三菱自動車は12月4日、クロスオーバーSUVの新型「エクリプスクロス」の発表会と、自動車メディアを対象としたラウンドテーブルインタビューをオンラインで行った。
ラウンドテーブルインタビューに出席した加藤 隆雄CEO (写真右)、長岡 宏Co-COO兼 開発担当(写真左)
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出席したのは、2020年8月に就任した加藤 隆雄CEO 、そして長岡 宏Co-COO兼 開発担当という三菱自動車のトップのふたりで、そのインタビューの中では三菱自動車が持つPHEV技術を活かした電動化戦略についてさまざまなことが語られた。
三菱自動車が考えている、注目の次代の電動化戦略について迫っていく。
文/ベストカーWeb編集部
写真/編集部、MITUBISHI
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■電動化の主役はPHEV&EVに
2020年12月3日に、「政府が、2030年半ばに純ガソリン車の新車販売が禁止とする方針を、年内の公表に向けて最終調整に入った」という報道が大手メディアが報じた。
世界的に環境規制が厳しくなり、電動化が必要になる今後において、三菱自動車の中期経営計画のなかでも次世代PHEVを開発することが明言されている。またエクリプスクロスPHEVの発表会で、2030年までに電動車を50%とすると目標を語られている。
三菱自動車として、今後のPHEV戦略をどのように考えているのだろうか?
長岡Co-COO「現在はPHEVシステムはエクリプスクロスとアウトランダーに搭載しています。このPHEVシステムは、次のアウトランダーに向けて大きく刷新することを計画しています。次期型アウトランダーでは、新たな進化したPHEVシステムの姿を見せることができる思います」
2022年の登場が予想されている次期型アウトランダー(画像はベストカーによる予想CG)。このモデルには、さらに進化したPHEVシステムが搭載されることになる
「そのシステムをどのように使って広げていくかというと、中期経営計画でも語られていますが、PHEV技術を活用しHV化も検討しています。HV化をすることでコンポーネント化し、より安い価格でお客様に提供が可能になると考える。こちらをアセアンに投入することを考えています」
「世の中のカーボンニュートラルの動きのなかで、2030年代を越えていくと、EVやPHEVのふたつを軸に、環境にやさしいクルマを増やしていくことが必要になると考えています」
そうなると今後の電動化の中心はピュアEVになるのか? それともPHEVとなるのか? 三菱としてはどのように考えているのだろうか。
長岡Co-COO「ゼロエミッションであるピュアEVが大きな方向性であることは間違いありません。一方で、ライフサイクルアセスメントで製造時にかかるエネルギー、または電気ということを考えると、エネルギーを化石燃料で作っている国においては、EVはCO2を最も減らす技術ではないという議論もあります」
「またバイオフューエルなどのようなものを考えると、そういったものを組み合わせたPHEVはピュアEVと同じように、今後それ以上の価値を持ったシステムになることを考えています。PHEVだけでなく、ピュアEVも視野に入れて、環境対応のために開発を進めていきたいと考えています」
初期受注の8割がPHEVモデルという「新型エクリプスクロス」。魅力あるパワートレーンだが、そのさらなる展開はどうなるのか!?
