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三歩進んで二歩下がる…? なぜ普及進まないサイドミラーのデジタル化と進化の足跡

掲載 更新 32
三歩進んで二歩下がる…? なぜ普及進まないサイドミラーのデジタル化と進化の足跡

 フェンダーミラーからドアミラー・ウィンカーミラーへ進化し、近年では、カメラとディスプレイを用いて後側方の状況を確認するデジタル(電子)サイドミラーが登場するなど、技術やクルマの進化とともに日々進化する、クルマのサイドミラー。

 デジタルサイドミラーは、2018年にレクサスESで初めて実用化され、電気自動車のアウデイ「e-tron」やホンダ「ホンダe」でも採用されていますが、現時点あまり普及は進んでいません。サイドミラーの歴史を振り返りながら、最新のデジタルサイドミラーの将来性について考察します。

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文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真: TOYOTA、NISSAN、HONDA、写真AC

ドアミラー規制撤廃によってフェンダーミラーが消滅

 クルマの後側方を確認するサイドミラーとしては、現在はほとんどのクルマがドアミラーを採用していますが、1980年以前の日本のクルマでは、「フェンダーミラー」が採用されていました。当時米国や欧州では、デザイン性に優れたドアミラーがすでに採用されていましたが、日本では1983年にドアミラー規制が撤廃されるまでは、ドアミラーは法的に採用できなかったのです。

 日本政府が長くドアミラーを認めなかった理由は、フェンダーミラーの方が視認性に優れ、安全と考えていたから。ドライバーから離れた位置にあるフェンダーミラーは、ドライバーの目線移動が少ないため疲れにくい、後方視野が広く死角が少ない、またドアミラーより車幅を抑えられるといったメリットを重視していたのです。

 とはいうものの、すでにドアミラーが一般化していたクルマを日本へ輸出したい欧米メーカーからの不満は大きく、国内でもデザイン性に欠けるフェンダーミラーでは国際競争力が低下するとの声も上がっていたことから、1983年3月、ドアミラー規制は撤廃されました。

1983年以前のクルマは、フェンダーにミラーが固定されているフェンダーミラーを装備(PHOTO:写真AC_AQOS_ぽん太)

進化するドアミラー

 ドアミラーの最大のメリットは、デザイン性に優れ、対人事故の際の安全性が高いこと。このドアミラーを日本で最初に採用したのは、解禁の2か月後の1983年5月にマイナーチェンジした日産パルサーエクサでした。以降、ドアミラーは急速に普及、ドアミラーに一気に置き換わることになります。ただし、タクシーなど一部のクルマでは、前述のメリットを優先して、今でもフェンダーミラーを採用しています。

 1984年には、ミラーを電動で格納できる電動格納式ドアミラーが登場。日産の5代目ローレルで初めて採用されると、瞬く間に世界中に普及していきました。

 さらに1998年には、メルセデスベンツSクラス(W220型)が、世界で初めてウィンカー内蔵式のウィンカードアミラーを採用。ウィンカーミラーは、方向指示の視認性が高まるほか、見た目がスマートで高級感が増すという効果があります。国産車で初めて採用したのは、2001年にデビューした日産の4代目シーマ。以降普及が進み、今では軽自動車にも採用されています。

 近年では、広い範囲が見れるような凹面鏡やワイドビューミラー、雨でも見やすい親水ミラーやヒーターを埋め込んだミラーデフォッガーなども登場しています。

1984年、日本で初めて電動格納式ドアミラーを採用した日産の5代目「ローレル」。高級車から採用が始まり、現在軽自動車でも装備されている

デジタルサイドミラーの普及には、まだ時間が必要

 2016年の道路運送車両の保安基準が改定によって、日本でも解禁となったデジタルサイドミラー。冒頭でふれたように、最初に採用したのは、2018年10月に登場した7代目レクサスES。量産車では世界初でした。その後、電気自動車のアウデイ「e-tron」や、ホンダ「ホンダe」でも採用されました。

