どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Masanobu Ikenohira(池之平昌信)
市販プロトタイプ試乗記でも述べたとおり、ヤリス・クロスは欧州Bクラス市場を主ターゲットに開発されたヤリスを母体に発展したコンパクトSUV。
ホイールベースは10mmしか違わないが、リア・オーバーハングの延長と高全高化により後半部を中心にキャビンを一回り拡大している。
ヤリスの後席は男性が長時間過ごすには余裕がない。寸法だけでなく、視覚的圧迫感も強い。荷室は奥行き幅共に日常用途向け。
ヤリス・クロスならば4名乗車プラス荷物で、悠々とは言わないまでもファーストカー用途に対応できる。後席を収納せずにゴルフバッグ2本を積載できるのは大きなメリットだ。
最低地上高は170mm。SUVとしては少なめだが、ハードクロカンを除けば問題はない数値である。
4WDシステムはヤリスと共通ハードを用いるもののヤリス・クロス用に悪路用制御モードを採用。コンパクトSUVではかなり悪路走行を配慮した設計だ。
基本はアウトドア趣味も楽しめるコンパクトSUVだが、キャビン実用性に優れたスモール2BOXでもある。
アウトドア趣味がなくても、ヤリスのキャビンでは物足りないと考えるユーザーにも見所が多く、相性のいい適応用途が広いモデルである。
どんな感じ?
サーキットでのプロト車試乗の印象に比べると乗り心地は硬めに感じられた。
プロト車試乗時も一般用途想定の速度で走らせたりしたが、公道はサーキットほど路面状況がよくない。とはいえ、その硬さは汎用性向上のための良識の範疇。
ヤリスより約100kg重い車重だが、それでも1.1t級であり、4名乗車と荷物で後輪荷重が大きな状況でも十分な操安を確保するための備えである。
例えばヤリスの硬さがスポーティな演出なら、ヤリス・クロスは実用のポテンシャルアップなのだ。
硬めといってもヤリスほどではなく、ロール入り等々のサスの動き出しは滑らかである。急激な荷重変化でもストローク速度を抑制しているので収束性もいい。
うねりのある高速コーナーでも挙動も方向性も安定しているし、速度やコーナー半径による操縦性の変化も少なめ。
重質な味わいは車格相応のレベルだが、運転感覚も乗り心地も安心感がある。この辺りは最近のトヨタ車のフットワークに共通した美点である。
ガソリン仕様 3気筒/高速性能
ガソリン車/ハイブリッド車ともに搭載エンジンは、1.5Lの3気筒ダイナミックフォースエンジン。低中負荷域の応答性とドライバビリティ、燃費のよさが特徴である。
ヤリスより1割近く増加した車重が気になるところだが、実用動力性能については車重増の悪影響をほとんど感じなかった。
ガソリン車のCVTの変速比は、タイヤ周長を含めた総減速比でヤリスとほぼ同じ。
しかし、100km/h平地巡航回転数は、メーター読みで約1900rpm。緩加速でのダウンシフト・タイミングも早く、ヤリスよりも回し気味の変速制御。
急加速を除けば4000rpm以下で済ませるので無駄回し感や非力感はないのだが、トルクで引っ張っていく感覚は減少している。
ただし、3気筒の爆発間隔は4気筒の25%減。爆発間隔では3気筒の2000rpmは4気筒の1500rpm相応。
エンジンフィールのパルス感は強くなるものの、コンパクトSUVとしては高速域の余力感もトップクラスだ。
HV仕様 好印象/悩ましき点
ハイブリッド車は、ガソリン車よりも1ランク上の力強さ。細かなアクセルコントロールに対する追従性もよく力感溢れるドライバビリティ。
だからといって、瞬発力強調などの余計な演出がないのも好感が持てる。
興味深いのはエンジン回転数管理。エンジン稼働時はガソリン車の巡航回転数よりも高め。
エンジン騒音が低く保たれ、頻繁にエンジン停止(電動走行)するのでゆとりあるドライブフィールなのだが、従来のトヨタ1.5Lハイブリッドより制御がシリーズHV的になった印象を受けた。
重量増のハンデを感じるのは燃費。
車載計の簡易燃費計測では、都市高速でWLTC高速モードの数値とほぼ同じ数値。ヤリスより1割以上低下している。
SUVとしては圧倒的な低燃費だが、実用2BOXとしてヤリスからのステップアップを考えているユーザーには悩ましい点である。
4WD性能の評価は?
