マルチフューエルストーブならば、白ガスと赤ガス、どちらも使える
今回のお題は「赤ガス使用可能なアウトドアギア」だが、具体的には「マルチフューエルストーブ」と呼ばれるモノのことである。「ストーブ」と言っても暖房器具のことではない。アウトドア用の調理用可燃器具、別名「バーナー」のことだ。
アウトドアで使われる燃料に白ガス=ホワイトガソリンというものがあるが、赤ガス=自動車用ガソリンでも使えるストーブが存在する。
「ハイオク指定の車両にレギュラーを入れると壊れる?」間違えて入れちゃった時の対処方法は!?
最近の大型バイクはハイオクガソリンを使うモデルも少なくないが、僕が乗っているバイクは全てレギュラーガソリン仕様なので、キャンプ機器の燃料の共通化という意味もあって、レギュラーガソリンが使えるストーブとランタンを愛用している。
バイクのガス欠対策にもなる!
実は、燃料の共有化には調理器具にもバイクと同じ燃料を使えるということの他に、もうひとつの理由がある。それはストーブ用の燃料ボトルを満タンにしておけば、少量ながらも最終保険の意味の予備タンクを持っているということであり、つまりはバイクのガス欠対策だ。たった2Lであっても、とりあえず日本なら次のガソリンスタンドまでは、なんとか行けるであろうから、というのがその理由だ。
コックをリザーブにしたのを忘れて、この燃料ボトルのおかげでことなきを得たこともある。まあ、忘れっぽい人間の保険の話と言ってしまえばそれっきりなのではあるけれども。
プレヒートを必用としない仕様や、ハイオクを使えるモデルなど、タイプはいろいろ
レギュラーガソリン対応のストーブはMSR ウィスパーライトインターナショナル、オプティマス NOVAなどいくつかあるが、僕が愛用しているのは新富士バーナーというメーカーが出しているSOTO MUKAストーブだ。
これはガソリンストーブでありながら、ガスストーブと同じほどの使いやすさを目的として開発されたストーブで、デビュー当時画期的なモデルとして大評判になった。その後新富士バーナーでは様々なストーブをリリースしているが、MUKAストーブの人気は少しも衰えていない。
何が画期的であるかというと、分離型ガソリンストーブの多くは気化部分を温めるために少々面倒な(慣れれば別になんということもないのだが初心者は結構ビビる)プレヒートという手順が必要になるのだが、このMUKAストーブはポンピングによる燃料タンク内の加圧のみでプレヒートを必要とせず、着火から安定までの時間も驚くほど早いのだ。まさにガスストーブと同様の使いやすさと言える。
唯一と言える弱点はハイオクガソリンが使えないこと。ハイオクガソリンに含まれる添加物のせいでノズルやフィルターが詰まりやすくなってしまうのだ。後で語るがハイオクガソリンが使えるストーブもある。ハイオク仕様のバイクに乗っている人はそちらを使うといいだろう。
ガスストーブと違い、空き缶は出ないし、使い切りを意識させられることもない
さらに言えばガソリンストーブの長所は、ガスストーブと違ってガスの空き缶が出ないこと。ガス缶はビールの空き缶などと違って使い切らなければ捨てられないという欠点があり、この使い切るのがまたなかなか厄介だし、ガス欠を心配するならば、さらに数個のガスカートリッジを持って出かけなければいけなくなってしまう。ガソリンストーブはこのガス缶問題からも解放されているというわけだ。
問題は「燃料の補給」、あの事件のせいで……
ではガソリンスタンドで携行缶に給油できるのか、という問題だが、2019年以前は普通にできていた。しかし、それ以降は難しくなってしまった。最近のガソリンスタンドでは「携行缶への給油はできません」「自動車、バイク以外への給油はご遠慮ください」といった張り紙をしているスタンドが多い。僕の知る限りセルフのスタンドでは完全にダメである。その原因は「京アニ」こと京都アニメーションへの放火事件によるものだ。
知っている人も多いと思うが、ここでもう一度その概要を記しておこう。2019年7月18日、アニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオ(京都市伏見区)に当時41歳の青葉真司容疑者が侵入、ガソリンを撒いて放火、36人が死亡、33人が重軽症を負うという大事件が起きた。
