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ホンダ初の一般向け電動バイクEM1 e:開発者インタビュー「なぜ原付一種としたのか? ターゲットユーザーは?」

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ホンダ初の一般向け電動バイクEM1 e:開発者インタビュー「なぜ原付一種としたのか? ターゲットユーザーは?」

ホンダ EM1 e:「交換式バッテリー採用の原付一種スクーターとして登場」

2023年8月24日、ホンダからまったく新しい電動スクーター「EM1 e:」の発売が始まりました。多くの人が乗れる原付一種モデル(いわゆる50ccクラス)であり、ホンダ初の「一般向け電動二輪車」として5月に発表された段階から大いに注目を集めていたニューモデルが、いよいよ日本の市街地に飛び出していくわけです。

【画像20点】ホンダの電動原付スクーター「EM1 e:」の装備、機能、全ボディカラーを写真で解説

ご存知のように、ホンダは企業として「2050年カーボンニュートラルの実現」を重要なテーマとして掲げています。一般論として、カーボンニュートラル=フル電動化というわけではありませんが(*)、それでも二輪部門における電動化を進めないことには企業としてのカーボンニュートラル化を達成するのは難しいのも事実でしょう。

*編集部註:カーボンニュートラル化には、化石燃料を用いない水素燃料や合成燃料などのアプローチもある。

すでにビジネス向けの電動二輪車として「ベンリィ e:」や「ジャイロ e:」などは配達業務やフードデリバリーなどで使われているのを見かけますが、あくまでビジネス用であって一般ユーザーからすると購入対象としてイメージしづらいものでした(ただし、EM1 e:の発売に合わせビジネス向け電動二輪車の一般販売も始まっています)。

その意味では、EM1 e:の発売開始というのは、一般向け電動二輪車マーケットへの初参入といえます。ホンダが電動二輪車に対して、どのようなモビリティとして捉え、未来を考えているのかを判断する試金石というと大袈裟かもしれません。ですが、ユーザー的にはホンダが一般向けの電動二輪車としてどんな世界を目指しているのかを知ることができる唯一の乗り物であることも事実でしょう。

ホンダ EM1 e:開発者インタビュー「なぜ原付一種カテゴリーを選んだのか?」

前置きが長くなってしまいましたが、2023年8月下旬にその大注目マシン「EM1 e:」のメディア向け試乗会が開催されました。

試乗会では、LPL=開発責任者の後藤香織さん(本田技研工業 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部 電動開発部 二輪商品開発課)と、LPL代行を務めた内山 一さん(本田技研工業 二輪・パワープロダクツ開発生産統括部 システム開発部 システムイノベーション課 チーフエンジニア)のお二人をはじめ、EM1 e:を世に出すために携わってきた方々に話を伺うことができました。

パーソナル向けの電動スクーターを生み出す背景には、冒頭でも記したようにホンダ全体で目指すカーボンニュートラルの実現があります。その中で、あえて原付一種クラスのスクーターを最初のモデルとして選んだのは「多くの方にお使いいただけ、カーボンニュートラル社会を実感してただきたい」という思いからといいます。

二輪免許を持たない、四輪の普通免許保持者であっても運転することができる原付一種クラスを選んだことには、カーボンニュートラル化を進める強い意志が込められているわけです。さらに多くのユーザーがEM1 e:を買いやすいよう、全国に526店舗の「Honda二輪EV取扱店」を新設しています。

EM1 e:の販売目標は年間3000台ということですが、事前予約だけで764台ものオーダーを集めているとのこと(8月24日発売日時点)。その男女比は88:12と男性が多めになっています。一般的な原付一種スクーターではオーナーの男女比は7:3程度になっていることが多いことを考えると、男性比率が高いといえます。このあたり、ホンダ初の一般向け電動スクーターということで機械的な好奇心が強いアーリーアダプターマインドのユーザーが飛びついているのかもしれません。

この点については後藤さんは「男性比率が高いというより、まだ女性の方にEM1 e:の存在が届いていないのだと思います。むしろEM1 e:の伸び代があると感じています」と、むしろ好印象であると伝えてくれました。

また事前予約したユーザーの平均年齢は50代となっていますが、これもZ世代など若者層への浸透など全体に広がる可能性を示すデータといえるでしょう。

「走りや機能」EM1 e:はどのような使われ方を想定しているのか?

