元F1ドライバーが私財を投じて……
text:Kenji Momota(桃田健史)
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あのF40を売却して資金捻出するも、息子の夢支えられず……。
元F1ドライバー、ジャン・アレジ氏の行動について世界各地で様々な報道がある。
アレジ氏といえば、80年代から90年代のF1シーンで多くの日本人にお馴染みの名前だ。
古舘伊知郎氏の名調子や、ホンダの積極的なマーケティング活動などによって、日本では空前のF1ブームが到来した。
日本人初のF1フル参戦ドライバーとなった中嶋悟氏とアレジ氏は1990年に英国のティレルでチームメイトとなり、中嶋氏へのフィーチャーが増えたことで、日本メディアでのアレジ氏の露出も一気に増えた。
91年には、F1ドライバーの夢ともいえる、フェラーリ入りを果たし、5シーズンを戦った。
その後、ベネトン、ザウバー、プロスト、ジョーダンと13シーズンに渡りF1のステアリングを握った。
さらにドイツDTMでもメルセデスワークスとして参戦するなど、モータースポーツ界の頂点を知り尽くした人物である。
潤沢な資産を得て、女優/モデルだった妻、後藤久美子氏と共に家族を大切にしてきた。
そんなアレジ氏は、息子ジュリアーノにF1への道を切り開いてきたが、F1の少し手前、F2参戦中で足踏み状態となった。
愛車F40売却で当座の資金の捻出するも、事は上手く運ばなかった。
アレジ氏以外も F1世襲うまくいかず?
アレジ氏のみならず、F1ドライバーの世襲はけっして珍しいことではない。
父親の名前として並べてみると(以下継承略)、ジル・ビルニューブ、ネルソン・ピケ、ケケ・ロズベルグ、マリオ・アンドレッティなどだ。また、現役ドライバーでは、世界ラリー選手権(WRC)のカルロス・サインツがいる。
また、アメリカではトップカテゴリーであるNASCARには、親子3世代や兄弟や親類などレーシングファミリーとしての繋がりが極めて強い。
こうして、親と子どもを比較すると、F1世襲が上手くいくケースは少ない印象がある。
仮に子ども世代が成功しても、近年はふた昔と比べて選手寿命が短くなる傾向があり、社会的な影響力(露出・インパクト)が弱い。
いずれにしても、世襲ではない若手ドライバーたちからすれば、世襲ドライバーはまさに「親の七光り」だ。
世襲ドライバーには潤沢なレース資金があり、仮にレーシングドライバーとして成功しなくても、親が展開する様々な事業を引き継ぐなど、現役引退後の生活の心配も要らない。
こうして元F1トップドライバーの親が子どもに資金援助する中で、よく聞かれるのはF1のシートを獲得するための「持ち込み資金」だ。
いったいどういうことなのか?
ドライバー側がチームに資金持ち込む
世界最高峰のモータースポーツに参戦するのだから、契約金はとてつもなく高額だ。
実績のあるトップF1ドライバーは年収数十億円となり、バスケットのNBA、野球のメジャーリーグ、ゴルフのPGAなど、世界トップスポーツ選手と肩を並べる資産を得る。
一方で、F1へステップアップする、また中位以下のチームに所属する場合、ドライバー側がチームにスポンサー資金を持ち込むというスタイルが定着している。
そもそも、レーシングチームという事業は、レーシングマシンの研究/開発/製造、そして各地を転戦しながらの整備/レース参戦が支出の主体となる。
その費用を捻出するため、企業の広告宣伝に対する協賛金を得ることが主体だ。
そのため、ドライバーがスポンサーを連れてくるという発想が成立してしまう。
副業的には、レースで開発した技術を他の事業者に販売すること。また、衣料品などマーチャンダイズによる利益もあるが、収入の中での比率は低いのが一般的だ。
また、F1などフォーミュラカーで大きな支出となるのが、エンジンだ。
例えば、ホンダの場合、F1エンジン開発に少なくとも年間1000億円以上がかかっているとみられる。
そのため多くのレーシングチーム自社開発ではなく、エンジン供給という協賛を自動車メーカーから受ける。
モータースポーツの未来 経済に左右
F1まで辿り着くには、親の援助による自己資金であれ、自動車メーカー各社がおこなっている若手ドライバー育成プログラムによるステップアップ制度であり、かかる費用は庶民感覚でいえば莫大な額である。
そこまでしても、世界最高峰レースで戦いたいという純粋な気持ち、また地位/名誉やトップチームにおける高収入を得たいという人としてごく自然な欲求から、なんとしても資金調達して一歩でもF1を目指したいという若者は世界各地に大勢いる。
一方で、今回のコロナ禍でも顕著になったように、F1を含めたレース関連事業者の事業基盤は脆弱だ。
生き残りをかけて、大量解雇をおこなったレース関連事業者が多い。
過去を振り返っても、60年代高度成長期にレースは世界的に盛り上がったが、70年代のマスキー法などの排ガス規制やオイルショックによって、レース業界の勢いは一気になくなった。
日本でのバブル期、またアメリカでの90年代ITバブル期の後も、多くのレース事業者が姿を消した。
モータースポーツは経済動向に大きく左右されることは明白だ。
ホンダは「2050年のカーボンニュートラルを目指す」として、F1から事実上、完全撤退を表明した。
電動化、自動運転化、コネクテッド化が進む自動車産業界において、これからのモータースポーツはどうなっていくのだろうか?
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みんなのコメント
アレジ氏だってかなりの資産はあるはずだが?