クォーター4気筒グレートヒーローズ
カワサキ Ninja ZX-25Rの登場により久しぶりに復活する、250cc直4マシンの歴史を振り返る。スズキが先行しヤマハが追撃する流れの中で、いよいよホンダがCBR250FOURにて登場。カムギアトレーン×アルミフレームといったハイメカを惜しみなく投入し、ライバルに対抗した。その後、フルカウルのCBR250R→CBR250RRへと道が切り拓かれていった。
Early’20ホンダ ミドル車検レスクラス〈150~250cc〉新車ラインナップ
●文:沼尾宏明/宮田健一 ●写真:真弓悟史
ホンダの意地でハイメカを250ccに投入
スズキが先鞭を付けた市販250cc直4クラスは、続いてヤマハがFZ250フェーザーを発売。バイク雑誌の誌面は、250=1000の4分の1を示す「クォーター」と4気筒を意味する「マルチ」が合わさった「クォーターマルチ大研究!」的なタイトルの企画で飾られるようになっていった。
そもそもレーサーながら世界初の250直4を作ったのはホンダ。その自負もあってか、クラス3番手として投入されたCBR250FOURの直4は、ライバルにない技術を引っさげて登場した。それがワークスレーサー直系メカ「カムギアトレーン」だ。
チェーンの代わりにカムシャフトをギヤで駆動することにより、高回転時のより正確なバルブ作動と摩擦抵抗の低減を狙ったこの技術は、クロモリ浸炭コンロッドなどで軽量化が追求された往復運動部品や、キャブから燃焼室までの吸気経路をほぼ一直線とした設計などと合わせて、高回転まで鋭いレスポンスで吹け上がるスポーツ性の高さを発揮した。
CBR250FOURは、ハーフカウルのスーパースポーツスタイルで登場したが、レプリカブームの影響ですぐにフルカウルに変更。そして丸目2眼のレプリカスタイルのCBR250R→CBR250RRへと変わっていく。その直4エンジンはジェイドやホーネットにも受け継がれ、’07で排ガス規制のあおりを受ける最後まで、250直4の灯火を守り続けたのだ。
CBR250FOUR:カムギアトレーン×アルミフレーム投入でFZ追撃
◆’86 CBR250FOUR:エアロフォルムのハーフカウルにヤマハを超えるメカを凝縮
ヤマハに先を越されたことで意地を見せたホンダは、カムギアトレーンを採用した直4で逆襲。CBR250FOURは、ヤマハFZ250フェーザーよりも1000rpm上まで回る1万7000rpmをレッドゾーンに設定。車体もアルミ製の目の字断面ツインチューブ・ダイヤモンドフレームや、新設計のS字断面アルミキャストホイール、極太スイングアームといった装備が奢られた。カムギアトレーン独特の高周波音は、直4のそれと相まってモーターのように精密な印象を与えた。
―― 【’86 HONDA CBR250FOUR】■水冷並列4気筒DOHC4バルブ 249cc 45ps/14500rpm 2.5kg-m/10500rpm 138kg(乾燥) ■タイヤF=100/80-17 R=130/70-17 ●当時価格:54万9000円 ※諸元&価格は’86
―― 【カムギアトレーン】カムシャフトをギヤで駆動するのは、高回転でも正確なタイミングでバルブ開閉することが目的。’60年代からワークスマシンで培われてきた技術だった。
―― 中央に配置したタコメーターは1万7000rpm からレッドゾーンに突入。高回転域では独特の高周波音が速さをさらに演出していた。
―― 鉄フレームだったライバルに対し、レーシーなアルミ製で差別化。「目の字断面」のワードで剛性の高さも大きくアピールされていた。
◆’86 CBR250FOURスペシャルエディション
鳴り物入りで登場したCBR250FOURだったが、時代はレプリカスタイルが人気に。すぐにアンダーカウルを追加したスペシャルエディションも登場した。
―― 【’86 HONDA CBR250FOUR SPECIAL EDITION】■45ps
【直4の前はVツイン:VT250F】それまでホンダ4スト250を担っていたのが、熟成を重ねていたVツインのVT250F。ハーフカウルも装備され、精悍さを増していた。
CBR250Rシリーズ:重要なのは見た目とハイメカだった
◆ ’87 CBR250Rハリケーン:フルカウルで大ヒット
初代CBR250FOURはセールス的に今ひとつだったが、翌年には市場が求めていたフルカウルとトリプルディスク、セパレートシートで、車名も「CBR250R」に変更。これが大ヒットし、この後4スト250もレプリカ化がどんどん進んでいった。
―― 【’87 HONDA CBR250R Hurrikane】■45ps/15000rpm 2.6kg-m/10500rpm 139kg(乾燥) ■タイヤF=100/80-17 R=130/70-17 ●当時価格:55万9000円 ※諸元&価格は’87
◆’88 CBR250R: シングルディスクで不人気に
’87でレッドゾーン+1000rpmも果たしていたが、さらに3年めでは丸目2眼の文字通りレプリカスタイルへと毎年でモデルチェンジ。ただ、なぜかフロントブレーキがシングルに戻ってしまい、そこがファンを泣かせることになってしまった。
―― 【’88 HONDA CBR250R】■水冷並列4気筒DOHC4バルブ 249cc 45ps/15000rpm 2.6kg-m/10500rpm 138kg(乾燥) ■タイヤF=100/80-17 R=140/70-17 ●当時価格:58万9000円 ※諸元&価格は’88
カムギアトレーン×アルミフレームというハイメカを積んだCBR250FOURで250cc直4クラスに乗り込んだホンダ。さらなるダメ押しの一手・CBR250RRへと進化を続ける。
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