内燃エンジン・アルファ・ロメオの金字塔
2017年に華々しくデビューしたアルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオが、2024年仕様としてアップデートを受けた。変化度は小さいが、ベスト・スポーツサルーンの1台といえる仕上がりに、変わりはないようだ。
【画像】内燃アルファ・ロメオの「金字塔」! ジュリア・クアドリフォリオ 競合のスポーツサルーンたち 全105枚
最近はクロスオーバーが幅を利かせているが、ここ10年のラインナップで最も面白いモデルは、しっかり生き残っている。ジュリア・クアドリフォリオは、BMW M3やメルセデスAMG C 63と競争しても、恐らく勝てる実力を保持している。
能力は非常に高い。新しいAMG C 63がV8エンジンから手を引いたことを踏まえれば、アドバンテージは広がったといっていい。
アルファ・ロメオは、2027年までに全ラインナップをバッテリーEVへ置き換えるという。この4ドアサルーンが、ブランドにおける内燃エンジン・モデルの金字塔になるのかもしれない。
ベースのジュリアは、先進的な技術を備え、比較的軽量に仕上がっている。このパッケージングが、煮詰められたサスペンションと洗練されたパワートレインで武装する、クアドリフォリオの確かな土台となっている。
プラットフォームはスチール製。サブフレームやサスペンション、ドアやフェンダーなどには、軽量化のためアルミ材が用いられている。クアドリフォリオのボンネットとドライブシャフトは、カーボン製だ。
オプションで、ルーフもカーボン製に置き換えられる。アクティブ・フロントスプリッターも装備できる。
フェラーリのV8から着想を得た2.9L V6
車重は1660kgと主張されるが、AUTOCARによる2017年の計測では、1700kg丁度。先代のAMG C 63より間違いなく軽量だった。当時と異なり、最新のM3は四輪駆動で1805kg。ジュリア・クアドリフォリオの軽さが光る。
フロントに載る2.9L V6ツインターボエンジンの最高出力は、今回の改良で10ps増しの520psへ上昇。最大トルクは61.1kg-mを発揮する。
アルファ・ロメオは、この2.9L V6エンジンが、フェラーリの3.9L V8ツインターボから着想を得たものだと認めている。詳しく見てみると、ボアとストロークは同じで、バンク角はともに90度。圧縮比も近く、IHI社製のターボチャージャーも共有している。
実際は、単なる着想だけではないだろう。技術者も、フェラーリとの縁が深い人物だ。
従来的な後輪駆動で、クラッチを内蔵したトルクベクタリング・リアデフは、2024年仕様から一般的な機械式リミテッドスリップ・デフに置き換えられた。安価なアイテムだとしても、動作はシンプルで挙動を理解しやすい。
アダプティブダンパーが組まれるサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式で、リアがマルチリンク式。ブレーキは、電気機械式のバイワイヤ・システムを採用する。マレリ社のシャシー・コンピュータが、各コンポーネントを統合制御する。
英国仕様の場合、8速ATが標準。19インチ・アルミホイールは2つのデザインから選べる。オプションで、カーボンセラミック・ブレーキディスクを組むことも可能だ。
運転姿勢に違和感なし パドルで一層活気づく
運転姿勢は、右ハンドルでも違和感なし。メーターパネルへ正対して座れ、身長にも大きく影響されない。ステアリングホイールは、大きさも手元へのリーチもバッチリ。丸く握りやすい。
インフォテインメント・システムは、ベストとはいえないが、時間が経過すれば気にならなくなる。タッチモニターは充分な大きさで、ロータリー・コントローラーが用意され、スマートフォンと連携可能。これ以上、必要はないだろう。
内装の素材は高品質。ステッチの施されたレザーに、艶のあるカーボン製化粧トリムで仕立てられる。金属とは見間違えない、プラスティック製部品も存在し、最新のドイツ水準というわけではないけれど。
リアシートは実用に耐える広さ。クアドリフォリオだから、大目に見れるだろう。そうそう、エアコンには実際に押せるハードボタンが用意されている。