さて、EM1 e:の特徴としては、先行したビジネス向け電動二輪車と同様に、ホンダの交換型リチウムイオンバッテリー「Hondaモバイルパワーパックe:」(以下、MPP)を採用していることが挙げられます。

これはホンダが国内や欧州のバイクメーカーと交換式バッテリーのコンソーシアムを組んでいるように、MPP推しであることも理由といえますが、スクーターの使われ方からすると駐輪場に充電用ケーブルを引き回すのは現実的ではなく、むしろバッテリーを取り外して家の中で充電するほうがインフラとしては使いやすいという判断からといいます。
確かに電動アシスト自転車に慣れているユーザーからすると、交換式バッテリーというのは親しみやすい方法といえます。

MPPの単体重量は約10.3kg。しかも、EM1 e:はMPPを1個使うだけなので、非常に扱いやすいという印象です。充電時間は、充電率がかなり低い状態からでも6時間で満充電にできるということですから、帰宅して充電器にセットすれば翌朝には余裕で満充電になっている──といった感覚で使うことができそうです。

MPPが100%充電された状態からの航続距離は、30km/h定地走行で53kmというのがカタログ値。参考までに、欧州で使われているWMTCクラス1モードでは41.3kmになるといいます。ただしバッテリー残量が20%を切ると、パフォーマンスを抑えたモードに切り替わることで航続距離を稼ぐ仕様となっています。WMTCモードでフルパフォーマンスを出せるのは走行距離でいうと30kmが目安ということです。

さらに航続距離を伸ばしたいというのであれば「ECON」(イーコン)モードを選ぶという手があります。ホンダの四輪車ではお馴染みのECONモードですが、EM1 e:では全体にパフォーマンスをマイルドにしたうえで、最高速も30km/hリミッターで制限するモードとなります。EVの航続距離というのは最高速を抑えるほど伸ばせる傾向にありますから、もっと低い速度に制限するという手もあったのでは? と質問すると、LPL代行の内山さんは次のように答えてくれました。

「確かに最高速を抑えるのは航続距離を伸ばすには有効なのですが、抑えすぎると公道走行で怖さを感じてしまいます。私自身が、ビジネス向け電動二輪車などで実体験した結果として、原付一種は30km/hで走ることが必要と考え、ECONモードでも、いわゆる制限速度で走れるような制御としました」。

さらにECONモードは単にエネルギー効率だけを考えたモードではないといいます。

「ECONモードでは加速特性をマイルドにすることで標準モードに対して約15%も航続距離を伸ばすことができます。しかし、単に加速を鈍らせるというセッティングではありません。エンジン車も含めてはじめて(久しぶりに)二輪車に乗られるようなお客様が安心して乗れるような味付けとしています」。

「安定感のあるプロポーション、フレンドリーで洗練されたスタイリングなどルックスによる印象にも配慮しています。開発コンセプトは『ちょうどe:(いい)Scooter』で、毎日使っていただけるパーソナルコミューターを目指しました。後輪インホイールモーターのダイレクトな走りはエンジン車では味わえない魅力です」と後藤さんはEM1 e:の魅力をまとめてくれました。

ホンダ EM1 e:主要諸元

【モーター・性能】
種類:交流同期電動機 定格出力:0.58kW<0.8ps> 最高出力:1.7kW<2.3ps>/540rpm 最大トルク:90Nm<9.2kgm>/25rpm

【バッテリー】
種類:ホンダモバイルパワーパックe:(リチウムイオン電池) 定格電圧:50.26V 定格容量:26.1Ah 定格電力量:1314Wh 連続放電出力:2.5kW
ゼロから満充電までの充電時間:約6時間(Hondaパワーパックチャージャーe:使用)

【寸法・重量】
全長:1795 全幅:680 全高:1080 ホイールベース:1300 シート高740(各mm) タイヤサイズ:F90/90-12 R100/90-10 車両重量:92kg(Hondaモバイルパワーパックe:搭載の状態)

【車体色】
パールサンビームホワイト、デジタルシルバーメタリック

【価格】
29万9200円(車両本体15万6200円、Hondaモバイルパワーパックe:8万8000円、Hondaパワーパックチャージャーe:5万5000円)

レポート●山本晋也 写真●北村誠一郎/ホンダ 編集●上野茂岐

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みんなのコメント

2件
  • 約30万か。お安くは無いが、高い税率の燃料代がかからずより安い電気で賄えるなら、それはそれでアリかもね。
    あとはバッテリーの耐久性or価格がどうかですね。
  • 約30万かぁ、距離にもよるけど、電動アシスト自転車が選ばれるかな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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