2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』放送開始に合わせて、家康にゆかりのある地では地元を盛り上げようとする動きが見られます。そんな史跡を機動力に優れたスーパーカブで巡り、戦国時代に思いを馳せのも面白いものです。今回は1575年の「長篠・設楽原(ながしの・したらがはら)の戦い」で激戦地とされる、愛知県新城市の設楽原を訪れました。
「長篠・設楽原の戦い」は、三河国長篠(現・愛知県新城市長篠)の「長篠城」を巡る、武田勝頼(たけだかつより)と徳川家康の争いをきっかけとした戦です。先の「三方ヶ原の戦い」(1572年)で勝利した武田軍は、三河の家康の所領を獲得して領土を広げていましたが、1573年に武田信玄が病死。その後、家康の反撃が始まります。
家康は武田が自分の国へ引き返した時期を見計らい、武田方に転じていた「亀山城」の奥平貞能(おくだいらさだよし)とその息子、信昌(のぶまさ)を調略して味方につけました。その信昌が「長篠城」の城主となります。
勝頼は「長篠城」を奪回すべく、1575年に1万5000人以上とも言われる大軍で城を包囲しました。わずか500人ほどの城兵しかいない「長篠城」は大ピンチです。
信昌は家康の援軍が来るまで苦しい籠城を続けました。家康も信長の援軍が必要な立場のため、同年5月10日に救援を要請し、信長の早い行動で18日にはこの設楽原に布陣を構えます。これで家康・信長の連合軍は4万。この時の両軍が対峙した戦地を象徴するのが、連吾川沿いに築かれた長い「馬防柵」でした。
いくつかの文献で、勝頼の敗北の理由を読むことができます。よく言われているのが、勝頼は武田信玄の側室の子供で、信玄の重臣から認められていなかったというもの。しかし勝頼には戦の才があり、実際、信玄の時代よりも領土を拡大させており、相当な自信もあったのかもしれません。
そこへ織田信長と徳川家康が目の前に出てきているのです。この機を逃したくはないと、戦に反対する重臣が多い中、勝頼は決戦に臨みました。家康・信長の布陣を甘く見ていたのかもしれません。
そしてこの設楽原の三重の柵が、家康に勝利をもたらしました。じつは3列に構えた鉄砲隊が入れ替わり打ち続けたというのは史実ではない、とも言われていますが、いずれにしても膨大な火力と戦力、信長と家康という2人の武将の知能の前に、勝頼は破れることになります。
武田の騎馬隊は柵の二重目まで突破したとも言われており、三重の構えを敷いていたことも勝利の要因だと言えます。現地に設置された解説板には、さらにこの背後にも一重の柵を設け、万が一に備えていたと記されていました。まさに万全の体制です。
この戦は勝者の織田と徳川を勢いづかせ、敗者の武田はその後、滅亡への道を歩み始める重要なターニングポイントだったのです。
ちなみに、NHK出版から発行されている「どうする家康ハンドブック」には、日本固有の小型の臆病な馬が柵に体当たりすることができるのか? 農業を兼任していた当時の武士が騎馬の訓練を受けていたのか? 当時は馬を降りて戦うのがセオリーだった、とも記されています。
武田の騎馬隊は本当に柵へ向かって突進したのでしょうか? これらの歴史は、今後も研究が続けられることでしょう。
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