これまでに60万台以上が売れたマカン
発売から7年が経過したマカンは、ポルシェ史上最も多売なモデルとなった。世界に名の通ったスポーツカー・メーカーでも、稼ぎ頭の1つはスポーツカーではなくなっている。
【画像】マイナーチェンジ ポルシェ・マカン SとGTS 競合するSUVと比較 全154枚
ポルシェは、スポーティとはいいにくいモデルに、スポーティなイメージを与えることが得意だ。SUVのカイエンもそうだし、純EVのタイカンをラグジュアリー・リムジンのスポーツカーと呼ぶ人もいる。
このマカンも、SUVでありながらスポーティな雰囲気を漂わせている。その効果もあって、これまでに60万台以上のマカンを販売しており、当初の予想を上回る結果につながっている。
世界的に見ると、マカンを購入した人で80%近い割合が、ポルシェの新規顧客だったという。加えて、そのうちの60%は女性だそうだ。ポルシェのデザインや、製品としてのイメージや品質は、男性に限らず魅力的に映るのだろう。
この成功を踏まえれば、ポルシェがマカンに与えたマイナーチェンジが、大掛かりな内容ではなかったこともうなずける。施された範囲は限定的で、表面的な部分が中心となっている。
マイナーチェンジ前後を見比べてみると、フロントやテールの見た目が効果的に変化している。特に、リアバンパー下部のディフューザーなどが、わかりやすいだろう。
インテリアの違いはより明確で、センターコンソールの造形やスイッチ類の処理が新しくなった。シフトレバーは短くなり、ダッシュボード上部にアナログ時計が据えられた。
一昔前のスーパーカーに迫る動力性能
AUTOCARの読者ならご存知かもしれないが、今回のマイナーチェンジでマカンは3グレード構成に見直された。4気筒ターボエンジンを搭載するマカンがエントリーグレードで、2.9L V6ツインターボエンジンを搭載するSとGTSが馬力違いで上位に並ぶ。
グレードを問わず、マカンは四輪駆動とシフトパドル付きの7速PDKが標準。今回試乗したのはマカン Sで、英国価格は5万3500ポンド(約829万円)からに設定される。GTSより5540ポンド(約85万円)安く、賢明な選択肢に思える。
ポルシェだから、オプションもふんだんに用意されている。どれを選ぼうか、迷うのも楽しみの1つだ。
サスペンションは、ダンパーの減衰力を中心に改良を受けている。ステアリングの応答性を高め、敏捷性を磨くため。だが、スポーティな操縦性を快適な乗り心地で味わえるように、サスペンションのワイドな処理能力は保たれている。
マカン Sの最高速度は259km/h、0-100km/h加速は4.6秒と、一昔前のスーパーカーに迫る動力性能を備えている。GTSは、0-100km/h加速を0.3秒縮める。
ドアを開いて乗り込んでみると、クルマで感じられる幸せ要素が巧みに実現されている。典型例のように。製造品質は一級だし、ドイツ製品らしく堅牢さも備え、すべてが美しいと感じられる。
しばらく観察して唯一気になったのが、センターコンソールのスイッチ類。スタイリッシュでモダンだが、実際に押せるハードボタンの方が、より印象は良いように思う。ステアリングホイールは、ポルシェ911と共有している。
洗練されすぎと感じるほどの多能さ
発進させてみると、マカン Sの運転のしやすさに感心する。運転席からの視界に優れ、ボディは適度にコンパクト。エンジンは低回転域から滑らかで、粘り強い。
デュアルクラッチを備えるATだが、Dに入れたままでは、変速を感知できないほど動作は滑らか。数年前のモノより、ずっと洗練度は高められた。
右足に力を込めれば、苦もなく勇ましく加速していく。パワーの放出とともにV6エンジンはたくましいサウンドを放つが、うるさすぎることはない。
操縦性や安定性にも唸らされる。ステアリングホイールの重み付けは非の打ち所がなく、適度に敏感。大きすぎないボディと相まって、郊外の道を軽快に走り回れる。
ポルシェのスポーツカーとは対照的に、ロードノイズは我慢できる範囲にまで遮断できていることも特長。クラスをリードできるほど、静かではないが。
GTSが履く21インチではなく、20インチ・ホイールを履いていることが、功を奏しているのだろう。サイドウォールの高さがありノイズは立ちにくく、柔軟性にも優れている。
皮肉的かもしれないが、マカン Sは少し洗練されすぎているとさえ筆者は感じた。極めて安楽に運転でき、秀でた能力を実感しにくい。能ある鷹は、ということなのだろう。
もし市街地を中心に運転していて、アクセルペダルのストロークを使い切らなければ、フォルクスワーゲン・グループのベーシックなファミリーカーと、明確な違いは感じられないかもしれない。エンブレムを隠したら、特に。
スポーツカーメーカーが作るSUV
とはいえ、マカンの多能さは間違いない。世界各国にドライビング・エクスペリエンス・センターを構えるスポーツカーメーカー、ポルシェが作るコンパクトSUVだ。英国なら、シルバーストーン・サーキットの横、日本なら千葉県の木更津にある。
マカン Sのオーナーになったらセンターを訪ねて、インストラクターと一緒に走ってみて欲しい。本物のスポーツカーに迫るほどの能力を、その気になれば解き放てることに気付けるはず。
普段使いにもぴったりなポルシェ・マカン S。日常的に楽しめるパフォーマンスも、マイナーチェンジを経て高められている。今後も、多くのユーザーを獲得するのだろう。
ポルシェ・マカン S(英国仕様)のスペック
英国価格:5万3500ポンド(約829万円)
全長:4726mm
全幅:1922mm
全高:1621mm
最高速度:259km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:8.5-9.0km/L
CO2排出量:251-265g/km
車両重量:1930kg
パワートレイン:V型6気筒2894ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:380ps/5200-6700rpm
最大トルク:52.7kg-m/1850-5000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
東京都心ではオバチャン、オネエさんのマカンです。勘違いしないでね。
こういうの見ると、あらゆる意味で日本は遅れた国になってるなと、あらためて、、、、