インテリアの僅かな弱点を忘れさせるのが、白眉のV6エンジン。アイドリング時から勇ましく、沢山の空気を吸っている様子をうかがわせる。「DNA」ドライブモードをダイナミックへ切り替えると、排気音の迫力が増す。
同時に、アクセルレスポンスは鋭敏に。8速ATは、速さ優先でギアを選ぶようになる。ハーフスロットル時は、変速に悩む場面もあるものの、基本的に不満ない仕事をする。
積極的に運転したい気分なら、ステアリングコラムから伸びるパドルを弾くのがベター。有能なトルクコンバーターが、タイトで滑らかにギアを切り替え、クアドリフォリオは一層活気づく。
センセーショナルな動的能力と操縦性
V6エンジンのターボラグは、3000rpm以上でほぼ消え、熱狂的に7300rpmまで吹け上がる。BMWの直列6気筒以上に魅力的なサウンドを伴う。2017年の計測では、大人2名が乗車した状態で、0-100km/h加速を4.0秒以下でこなしてみせた。
動的能力や操縦性は、未だにセンセーショナル。まず乗り心地が素晴らしい。柔らかすぎず、硬すぎず、姿勢制御は非の打ち所がない。これほどの器用さを叶えたモデルは、このクラスには他に存在しない。フェラーリやロータスが作ったサルーンのようだ。
アダプティブダンパーは個別に硬さを調整でき、エンジンをアグレッシブにしても、しなやかさを保てる。英国の一般道で味わう場合は、ソフト側の状態が好適。最もハードでも、我慢を強いるほどではないが。
ステアリングは、ロックトゥロック2.25回転とクイックだが、ナーバスさは皆無。ステアリングホイールには、路面からの情報がしっかり伝わってくる。
シャシーのバランスも素晴らしい。前後の重量配分はほぼ均等といえ、フロントタイヤへ過度に荷重がかかることはない。リアタイヤは、豊かなパワーをしっかり路面へ展開してくれる。
ブレーキペダルの感触は、改善を求めたい数少ない部分。制動力は間違いないが、停止する直前など、ペダルを踏む強さを読みにくい場面がある。
リミテッドスリップ・デフを得たことで、コーナリングは一層正確性を増した。加速しながら脱出するような場面で、より速く、より鮮明だ。トラクションは、ドライなら不足なし。ウェットでは足りなくなるが、概ね落ち着いている。
ベスト・ドライバーズサルーンの1台
アルファ・ロメオは、ジュリア・クアドリフォリオでブランドの再構築を狙っていた。価格価値の高さも図られ、発売当時はBMW M3やAMG C 63より低く設定されていたが、現在もそれは変わらない。
装備は充実し、オプションの少なさも特筆に値する。別に費用が求められるのは、特別なエグゾーストやホイール、カーボン製ルーフ程度だ。
燃費は、穏やかに巡航走行させた条件で、12.6km/Lに届いた。ガソリンタンクは58Lと、ライバルより小さめながら、効率の良さで航続距離は短くない。
誕生から7年が過ぎた、ジュリア・クアドリフォリオ。インテリアの品質やアクセル/ブレーキペダルの感触など、気になる部分はゼロではないものの、ベスト・ドライバーズサルーンの1台であることに変わりはない。
鋭く走り、乗り心地は硬すぎず、快音を放つ。快適性と操縦性のバランスは、英国の環境にも見事に順応する。高速道路の長距離ドライブもお手のもの。孤高の魅力は、今でもまったく衰えていない。
◯:圧巻の加速性能 突出した快適性と操縦性のバランス ドライビングポジション
△:ブレーキペダルの感触 稀に発生する、アクセルペダルとエンジンレスポンスとの不調和
アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ(英国仕様)のスペック
英国価格:7万8195ポンド(約1478万円)
全長:4643mm
全幅:1860mm
全高:1436mm
最高速度:307km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:229g/km
車両重量:1660kg
パワートレイン:V型6気筒2891cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:520ps/6500rpm
最大トルク:61.1kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)
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