 デジタルサイドミラーの機構は、バックモニターやデジタルルームミラーと同じ。広角CMOSカメラによって後側方を撮影し、ECUで映像を画像処理して室内のモニターに映し出します。大きなドアミラーを小さなカメラに代えることによって、空気抵抗が改善し、デザインの自由度も向上するほか、次のようなメリットもあります。

・ドアミラーより、視野範囲が2倍程度拡大、画像が明るいので夜間の視認性も向上
・カメラユニットがコンパクトになるため、死角と風切り音が低減
・モニターが室内にあるので、左右の目線の移動量が小さい
・水滴が付着しにくい構造で、またヒーターが装備されているので雨などの気候変動に強い
・高速走行時や左折・右折時、後退時など運転条件に連動して、視野範囲やズーム機能など自動制御が可能

 一方で、システムコストが現行ドアミラーの約10倍と高いことからまだ普及に至るレベルではなく、他にも次のような課題もあります。

・小さな部分まで鮮明に映るため、通常の光学ミラーに比べて距離感やスピード感が把握しづらい
・条件によっては、LEDフリッカーと呼ばれる映像のちらつきが発生
・モニターを設置する場所の確保。レクサスESは、Aピラー下部に設置したため、後付け感が強く不評

 基本的には優れた映像機能を持つデジタルサイドミラーですが、コストパーフォーマンスの観点からはまだ不十分、高級車では使えても、一般的に普及するにはもう少し時間がかかりそうです。

2018年、世界で初めてデジタルサイドミラーを採用した「レクサスES」。モニター画面のちらつきやモニター位置について、一部に不評の声があった

運転支援や自動運転との連携次第では、急速に普及も

 デジタルサイドミラーは、優れた映像機能の他、クルマの後側方の情報をデジタル化できることが大きなメリット。高度な運転支援技術や自動運転のための有効な環境センサーとして活用することができます。例えば、周辺車両や歩行者、白線の検知による衝突回避機能や車線維持機能との連携したり、360°サラウンドビューカメラと組み合わせることで、自動運転に必要な周辺状況の認識にも使えます。

 しかし、運転支援や自動運転にとって、デジタルサイドミラーが必須デバイスであるかどうかは不透明。現行の自動運転レベル2クラスでは、複数のカメラやレーダーが搭載されており、デジタルサイドミラーの代用は可能なので、不要となる恐れがあります。

 また、最近日産などが採用しているスマート・ルームミラーでは、リアガラス内部にカメラを装着して、ルームミラーにその映像を映し出します。後席の乗員や荷物に遮られることなく、画像とそのデジタル情報が得られるので、視覚範囲と精度が十分であれば、デジタルサイドミラーの代用が可能となってしまいます。

 このように、デジタルサイドミラーが将来的に生き残れるかは不透明ですが、普及のためには、まずは低コスト化が最優先課題でしょう。

2020年にデビューした電気自動車「ホンダe」。画像モニターは、レクサスESよりも違和感なく、インパネにうまく収めている

◆     ◆     ◆

 運転支援や自動運転の開発によって、カメラやレーダーなどのセンシング技術が急速に進化しています。場合によっては、デジタルサイドミラーを含めたサイドミラーそのものが、クルマには不要となることも考えられます。便利さを追求して、少しずつクルマの形態が変わっていくことには、寂しさも感じますが、この先どうクルマが変わっていくのかも楽しみ。さらなる技術の進化を期待しています。

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みんなのコメント

32件
  • トヨタレクサスのは外のカメラは出っ張りすぎだし
    内装のモニターも素人DIYレベルじゃん
    供給品をポン付けしましたって仕上がりで完成度低い
  • 外観、内装を大きく変えるような新技術は一発目で失敗すると致命的。
    失敗を恐れて従来型と新型どっちも付くようにしたのが最大の失敗でしょうね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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