WEC世界耐久選手権のLM-GTE Proクラスに参戦していたBMWは6月16日、フランスのサルト・サーキットで行われた第87回ル・マン24時間レースに2台のBMW M8 GTEを投入。BMW陣営にとっては困難なレースとなったが、最後は81号車と82号車が並んでチェッカーを受け、今季限りでワークス活動を終了するシリーズに別れを告げた。
2018年5月に開幕した年またぎのWEC“スーパーシーズン”。ル・マン24時間が1シーズンの間に2度行われる変則的な年度に、BMWは同社の新型クーペ『8シリーズ』をベースとする新型GTカー『BMW M8 GTE』を、欧米5メーカーが覇を競うLM-GTE Proクラス持ち込んだ。
ル・マン24時間:BoPの再調整を望むBMW。「せめてレースをさせてほしい」とダ・コスタ
BMWにとってル・マンは2011年のワークス参戦以来、7年ぶりの参戦とあって、スーパーシーズン前年の車両開発時から大きな注目を集めていた。しかし、周囲の期待とは裏腹に、新車に対して厳しい同クラスのオートマチックBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)の影響を受け、同じくニューマシンを投入したアストンマーティンとともにシーズン序盤戦は苦しい戦いを強いられていく。
そんななか迎えた第4戦富士ではトム・ブロンクビスト/アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ組82号車BMWがクラス2位となり、待望の初表彰台を獲得する。
また、2019年3月に行われた第6戦セブリング1000マイルで、今度はマーティン・トムチェク/ニッキー・キャツバーグ/アレクサンダー・シムズ組81号車が2位に入るなど着実に戦闘力を増してきていた。
しかし5月22日、BMWは今季限りでWECから撤退する意向を発表。それはアナウンスから3週間後の2019年ル・マン24時間が、陣営のラストレースとなることを意味していた。
そんな最後のル・マンで、BMWのワークス部隊であるBMWチームMTEKは、82号車が予選5番手、81号車が16番手からスタートを切っていく。しかし、両者とも徐々にポジションを下げ、さらにはトラブルも抱え度々ピットガレージでの修復作業を余儀なくされた。
それでも、コース上でストップしてしまった81号車を含め、最後は2台がコース復帰を果たしスタートから24時間後にはランデブー走行で無事にフィニッシュ。ラストレースは82号車BMWがクラス11位、81号車BMWはクラス14位で完走を果たしている。
■1999年のル・マン優勝マシン『BMW V12 LMR』がサルトに登場
「WEC“スーパーシーズン”の最後のイベントは我々にとって、まさに手一杯となるようなレースだった」と2019年のル・マンを総括するのは、BMWモータースポーツのイェンス・マルカルト代表。
「レースの前から、ル・マンでの状況が必ずしもいい方向にないことは予想していた。そして、それが事実であることはすぐに理解したよ。私たちのペースはレースリーダーについていけないことが比較的早い段階で明らかになったんだ」
「つまり我々のドライバーたちはオープニングラップからマシンの限界域でプッシュしなければならなかったんだ。そして、それはマシンにダメージを与え続けることを意味する」
「その結果、レースの3分の2を迎えたところでメカニカルトラブルが発生。追いかけるべきリーダーは見えなくなってしまった。当然、我々は良い成績でル・マンを離れたかった。だが、それが叶わなくなってもチームの全員が最後の1周まで全力を尽くしてくれたんだ」
最後にマルカルト氏は「今、我々BMWは『Au revoir, Le Mans(さようなら、ル・マン)』と言い、世界選手権に別れを告げる。BMWチームMTEK、ACOフランス西部自動車クラブ、WECファミリー、そして何よりも、年をまたいでWECプロジェクトを支えてくれたBMWファンの方々に感謝の言葉を送りたい」と感謝の意を表した。
なお、BMWは今回、20年前の1999年に自社初のル・マン総合優勝マシンとなったBMW V12 LMRと、BMW初のクラス優勝マシンである328ツーリング・クーペを持ち込み、サルト・サーキットでのスペシャルパレードラップを披露している。
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