなくなる。自分が何とかしなければ!そうこうしているうちに「純正部品の製廃」が出てきました。
メーカーが古いクルマの部品をなくしてきたのです。
このとき、Z32が旧車になってきたことを実感しました。
新車エコカー補助金で下取りに入れたクルマは廃車され、海外にも流されはじめます。
「このままでは、Z32が国内からなくなってしまう・・・」という危機感を覚えました。
すぐにでも何とかしなければ!!
「Z32を国内で遺すために必要なことは、オーナー様に大事に乗ってもらうことだ!」
こうして文字にすると簡単に映りますが、実際には奥が深いです。
そこで、下記の取り組みをはじめたのです。
・Z33~をやめてZ32に全集中、一球入魂です。私たちの気持ちがぶれないようにする
・クルマを良くするために、オーナー様のやりたいことに合わせた仕事ではなく、私たちがやりたい仕事をする
・クルマを短命するチューニングや改造は行わない
・内外装の見直しよりも、機関系の見直しを優先して勧める
・まだ旧車だと思っていないオーナー様の意識改革を行う
・故障してからの修理ではなく、部品があるうちに予防整備を勧める
・純正部品をメーカーにオーダーし続け、製廃阻止活動を励行する
・機能単位のリフレッシュメニューを勧めて、安心して長く乗っていけるクルマを増やす
・大事に乗っていただける方を見極めてクルマを販売する。販売条件は、遠くても当店でメンテナンスしていただくこと上記を全スタッフが志を一つにして全力で取り組むことで、仕事への取り組みや、やり方が変わってきました
■Z32を後世に遺すために、旧車屋さんに変身!約10年前から少しずつお店のスタイルが変わってきました。
私たちのポリシーやスタンスに賛同してくださる方が増えて、全国から車輛のご購入、リフレッシュやレストアのご相談をいただくようになりました。
Z32を大事に長く乗りたい方が、潜在的にたくさんいらっしゃったのです。
すぐに整備環境を拡充し、できる限りことを自社で対応できるようにしました。
部品庫に部品をストックしたり、ないものを作ったり、綺麗に仕上がる方法を考えたりと。
外注先も意思疎通できる一流のプロフェッショナルに変えていきました。
こうして、やっと理想の専門店になったわけですが、行きついた先は「旧車屋」でした。
継続は力なりです。
普通の中古車屋さんが、いつの間にか旧車屋さんになったケースは多いと思いますが、私たちもその一社といえます。
その後、雑誌の取材を受けたり、旧車イベントにも出展するようになり、しだいに「旧車屋」が定着してきました。
今は、名車Z32を後世に遺すことが私共の使命と思い、人生をかけて取り組んでおります。
いつまでやっていけるかを考えず「行きつくところまで進んでいく」覚悟で日々、業務に邁進しています。
(これまでのエピソード)
お調子者営業マンだった私が、Z32専門店を立ち上げるまで
https://www.qsha-oh.com/historia/article/z32-omura-vol1/
お調子者営業マンだった私が、Z32専門店を立ち上げるまで[エピソード2]
https://www.qsha-oh.com/historia/article/z32-omura-vol2/
[ライター・撮影/小村英樹(Zone代表)]
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