PHEVシステムは、現状アウトランダーとエクリプスクロスというミドルクラス以上に搭載されているが、小型化し、小型車などに展開することがあるのか気になるところだろう。
その点については、「小型車のPHEVの可能性については、PHEVというよりは、PHEVシステムをベースとしたHV化が導入されると思います。ただ将来的には、PHEV化も可能ですし、さらに将来必要であればそれをベースにピュアEV化もできることになる。なので、小型車はまずはEV化から入っていくのが妥当だと考えています」と展望を語っていた。
■国内市場ではディーゼルからPHEVにシフトが本格化
新型エクリプスクロスの発表で注目された点がある。それは2019年に投入したクリーンディーゼルモデルの廃止だ。そのまま行けば、ガソリン、ディーゼル、PHEVという3つのパワートレーンを揃えることができたはずだが、なぜディーゼルモデルは廃止になったのか!? その答えもわかった。
長岡Co-COO「ディーゼルに関しては正直悩みました。もともと環境対応でクリーンディーゼルを登場させましたが、環境へのやさしさという部分を考えるとクリーンディーゼルとPHEVは重なる部分があった。また、ディーゼルの魅力はトルクでしたが、PHEVもしっかりとトルクを出すことができているので、同じような商品を2つ持つよりは、販売をしっかりできることを重要視したためクリーンディーゼルモデルは廃止するという決定に至りました」
2019年6月に登場した従来型エクリプスクロスのクリーンディーゼルモデル。デリカD:5に積まれているのと同じ直4、2.2L DOHCディーゼルターボ(145ps/38.7kgm)を搭載していた
「クリーンディーゼルは今後、乗用車用にディーゼルエンジンを開発するというよりは、PHEVに置き換えていくことになります。一方でアセアンもしくはオセアニアで、フレームベースのトラックなどのSUVを製造していますが、そういったモデルは根強くディーゼルの要求があるため、新しいエンジンを起してでもしっかり対応していきたいと考えています」
「ただ、そういった国でも燃費規制などが厳しくなっていった場合、電動化の必要性ですが、予想としては2025年以降にはそういった雰囲気になっていくと考えています。そうした場合、ディーゼルにモーターを付けて電動化するのか、保有しているPHEVシステムをフレーム車用に改良することで対応することも考えています」
と、クリーンディーゼルエンジンの今後について明かされた。
今後国内市場においては、クリーンディーゼルを搭載した新モデルが登場することはなさそうだ。
■EVはアライアンスで共同開発! バッテリー問題は課題あり
加藤CEOによると、EVに関してはいまだにバッテリーというものが高額で、全世界の自動車会社のなかで本当に利益が出ている会社というのはほとんどないという。テスラが利益が多少出ているかな……という状態で、そういう意味では、大きな利益の望めないEV開発を単独でやることは現実的ではないと考えているそうだ。
2021年に発表が予想される日産と共同開発している軽EV(画像はベストカーによる予想CG)。最新技術てんこ盛りの一台となりそうだ
そのため日産と共同開発して軽EVを今度投入するのだが、当面は日産もしくはアライアンスを活用して開発していくことのほうが現実的であるとしている。
またEVにおいて欠かすことのできない重要な部品である電池については、思った以上に難しい課題を抱えていることを長岡Co-COOが明かした。
「バッテリーの進化についてはリチウムイオン電池から全個体電池に移っていくことで、安全性やコストが大きく下がりEVが普及していくだろうというのが数年前の見立てでした」
「その時に言われていたのが、2020年過ぎくらいには全個体電池が実用化されて、kWhあたり100ドルを切って一気に加速するだろうということです。ところが、自動車を動かすことのできる全個体電池の開発は計画通りには進んでいないのが現実です。今後5年では足りないのでは? と三菱自動車では見ています。2030年頃まで行けば、一部で全個体電池が実用化されるとは思います……」
そのためリチウムイオン電池を高性能化する研究もされているが、もともと中国でやっていたリン酸鉄を使用した電池についても回帰する動きがあるという。パワーは足りないが、安全性が高いので、そういう電池で全個体電池が実用化されるまでしのごうという動きがあるそうだ。
長岡Co-COO「ライフサイクルバランスのことを考えると、発電や電池を作ったり、クルマを作ったりするときに発生する二酸化炭素の量を考慮した場合、化石燃料で発電している国ではPHEVのほうがEVよりもはるかには出量が少なくなる。そうことによって、三菱としてはPHEVは重要な技術であると認識し、より高めていくことを考えています」
■販売店からも要望の強い ラインナップの拡充を実施
三菱自動車のSUVラインナップには、「RVR」「エクリプスクロス」「アウトランダー」があるが、車格としては違うものの、同じような毛色のクルマが3つあって、それ以外の売りやすいクルマがない。
就任後、各地のディーラーに話を聞きに回った加藤CEOは、近いモデルが多く売り方に困るとディーラーに苦言を呈されたという。そのため車種の拡充を計画しているという。
「SUVタイプ以外のボディタイプもこれから開発していくのかと言えばそうではありません。SUVを中心にそのラインナップを充実させることがメインに考えています。なので、セダンタイプを追加するということは正直計画はありません」
さまざまなタイプのSUVを拡充すること以外にも、販売好調の「デリカD:5」、日産と協業している軽自動車に関しても、三菱らしいことができないかいろいろ検討しているという。
リコール隠しや燃費不正問題といった問題があった三菱自動車ではあるが、それらを真摯に反省し、次代に向けて新たな戦略を進めているようだ。
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技術やコンセプトは他社に真似できない所を持っているので、今後の三菱に期待してます。