英国でも貴重な存在の自然吸気V8エンジン
text:Tom Morgan(トム・モーガン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
レクサスのエンブレムを掲げる中で、最もエキサイティングなモデルといえば、LC500だろう。現在では珍しい、自然吸気のV8エンジンを搭載する。英国では、NAのV8を選べるモデルとして、わずか2モデルの中の1つだ。
自然吸気のV型10気筒エンジンを搭載した、LFAという存在もあった。生産が終了したのは2012年だから、だいぶ時間が経ってしまった。
今回試乗するのは、LC500の限定仕様となるリミテッド・エディション。専用色となるダークグリーンのボディカラーに、ツートーンで仕上げられた21インチのアルミホイールを装備。通常のLC500以上に、視線が奪われるスタイリングにまとめられている。
インテリアは、レザーとアルカンターラを全面的に使用。フラッグシップ・クーペとして、ラグジュアリーさも増している。
シャシーとパワートレインは、基本的に標準のLC500から変更はない。滑らかに呼吸する5.0LのV8エンジンを搭載し、トルクコンバーター・タイプの10速ATを介して後輪を駆動。最高出力は473psを発揮する。
サスペンションは、スチール製スプリングに、アダプティブ・ダンパーの組み合わせだ。
優雅でもあり、スポーティでもあるLC500。本格的なスポーツカーと、ラグジュアリーなグランドツアラーの境界をまたぐ。4シーターとして、ポルシェ911やBMW M850iなどと競合する位置にある。
魅惑的なエンジンサウンドを楽しめる
LCは、ダイナミックなコンセプトカーのスタイリングと、オールドスクールなエンジニアリングとが融合している。シャープなヘッドライトと大きなフロントグリルの後ろには、大排気量のV8エンジンが収まり、テールライトはミラーで反射され、無限に奥へと続く。
インテリアも、新旧が織り交ぜられた独特の空間。モニター式のメーターパネルは、LFA譲りのもの。カラーのヘッドアップディスプレイは未来的だが、物理的なボタンやスイッチもふんだんに残されている。
ライバルモデルのように大きなモニターが備わるが、システムの仕上がりは今ひとつ。レクサスで共通する特徴でもある。タッチパッドのコントローラーは反応が過敏で、インフォテインメント・システムも洗練度はいまいち。走行中の操作は難しい組み合わせだ。
英国の一般道を走らせてみる。最後の自然吸気のV8エンジンという味わいが、強く気持ちを支配する。
最大トルクは回転数がある程度高まらないと得られないし、最高出力もレッドゾーン手前の7100rpmで発生する。そのため、加速力は圧倒されるほど鋭いわけではない。
しかし、悪くはない。免許証が存亡の危機に陥る速度域へ到達する前に、魅惑的なエンジンサウンドを存分に楽しむことができるのだから。
段数の多い10速ATは、トランスミッション任せだと、上のレシオで選択に迷う場面がある。7速くらいのATだと考えて、シフトパドルでドライバー自ら変速するのが良い。あるいは、スポーツ+モードを選ぶ手もある。上段側のレシオは選ばない設定に変わる。
機敏でバランスの取れたスポーツカー
10速ATのメリットとしては、高速クルージング時の燃費を10.6km/L程度にまで高められることがある。変速自体は、シフトアップもシフトダウンも充分にクイック。ただし、電光石火のポルシェ製PDKほど鋭いわけでもない。
このトランスミッションは、レクサスが2021年のモデルイヤーに向けてアップデートを目指している部分。レシオや変速タイミングが改められ、日常の走りやすさを改善する予定だという。
21インチホイールとランフラット・タイヤという組み合わせは、ラグジュアリーなグランドツアラーへ期待する以上に硬い乗り心地と、にぎやかなロードノイズを生んでしまう。サスペンションは落ち着きがなく、荒れた路面では処理に苦労している様子。
コンフォート・モードを選んでいれば、乗り心地は少し改善される。それでも、長距離走行を得意とする、グランドツアラーのベスト・モデルに並ぶことは難しい。
ドライバーの気持ちが高まるような、カーブの連続する道へ進むと、LC500の優れたハンドリングが顕になる。とても機敏で、バランスの取れたスポーツカーだ。
低回転域でのトルクは控えめだから、リアタイヤがスライドしはじめる場面は限定的。スポーツ+モードを選び、パワーを掛けていくと、旋回姿勢の自由度が増す。可変レシオのステアリングと四輪操舵システムを備えるものの、操縦性に悪影響を及ぼすことはないのがイイ。
躍動的なボディにカリスマ的なV8エンジン
車重は1900kgを超え軽いとはいえないが、LC500は流れるように高速コーナーを抜けていく。ミドシップのライバルモデルに負けないほど、ダイナミックな走りだと思う。
英国でも、自然吸気のV8エンジンモデルはとても貴重。パワートレインの構成は、LC500を選択する理由の1つとして重要な要素にある。来年、ミドシップ化された最新のC8型シボレー・コルベットが英国にも上陸すれば、LC500の見られ方に変化があるかもしれない。
動的な性能でいえば、真のスポーツカーとグランドツアラーの中間にあり、悪くいえば中途半端。日常的な乗りやすさは、気筒数の少ないターボエンジンを搭載したモデルの方が、秀でてはいる。
しかし、いずれもLC500の絶妙な成り立ちを霞ませることはない。コンセプトカー譲りの躍動的なスタイリングと、カリスマ的なV型8気筒エンジンのサウンドが融合するレクサスLC500。ほかにはない、強い訴求力を放っている。
レクサスLC 500リミテッド・エディション(英国仕様)のスペック
価格:9万385ポンド(1193万円)
全長:4770mm
全幅:1920mm
全高:1345mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.7秒
燃費:8.6km/L
CO2排出量:262g/km
乾燥重量:1935kg
パワートレイン:V型8気筒4969cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:473ps/7100rpm
最大トルク:53.6kg-m/4800rpm
ギアボックス:10速オートマティック
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みんなのコメント
個人的にはそれなりの加速力があれば十分って考えで、それよりもいかに楽しめるか、、と思う
内装含めどうもヤンキー臭さが漂ってしまうのは、かなりもったいないと思う。