彼は犯行前にホームセンターで携行缶を購入し、現場付近のガソリンスタンドで「発電機に使う」と話して、ガソリンスタンドの係員はそんなことが起きるとは露にも思わず、当然の対応として給油を行なった。
この事件をふまえて、2019年12月20日に総務省消防庁は「危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令」を公布。ガソリンを販売するため容器に詰め替えるときは、顧客の本人確認、使用目的の確認及び販売記録の作成を行なうことが2020年2月1日に施行され、以下の内容を全国のガソリンスタンドに通達した。
(1)ガソリンの容器詰替え販売における本人確認など
(2)セルフ給油取扱所におけるタブレット端末などによる給油許可など
(3)給油取扱所における屋外での物品販売など
また、携行缶への給油は購入者ではなく従業員がおこなう決まりとなった。(2)は端末使用によって給油の許可を出すということだが、従業員が給油を行なう決まりのため、人員不足もあり、これによって実質的にセルフ給油所では携行缶への給油が不可能になってしまったのだ。
セルフ給油所で購入者が勝手に携行缶に給油しているのが確認された際には販売は直ちに停止され、時によっては警察に通報されることにもなりかねない。厳に慎まなければいけない事象になってしまったのだ。
このようにしてセルフの給油所では携行缶への給油はできなくなってしまっているし、有人の給油所でも身分証などの提示と使用目的などの記入という段取りを経て、係員に携行缶を渡して給油して貰わなければいけなくなっているのが現状だ。また、携行缶には規定があって新富士バーナーでも750mlの小型携行缶をリリースしているが、ストーブに装着する燃料ボトルは携行缶ではないためスタンドでの直接の給油はできない。
キャンプに使うガソリンは、バイクのタンクから抜けばよい
では、ガソリンストーブの燃料ボトルへの給油はどうするかという問題だ。昔のバイクは燃料タンクの下側にオン/オフ/リザーブのコックがあって、その下にホースが繋がっていてキャブレターへと燃料を送るシステムになっていたから、ストーブの燃料ボトルへの給油もこのホースを外して行なっていた。
このホースの取り外しが面倒だと思う人の多くは、ゴムやビニールのホースをバイクの燃料タンクに入れて、ホースの逆側を口で吸い、ギリギリのところで口を離すという極めて危険なことをやっていて、当然のようにガソリンを飲みかけた人も多い。実を言えば僕もそのうちの一人である。実はこんな危ないマネをしなくても長めのホースをバイクの燃料タンクの中に入れてから逆側を指で塞いだ状態で引き出し、下までおろせば同様のことができるのだが、それを知ったのは数回苦い経験をしてから後の話である。
また、自動車の緊急ガス欠対策用品として手動ポンプも市販されているので、そちらを使うのもいいだろう。タンク上の給油口から抜くのであれば、燃料コックのないバイクでも問題ない。
ガソリンと使用機器の特性をよく知り、適切に使うのが安全でいい
ホワイトガソリンやレギュラーガソリンを使用するストーブの使用で気をつけたいことを挙げておこう。まずは燃料ボトルの口はきちんとしめられているかどうかの確認をすること。パッキングは劣化していないかどうかのチェックも大切だ。
暑い時期は気化が進むので時々ボトルの口を緩めてガスを抜くこともした方がいい。この時はガソリンが吹き出すこともあるから十分な注意が必要になる。燃料が手や衣服についた場合には完全に気化してから着火作業に入ること。テント内では決して使用しないこと。火災の原因になるだけでなく、燃焼時に発生する一酸化炭素のおかげで死に至る。
ハイオクも使用が可能なモデルもある!
最後にハイオクガソリンを使えるストーブはないかという問題だが、MSRのウィスパーライトインターナショナルとXGK、オプティマスのNOVAはハイオクガソリンも使用が可能だ。ちなみにXGKとNOVAは灯油、ディーゼルオイル、ジェット燃料と、ほとんどの液体燃料が使用可能となっていて様々な軍や極地遠征隊でも使用されている。
レポート●鈴木アキラ
写真●新富士バーナー(SOTO)/モチヅキ(MSR)/スター商事(オプティマス)
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みんなのコメント
コールマン・MSR・SOTO、ガソリンバーナー大好きだったのに最近休眠中。ワンシーズ赤ガス使用した後、分解して掃除してた頃が懐かしい。