2019年のジュネーブ自動車ショーは、技術の面ではEVが目立ち、デザインの面では自動運転を前提にした斬新なスタイルが印象に残った。そうしたなか、独特の個性が光っていたのはイギリスのクルマだ。
(延期が決まったとはいえ)EU(欧州連合)脱退に揺れるイギリスであるが、いや、それだけにというべきか、国際色の強いジュネーブショーでは各社、気合いが入っていた。マーケットを拡げるいいチャンスだからだと思う。
あのイスパノ・スイザも復活! スポーツカーは“電気”で面白くなるのか?──ジュネーブ国際自動車ショー2019リポート【第22弾:EVスポーツカーたち】
ご存知のとおり、イギリスには、ロールス・ロイスやベントレーといった高級車や、マクラーレンやアストンマーティン・ラゴンダといったスーパーカーなど、他の追随を許さないブランドも多い。
これらのブランドが送り出すクルマのユニークな点は、新しい部分と古い部分が混在している点だ。とくに内外のデザインには、それが顕著だ。
ベントレーが発表した「コンチネンタルGT ナンバー9エディション・バイ・マリナー」は好例だ。ベントレーの創業100周年に合わせて、100台限定で製造・販売されるこのモデルは、最高出力635psの6.0リッターW型12気筒エンジンを搭載し、4輪を駆動する高性能車だ。大きな特徴は、ミュリナーのコーチワークにより、丹念に手作業で仕上げられたインテリアだ。
限定車のルーツは、1930年のル・マン24時間レースに出走した4.5リッター直列4気筒エンジンを搭載吸する「ブロワー・ベントレー」だ。“ナンバー9”は、ベントレーボーイズと呼ばれたドライバーのひとり、サー・ヘンリー・ラルフ・スタンリー・ティム・バーキン(1896~1933年)のエントリー番号である。
「ベントレーのアイコニックなレーシングカーにインスパイアされたモデルです」。ショー会場で、セールスとマーケティングを担当する取締役のクリス・クラフト氏は述べた。
2019年で創業110年を迎えるモーガン・モーターカンパニーも興味ぶかい新車を発表した。「プラスシックス」と呼ぶモデルだ。車名の「シックス」が表すとおり、最高出力335psを発揮するBMWの3.0リッター直列6気筒ターボエンジンを搭載する。
剛性を従来の2倍に高めた新開発のプラットフォームを持つ。また、車両重量は1075kgと軽量だ。静止状態から100km/hまでに要する時間はわずか4.2秒と、高性能スポーツカーと同等のパフォーマンスを有する。
2019年で創業61年を迎えるジネッタ・カーズは、スーパースポーツ「アクーラ」を発表した。ジネッタによるとこの車名は「ロシア語でサメ、あるいはアクーラ型原潜をあらわす」という。
アクーラのスタイルは1970年代のスポーツカーを思わせる。炭素素材で出来たボディは1.1トンと軽量だ。シャシーは、ジネッタ・カーズが研究・開発し続けてきたLMP3クラスのレーシングマシン(やはり展示があった)の技術を応用しているという。
軽量ボディに搭載されるのは、最高出力600psを発揮するV型8気筒エンジン。このハイパワーエンジンをフロントミドに搭載する。
1959年発表のオリジナル・ミニをいまも作り続けているデイビッド・ブラウン・オートモティブも興味深い。
同社が手がけているプロダクトは、往年のアストンマーティンを彷彿させる「スピードバック」と、クラシック・ミニのシャシーやエンジンなどをリメイクした「ミニ・リマスタード」だ。
「ミニ・リマスタードはつねに高い人気です」と、担当者は述べる。価格はオーダー内容にもよるが、最低でも日本円で約800~1000万円するものの、もし日本へも導入されたら高い人気を集めそうだ。
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