筋肉質で新鮮なボディデザイン
text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
新しいベントレー・フライングスパーのスタイリングは、ステファン・セイラフが率いる、英国クルーのデザインスタジオによるもの。先代以上の素晴らしい優雅さを漂わせている。プラットフォーム開発段階からの協力により、ボディのプロポーション自体が理想的なものになっている。
フロントタイヤは、先代比で152mmほど前方に移された。フロント・オーバーハングを短縮し、デザインを美しくまとめているだけでなく、ハンドリングも向上させている。
加えて、うねるように筋肉質なボディの面構成が、新しいフライングスパーの見た目に強い新鮮味を生んでいる。内に秘めたパワーを、身体で表現しているかのようだ。
今回の試乗車は初期の特別仕様で、3万7000ポンド(492万円)のファースト・エディション・パッケージが付いている。ベントレーで選びたい、ほとんどのオプション装備が盛り込まれている。
回転式のダッシュボード・モニターほのか、縦横無尽に選べるカーペットとトリム、ステッチ、照明、エンブレムにステアリングホイール。クルーのスタジオや大都市のディーラーで、1日は掛けて悩めるだろう。
そうしてコーディネートされたフライングスパーは、世界で最もラグジュアリーな空間となる。最上級のレザーで覆われた車内には、まばゆい金属製パーツが散りばめられる。もちろん、金属に見える部分は、ちゃんと金属だ。
クリーミーでスムーズなW12エンジン
ラグジュアリーな自動車ブランドは少なくないが、ベントレーはその筆頭の1社であることもうなずける。インテリアの組み合わせは無数に存在し、1台の車内を体験しただけで説明しきることは、不可能ではないだろうか。
新しいフライングスパーには、ベントレーのSUV、ベンテイガに採用された6.0LのツインターボW12気筒エンジンが搭載される。最高出力は635ps。ベントレーでは初となるツインクラッチ8速ATを介して、四輪を駆動する。
エンジンは、かつては遠くから唸り声が響いてきたものだが、いまでは常に静かでクリーミーといえるほどスムーズ。排気量の割には、経済的でもある。試乗時の燃費は、7.7km/Lから8.8km/Lの間となっていた。
再設計を受けたことでエンジン内部のバランスが向上し、インダクション・システムも改良された。ダイレクト式と非ダイレクト式の燃料噴射システムを併用することで、粘り強さと燃費を両立させているのだろう。
実際に運転してみると、エンジンからのサウンドや振動は、ほとんど感取できない。ベントレーのもう1つのユニット、エキゾーストからエネルギッシュなサウンドを響かせるV8エンジンとは、異なる性格だ。
メルセデス・ベンツやBMWはライバル視するだろうが、ボディーサイズや価格でベントレー・フライングスパーと並ぶライバルはほとんどない。
ベスト・オブ・ベストの有力候補
ロールス・ロイスは、希少性を強調するために、ベントレーより価格を意図的に高く設定している。フライングスパーの優位性を確かめるためにも、間もなく登場するラグジュアリー・サルーンのゴーストと、比較してみたいところだ。
フライングスパーは、間違いなく高価ではある。しかし実用性は引き上げられており、内容を考えれば、価格は手頃だとすら思える。異論はあると思うけれど。その価値を鑑みれば、世界で最も優れたクルマの候補として、最有力といえるだろう。
ベントレー・ブランドとしても相応しいか。ここではまだ、明言を避けておこう。100点を付けても良いかもしれないが、現段階では90点としておきたい。
最終的な点数は、より子細な評価を行う、ロードテストで決めてもらおう。少なくともフライングスパーが、ベスト・オブ・ベストに選ばれる可能性を持つ、見事な完成度を得ていることは間違いない。
ベントレー・フライングスパー(英国仕様)のスペック
価格:16万8300ポンド(2238万円)
全長:5316mm
全幅:1978mm
全高:1484mm
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:2437kg
パワートレイン:W型12気筒5950ccツインターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:635ps/6000rpm
最大トルク:91.6kg-m/1350-4500rpm
ギアボックス:8速ツインクラッチ・オートマティック
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