SUV人気全盛の時代とはいっても、根強い人気で売れ続けているミニバン。最近、このジャンルに新しい風が吹き始めた。大型サイズの最新ミニバンの魅力と使い勝手を徹底検証した。
ここ数年、レクサス『LS』やトヨタ『クラウン』などの高級セダンに代わって人気を集めているのが、トヨタ『アルファード』『ヴェルファイア』(以下アルヴェル)や日産『エルグランド』などの高級ミニバンだ。マイカー以外に、社用車や公用車としても利用されるようになった。2019年4月から2020年3月までの販売台数を調べてみると「アルヴェル」の2台で10万台近くある。これは乗用車のランキングでもベスト5に入る数字だ。ここまで人気になると「みんなと同じクルマはイヤ」という人も出てくるもの。
300馬力超えの〝スーパーMINI〟「ジョンクーパーワークス クラブマン」の恐るべき実力
その動きをいち早く察知したのがトヨタだった。輸出専用車種の骨格を利用して「アルヴェル」よりさらに大きく豪華に仕立てたミニバンを造り日本市場に投入した。それが『グランエース』だ。
それにしても「ビッグなミニバン」という見出しを見て何のことだろうと思った人もいるだろう。そもそもミニバンは北米で誕生したジャンルで、それまでのアメリカでは全長が5m以上、全幅、全高が2m以上というスポーツバンが主流でV8、7Lクラスのエンジンを車体前部に搭載していた。80年代後半になるとダウンサイジングしたバンが登場するようになり、これをミニバンと呼ぶようになった。ちなみに1BOXカーとの違いは、エンジンが前席の下ではなく、車体前部にあること。
『グランエース』は4列シートモデルもある特大ミニバンだ。今後どのようなバリエーションが加わるのか「アルヴェル」ユーザーの関心も高い。
移動するプライベートラウンジ
トヨタ『グランエース』
Specification
■全長×全幅×全高:5300×1970×1990mm
■ホイールベース:3210mm
■車両重量:2740kg
■排気量:2754cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
■最高出力:177PS/3400rpm
■最大トルク:450Nm/1600~2400rpm
■変速機:6速AT
■燃費:10.0km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:650万円
※「プレミアム」
フロントグリルは『アルファード』や『ヴェルファイア』よりおとなしいデザインだが全幅が両車より120mmも広く、迫力がある。全高もほぼ2mあるので近づくと圧迫感もある。
ホイールベースも長い。軽自動車の全長と比べても185mm短いだけ。全長5300mmはトヨタがタイから輸入しているピックアップトラック『ハイラックス』の5335mmに次いで国産乗用車2位。
このクルマが前方を走っている時の迫力もスゴい。まるで食パンのような、スクエアのルックスはこれまでの国産車にはなかったデザイン。リアゲートも大きくかなり重いが手動式。
一度乗ったらヤミツキになる!広くて快適すぎる移動空間
エンジンルーム
車体前部に4気筒、2.8Lディーゼルターボエンジンを横置き。6速ATで後輪駆動。ディーゼルならではの音や振動はある。
運転席と各種装備
前席の着座位置は高め。ダッシュボードやドアウインドウの位置は全て低く、見晴らしも抜群に良い。
シートスペース
シートレイアウトは3列6人乗りと4列8人乗りを用意。シートと天井内張りはベージュ系が標準色で、黒はいずれも指定色。
ラゲージスペース
2~3列目シートはいずれも前方にスライドさせることが可能。奥行きは1200mm近くある。後方まで下げると身長190cmが縦に3人座れるぐらい広い。
【 ココがポイント!】飛行機のファーストクラスのようにくつろげる2列目
2列目は足元のオットマンが電動で開閉する。フルリクライニングも可能。アームレストは木目調デザインでメッキ加飾のフタ付きカップホルダーや折りたたみ式のサイドテーブルも装備。
【 ココがポイント!】フルフラットでリクライニングする3列目シート
3列目シートも電動で足元のオットマンの開閉ができるほか、フルフラットでリクライニング可能。左右シートの間隔は2列目より狭くウオークスルーはできない。
広さで選ぶなら『グランエース』
[運転性能]2.8Lディーゼルターボは2000回転から加速するがややトルク不足。タイヤも商用車用なので運転を楽しむには厳しい。17点
[居住性]広さは間違いなくトップクラス。すべての席で身長190cmが足を組めるのはスゴい。1列目から後席へは移動できない。19点
[装備の充実度]予防安全、衝突安全機能は標準装備。ディスプレイオーディオとDCMも標準。快適装備は充実している。19点
[デザイン]このカテゴリーのミニバンに共通する押し出しの強いルックス。ルームミラーに映る姿も迫力たっぷりだ。18点
[爽快感]運転をしている時の操縦性に楽しさは感じないが2列目、3列目でリラックスしている時の爽快感は抜群だ。18点
[評価点数]91点
文/石川真禧照
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