際立つスタイリング。これぞ本気のAMGのBEV!
メルセデスは高級車の中心、「重いクルマ」を動かすことがとても上手い。名車570Kや600プルマンから、最新のマイバッハまで、とにかく大きく重い高級車こそがブランドの中心なのだから当然だ。重いクルマはメルセデスの伝統。AMGでもそれは変わらない。EQS53の車重は2670kgに達する。
さらに個性を主張! 電動化時代に対応したAMG、近未来戦略【CD取材ノート】
それにしてもEQSのデザインは際立っている。これまでのSUV系EQシリーズは既存の内燃機関車からエンジンを取り去って電気モーターとバッテリーを積んでいた。いってみれば派生モデルにすぎなかった。だがEQSは違う。メルセデスにとっては正真正銘「本気のBEV」、電動車専用設計のプラットフォームが使われている。メルセデスが「ワンボウ」と呼ぶワンモーションシルエットは、高級車らしく見えるかどうかは別にして、「未来的」以外の何ものでもない。
車名の末尾はS。つまりSクラス相当(=フラッグシップ)だ。ラインアップはEQS450+に加えて、AMG初のフル電動モデル、EQS53・4マチック+が設定された。
フロア下にはなんと107.8kWhという大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。AMGの53は前後に電動パワートレーン「eATS」を積み、システム出力658ps(484kW)を誇る。満充電での航続可能距離は、WLTCモードで601km。450の700kmには劣るものの、実用上は十分な走行レンジを確保している。
度肝を抜くパフォーマンス!しかも安心感抜群
パフォーマンスは鮮烈である。試乗時に全面ディスプレイ、MBUXハイパースクリーンに気を取られていたこともあり、アクセルペダルを不用意に踏み込んでしまった。450がBEVにしては大人しい制御だったので油断していたというのもある。まるで違う圧倒的な加速フィールに度肝を抜かれた。
といっても、「加速ダッシュ命」のモデルとは違う。出力コントロールはきめ細やかで、しかも前後パワー配分も精密。つまり、恐怖心はない。眼前に広がる「新しい景色」を楽しみながらスピードの伸びを味わっていられる。
乗り心地は450に比べるとはっきりと硬質。コンフォートモードでもしっかりしている。低重心が生むフラットライドフィールは印象的で、クルージング時の安心感はこのうえなし。それでいて自由に動かせる感覚がつねにある。フロントの駆動制御が心強く、そうそう簡単に姿勢を崩すようなことはなかった。ドライバーズカーとして、とても優秀なフルサイズBEVだ。さすがAMGである。
最大9度まで切れるリアアクスルのおかげで、小回りが利くことにも驚かされた。450よりも街中での使い勝手はよく、さらにあらゆる場面において安定感ある走りの実現に寄与している。
EQS53は、驚きのスタイリングから新感覚のインテリア、そして精緻なパフォーマンスまで高い完成度だった。久しぶりにメルセデスの「真剣」を味わうことができた。
メルセデスAMG・EQS53・4マチック+主要諸元
グレード=EQS53 4マチック+
価格=2372万円
全長×全幅×全高=5225×1925×1520mm
ホイールベース=3210mm
トレッド=フロント:1660/リア:1655mm
車重=2670kg
モーター型式=EM0031(交流同期発電機)
モーター最大出力=フロント:174kW/4858~6937rpm/リア:310kW/4918~6886rpm
モーター最大トルク=フロント:346Nm/0~4858rpm/リア:609Nm/0~4822rpm
一充電走行距離(WLTCモード)=601km
交流電力量消費率(WLTCモード)=221Wh/km
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池(BT0013)
駆動用バッテリー総電圧=396V
サスペンション=フロント:4リンク/リア:5リンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:275/40R21/リア:275/40R21+アルミ
駆動方式=AWD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.3m
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