今週末のベルギーGPから、今シーズンのF1も後半戦を迎えた。
前半戦の戦いぶりはどうだったのか、ホンダのF1テクニカルディレクターである田辺豊治に訊いた。
「ホンダのリソースには誰も敵わない」大きな信頼を寄せるレッドブル
ーー2018年も半分が過ぎました。これまでを振り返っていただけますか?
「今年に関しては信頼性第一できました。もちろん性能も狙っていますが、その開発の中で新しいチーム、経験の少ないドライバーと組むというのを含めて、オフシーズンから確実に周回数を重ねてデータを蓄積してきました。ホンダのパワーユニット(PU)も車体も、ドライバーの経験値も含めて、開発をやって来ました。ドライバーは2人とも新人でしたので、彼らに走るチャンスを最大限提供するのも我々の使命でした。走りを重ねれば重ねるほどクルマの挙動に関して、タイヤに関して、車体のセットアップを含めて蓄積出来たと思います」
ーーオフシーズンのテストは限られています。
「冬の間にはFIA主催のテストしかありません。バルセロナで8日間です。4日間が2回。そういう意味では事前の確認、ベンチでの確認が大切になってきます。でも、それだけでは確認しきれないことが多々ありますので、極力8日間で開幕戦に向けての仕様で走るというのが目標でした」
ーーベンチテストは重要です。
「今年のシーズンに向けては、極力実走コンディションを再現した形でのシミュレーションテストをやりました。テストベンチ上では振動テストも出来るのですが、車体振動までは入りません。そのあたりで足を引っ張られもしました。テストベンチでは100%は再現されていないので、最後は実走テストで実績を作るということです。我々の持っている設備と我々の知見でできるところでの耐久試験というのは当然やりました」
ーーシーズンが開幕してからはいかがでしたか?
「信頼性の面で言うと、開幕戦でいきなりMGU-Hがトラブりました。手は打ってきてはいましたが、まだまだ見切れていないものがあったわけです。シーズン開幕前のテストではそれなりに走れましたが、開幕戦の本番でトラブルが出てしまったということは反省の余地有りでした」
ーーそれほど深刻なトラブルではなかったようですが。
「トラブルが何であれ出してしまうと同じです。根本的かどうかというと、PU全てに蔓延してしまってどうにもならないトラブルではありませんでした。すぐに対応が打てるものだったということです。でも、トラブルが出たMGU-Hはホンダが弱かったところですね。3年やって来て経験したものの、まだまだです。非常に複雑な機構ですし、振動に関してもまだ見切れていないところがあります。以前は基本設計の部分に問題があったりしましたが、ひとつひとつ設計変更したり、材料の変更をしたり対応を打ってきました。しかし、距離が伸びてくるとまた違うところがトラブルとか、追いかけっこでした」
ーー第2戦でいきなり4位入賞をしました。
「バーレーンの4位はかなりラッキーでしたが、レース展開として危なげなく中団の中でトップを走っていられたことで、我々さくら、ミルトンキーンズのホンダ側プロジェクトメンバーのみならず、チームを含めて戦闘力を確認出来ました。ホンダと組んでどうなっちゃうんだっけ……というチームメンバーに対してそこでパフォーマンスを見せることが出来たというのは、トンネルの先に光がキチンと見えてそこに向かっていけば良いんだというモチベーションにも繋がったと思います。先の見えないトンネルの中を歩けっていわれても駄目でしょ? でも、早い段階で光があるというのが分かったのは良かった。その後、モナコなど手応えのあるレースもありましたが、成績のアップダウンが烈しくて、まだまだ我々のPUの使い方、車体のセッティング、ドライバーのタイヤの使い方を含めて、解析及び学習する余地があると見ています」
ーー新人ドライバー2人の評価は?
「最初のうちは頑張って走ってみてという感じでしたが、2人とも車体側に関してもエネルギー・マネジメントに関してもフィードバックはかなりしっかりしています。ハートレーは(WECで)ポルシェに乗っていたせいもあると思うんですが、『エネルギー・マネージメントなんかはこういうのはどう?』って提案してくれています。我々としても今年のクルマはパッケージとしてどういう戦闘力があり、どう使うか、どう予選でタイムを出すのか、ということは前半に勉強してきたと思います」
ーーエネルギーの使い方も成績に影響します。
「回生したエネルギーはどこで使うかということですが、走行の中で、ココは切れるとか、ココは要らないから取っちゃえとか……。当然、去年までの経験を含めてやっていますが、実際に走った時にクルマが良いからここはいけるからここでパワー使いたいとか、ここはクルマが駄目だからせめて抜かれないようにしておけばいいとか、競争相手との駆け引きの中で最終的なところはファインチューニングを現場でするようにしています」
ーーしかし、ガスリーに比べてハートレーはやや苦戦しています。
「2人を比べると、ハートレーの方はアクシデントがちょっと多いですね。ガスリーもスタート直後のアクシデントはあるのですが、これは予選でスタートポジションを安全圏に持って行けないというのが要因のひとつなのかなと思います。トータル・パフォーマンスとして今の勢力図でいうと3チームは抜けていますので、その直後のポジションを確保出来るようなところに持って行けたら良いと思っています」
ーー夏休みは開発作業は休止でした。
「チームには夏は作業をしてはいけないというルールがあるのですが、エンジン・マニュファクチャラーには規制がなく、日本のさくらでは何をやってもいいんです。チームはシャットダウンするので、ここ(ミルトンキーンズのホンダ前戦基地)も同様にシャットダウンしました。でも、さくらでは継続的に現行レギュレーションに対する開発を行っています。我々からすればトップチームのキャッチアップになりますが、そのための技術を絶えず開発しているということです。個々のパーツの性能が十分でないと、システムとしてのトータル・パフォーマンスがでませんので……。でも、ある個所を頑張ると他の個所で信頼性が落ちるというようなことがあるので、そのバランスを見ながら対応するということですね。まあ、一歩一歩と言ったらなんですが、見極めながら進めている感じですね」
ーー開発は細部まで行うのですか?
「コンポーネントから何からあらゆるものを見直しています。サプライヤーさんまで変えることはありませんが、良いものを持ってきてくれるところの製品はいつもテストをさせてもらっています」
ーートップチームに対して、ホンダの弱点は何ですか?
「我々はエンジン自体の性能でも負けていると思っています。ですから、エンジン本体の性能の限界はまだまだ先にあると思って開発しています。最大のポイントは燃焼です。エンジンは基本的にエンジンですから。今のレギュレーションでは燃料流量制限が入っているので、使える燃料量は一緒ですが、そこからいかに多くの出力を出すかということです。それにはリーンでの燃焼が一番大きな課題になってきます。とはってもエンジンなので、フリクションだったりウエイトだったり、トータルでロスを減らして性能を上げるということです」
ーー燃焼はいつの時代でもエンジンの要ですね。
「リーンにし過ぎるとノッキングが出ますが、そこはバランスです。今のPUにはMGU-Hが着いていますので、エンジン側で頑張っちゃうと、Hからエネルギーが取れないということになります。そのバランスでベストなところを見極めています。それは根本的なターボの設計だったり、エンジンそのものの設計だったりというところが起因してきます。H側だけ頑張ればそれですむという話ではなく、その辺もまたバランスを見ながら……というのは難しいところです」
(以下、2回目に続く)
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