4WDシステムはガソリン車が電子制御カップリング式、ハイブリッド車がEフォー(E-Four)を採用。
Eフォーの後輪駆動ユニットはGA-Cプラットフォーム以下に採用する小出力誘導モーター型。後輪駆動を発進時のアシストに限定したいわゆる生活四駆タイプである。
トヨタ・スモール&コンパクトでは標準的だが、パワートレインとブレーキ式LSD制御の統合制御モードによりラフ&オフロードの踏破性の向上を図っているのが特徴である。
ガソリン車にはマッド&サンドとロック&ダート、ハイブリッド車にはスノーとトレイルが設定され、各モードの前者は駆動トルク制御とブレーキ式LSDの効きが穏やか、後者は強くメリハリよく制御される。
片側ローラーのスプリットμ路や対角輪が浮くようなモーグル路での発進を試してみたが、ノーマルモードでは両モデルとも空転スタック。
ハイブリッド車のスノーではタイミング次第、同トレイルとガソリン車のマッド&サンドはちょっと苦労しながらも問題なく、ガソリン車のロック&ダートは危なげなく、という結果。
また両モデルとも前後進で作動するDAC(緩降坂制御)を装備。ガソリン車なら中級クラスのオフロードコースは踏破できそうだ。
「買い」か?
価格設定は、プロトタイプ試乗記での価格予想なら「買い得」レベル。市販モデルを公道で乗ってもその印象は変わらない。
気になっていたハイブリッドの4WDシステムの踏破性もSUVとして十分でないにしても、予想以上。
安全&運転支援機能はクラス水準を超えているし、高速ツーリング適性も良好だ。コンパクトSUV狙いなら筆頭候補である。
ならばヤリス・クロスの何を選ぶか? はけっこう悩ましい。
メーター周りの高級感が「Z」とそれ以外では大差。前席シート仕様設定のグレード間差が大きい。
乗り心地の質感はハイブリッド車、4WD車のほうが多少ながら優れる。悪路踏破性を除けばハイブリッドZの4WDがベストだが280万円超。
パワートレインの価格差は約37万円、駆動方式は約23万円なので、同グレードでもガソリンFFなら60万円安。
実用コスパでFFのガソリンG、SUVらしく使うなら同4WD、質感と余力と先進感ならハイブリッドZ等々。予算建てと投資配分の難しいクルマである。
試乗車スペック(ガソリン仕様)
ヤリス・クロスZ(カッコ内は4WD)
価格:221万円(244万1000円)
全長:4180mm
全幅:1765mm
全高:1590mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費(WLTC):18.8km/L(17.4km/L)
CO2排出量:123g/km(133g/km)
車両重量:1140kg(1230kg)
パワートレイン:直列3気筒1490cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:120ps/6600rpm
最大トルク:14.8kg-m/4800-5200rpm
ギアボックス:CVT
乗車定員:5名
試乗車スペック(ハイブリッド仕様)
ヤリス・クロス・ハイブリッドZ(カッコ内はEフォー)
価格:258万4000円(281万5000円)
全長:4180mm
全幅:1765mm
全高:1590mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費(WLTC):27.8km/L(26.0km/L)
CO2排出量:84g/km(89g/km)
車両重量:1190kg(1270kg)
パワートレイン:直列3気筒1490cc+モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力(エンジン):91ps/5500rpm
最大トルク(エンジン):12.2kg-m/3800-4800rpm
最高出力(モーター):80ps(リア:5.3ps)
最大トルク(モーター):14.4kg-m(リア:5.3kg-m)
ギアボックス:電気式無段変速
乗車定員:5名
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みんなのコメント
あれ程キックスを燃費悪い、4WDじゃないと叩いてグレード迷ってたら信者凄絶バカ。
安い179万のグレードはSUVのくせに2WDガソリン車www
開発費無駄だし設定する意味もない客寄せ糞グレード。
まあ貧乏人にはハイブリッド高すぎて迷うのも仕方ないか。笑