2024年シーズンで9年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄代表。アメリカに拠点を置くハースのホームレースのひとつであるマイアミGPでは、ニコ・ヒュルケンベルグがスプリントで入賞を果たした。ヒュルケンベルグはその後の予選でもトップ10入りの速さをみせたが、日曜の決勝レースでは2ストップ作戦に切り替えざるをえず、入賞には届かなかった。
またマイアミGPの前にはF1コミッションのミーティングが行われ、小松代表もこれに出席。あるテーマに関してはハースが標的になることもあったが、各陣営の間で妥協点を探して議論が行われたということだ。そんなマイアミGPの週末を小松代表が振り返ります。
ヒュルケンベルグ「レース前半はグリップ不足に苦しみ、ペースが遅すぎた」:ハース F1第6戦決勝
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2024年F1第6戦マイアミGP
#20 ケビン・マグヌッセン スプリント予選14番手/スプリント18位/予選19番手/決勝19位
#27 ニコ・ヒュルケンベルグ スプリント予選10番手/スプリント7位/予選9番手/決勝11位
マイアミGPは2戦連続のスプリントフォーマットの週末となりました。この週末、ケビンはあまり体調がよくない状態でグランプリを迎えたのですが、FP1はいいペースで、スプリント予選のSQ1でも5番手といいスタートを切りました。ただSQ2で2回ともアタックラップをまとめられず、そこから歯車が狂い始めてしまったように感じます。
スプリントレースではスタートで順位を上げて、ケビンはニコの後ろの8番手を走っていましたが、ニコとの差が開いてDRSを使えなくなってからはルイス・ハミルトン(メルセデス)にプレッシャーをかけられるようになりました。この時ケビンから「ニコをもう少しスローダウンさせて、DRSを使えるようにしてほしい」と言われたのですが、そうすると、もしケビンがハミルトンに抜かれた場合はニコもハミルトンからプレッシャーをかけられることになりかねないので、それを避けるためにもニコをスローダウンさせることはしませんでした。
それにニコの前ではダニエル・リカルド(RB)、カルロス・サインツ(フェラーリ)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)が争っていて、もし彼らに何か起きた場合はニコがさらに順位を上げるチャンスでもありました。
結局ケビンはDRSを使えなかったことでやや感情的になってしまったところがあるかと思います。コースオフしたことによってハミルトンの後ろにいた角田裕毅(RB)に抜かれてしまい、さらにはハミルトンがピットレーンでのスピード違反によるペナルティを受けて順位を下げたことで、選手権を争うRBの角田の順位をさらにもうひとつ上げることに繋がりました。
ケビンとはその後落ち着いた時に、ペナルティがどういう状況で出されているかも踏まえて今後のアプローチについて話しました。サウジでの彼の走り方は、角田を抜いた際にコースオフしたこと以外は評価されるべきです。しかし、今回は状況が大きく違いました。イモラでは彼本来の実力を発揮してくれると思います。
スプリントで入賞したニコは、その後の予選でもQ3に進み、決勝レースを9番グリッドからスタートしたものの、入賞には届きませんでした。ミディアムタイヤでスタートし、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)、ランス・ストロール(アストンマーティン)に反応する形で12周目にピットインしハードタイヤに履き替えました。後ろのハミルトンと戦っていてタイヤもいい状態ではなかったので、第1スティントを伸ばすことはあまり考えていなかったです。
第2スティントで使用したハードタイヤのペースが想像以上に悪かったのも、入賞を逃すことになった理由のひとつです。ニコと反対にハードでスタートしたケビンのペースも同様によくなかったので、それを見ても、メルセデスとは戦わずニコをミディアムでもう少し長く走らせたほうがよかったのではないかと今は考えていますが、レースですからなかなか難しいところです。
ハードのペースが悪かったので、ニコは結局セーフティカー中にもう一度ミディアムに履き替えることにしました。2ストップというコンペティティブではない戦略にはなるものの、少なくとも順位を取り戻すチャンスは生まれるだろうということで決断しましたが、これは正解でした。ニコはすでに抜かれていたピエール・ガスリー(アルピーヌ)を抜き返し、10番手のエステバン・オコン(アルピーヌ)に近づくこともできましたが、追い抜くまでには至りませんでした。
■F1コミッションでは“2026年の財務規則”などが大きなテーマに
前戦中国GPの後、F1コミッションのミーティングがあったので、今回はF1コミッションについても少し触れようと思います。
F1コミッションというのは、FOM、FIAとF1チームの代表が集まり、F1に関するハイレベルな議題を議論し、決定を下す会議です。F1には技術、スポーティング、財政、パワーユニットなどに別れて全チームとFIAが集まる様々な会議があります。F1コミッションはこれらのすべての会議の上にくるもので、もっと大きな観点から単純に言えば「これからのF1をどうやってもっとよくしていこうか」ということを話し合う場です。基本的に各チーム代表10名とFOM、FIAを含め、大体総勢20名ほどで行われます。
今回の大きなトピックは2026年の財務規則でした。F1では2021年からバジェットキャップ(予算制限)が導入されていますが、チームの支出にはこの制限に含まれないものもあります。それが非常に複雑で、実際にはチームがいろいろな抜け道を使って制限以上にお金を使っています。そのため規則を簡素化し抜け道をなくすための話し合いが進められており、いい方向に向かっています。
もうひとつはTRC(Transferable components)です。現在の規則では他チームから一部のパーツを購入することが許されており、たとえばハースはフェラーリからサスペンションを購入していますが、それをできないようにするという動きがあり、複数のチームから意見が出ました。
これで標的になるのがうちやRBで、僕も今回のミーティングで反対意見を主張するチームの代表者たちと話し合いました。この件についてはまだ結論は出ていませんが、現行の規則のままでいいのか、何を重要視するのかを含めて妥協案を探っているところです。
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