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BMW GS40周年車「元ネタ」は80年のR80G/Sではなく、なぜ87年のR100GSが選ばれたのかを考える

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BMW GS40周年車「元ネタ」は80年のR80G/Sではなく、なぜ87年のR100GSが選ばれたのかを考える

2020年11月にBMW MotorradはGSモデル生誕40周年を記念して、R1250GS/R1250GS Adventure(アドベンチャー)に特別モデル「Edition 40 Years GS」を発表しました。
日本では2021年1月に発売され、R1250GS「Edition 40 Years GS」が244万6000円~、R1250GS Adventure「Edition 40 Years GS」が254万2000円~となっています。

R1250GSとR1250GS Adventureの「Edition 40 Years GS」は、燃料タンクに排気量「1250」を記したグラフィックをイエローであしらい、シートはブラックとイエローの2トーンに。さらに前後のクロススポークホイールはゴールドに、ハンドガードもイエローとして車体全体でブラックとイエローのコントラストを楽しめる仕様です。

【写真22点】GS40周年記念車と歴代BMW GS系モデルを比較する

BMW GSファンではなくともそのインパクトに圧倒されてしまうGS40周年記念モデルは、GSの歴史を語る上では決して欠かすことのできない名車「R100GS」をモチーフにしたもの。その鮮烈なカラーリングから、ファンたちの間では「バンブルビー(Bumblebee=マルハナバチ)」との愛称で親しまれたR100GSは、R80G/Sから始まるBMW GSモデルの2世代目に当たる車両です。

そのR100GSとは一体どんなモデルだったのか。ここからはR80G/SからR100GSまでの流れをあらためて紹介します。

ビッグオフの源流であり、BMW GSの始祖 R80G/S(1980年登場)

R80G/Sの登場以前のオフロードバイクといえば、軽量な車体とハイパワーな2ストロークエンジンを搭載するトレールモデルが主流であり、4ストロークエンジンを搭載した大排気量のオフロードモデルは、70年代後半ではヤマハ XT500やホンダ XL500Sくらいしか選択肢がなかったと言えます。

読者の方の中には、500ccのトレールバイクに荷物を満載して、行く先々でオフロードも楽しむという方もいらっしゃるとは思いますが、排気量が大きくないモデルの場合では、500km、1000kmと淡々と距離を刻む高速道路での移動はなかなかの苦行ですよね。
きっと当時のオフロードライダーたちにとっても、それは同じだったはずです。

そうしたなか、BMWがR80G/Sで打ち出したのは、オフロードをしっかりと楽しめる性能を持ちながら、ロングツーリングでの快適な性能をも持ち合わせる「トラベル・エンデューロ」という概念でした。

「トラベル・エンデューロ」という概念を創出したR80G/Sの特徴

R80G/Sでは、800ccというゆとりを誇る排気量を持つボクサーエンジンと、長旅でもメンテナンスを必要としないBMW伝統のシャフトドライブ、本格的なオフロード走行も楽しめる大きなスプリングトラベルを持つ前後のサスペンションを採用。
さらに、たくさんの荷物を積載できるラゲッジシステムもオプションとして用意されていました。

1980年、R80G/Sが登場した際のドイツ語版カタログを見ても、「トラベル・エンデューロ」という概念が非常に強調されていることがわかります。
大きめの文字で書かれたメインコピーの“Lernen Sie jetzt eine Motorrad-Idee kennen, die viel mehr als einen Wunsch erfullen kann.”は、直訳すれば「ひとつ以上の目的を叶える、モーターサイクルの新しい概念を知ってください」というニュアンス。つまり、R80G/Sが「デュアル・パーパス」であることを示しているわけです。

BMW GSはパリダカで活躍、「トラベル・エンデューロ」の真価を証明

オフロード性能とロングツーリング性能の両立を目指したBMW GSの「トラベル・エンデューロ」という概念。それは、オフロードをメインとする長丁場の舞台を走りきる「ラリー・レイド」の世界で真価を発揮しました。
中でも伝説となっているのは、80年代のパリ・ダカール・ラリー(以下パリダカ)です。BMW GSはまず1981年と1983年に二輪総合優勝を獲得します。

1981年と1983年、BMWに優勝をもたらしたのはフランス人ライダー、ユベール・オリオール選手で、その後は四輪へ転向。三菱 パジェロでもパリダカ総合優勝を勝ち取り、二輪・四輪ともにダカールウィナーとなったオリオール氏ですが、2021年1月11日にCOVID-19によって68歳でこの世を去りました(亡くなったのは2021年のダカール・ラリー期間中のことでした)。

BMWはその後もファクトリーチームでパリダカへ参戦。ベルギー出身の元モトクロス世界チャンピオン、ガストン・ライエ選手の活躍もあって、1984年と1985年、パリダカを連続制覇しています。

現代のGSに通じる構成を確立したR100GS(1987年登場)

1987年にBMWはR80G/Sの後継モデルとなる「R100GS」を発売します。
GS 2世代目として刷新されたR100GSは排気量をほぼ1000ccフルスケールともいえる980ccへと拡大。
さらに、リヤスイングアームはR80G/S時代のモノレバーをさらに発展させた「パラレバー」に。また、スポークホイールながらもチューブレスタイヤの装着が可能な「クロススポーク」のホイールリムを前後に採用するほか、燃料タンクは容量26Lという大容量となりました。

お気づきの方も多いとは思いますが、現代のBMW GSシリーズにも通じる構成は、R100GSに時点でほぼ完成されていたといっても過言ではないのです。

最新BMWにも採用されるパラレバーやクロススポーク

デュアル・ピボット式スイングアームとなる「パラレバー」は、R80G/Sで採用された片持ち式スイングアーム「モノレバー」の発展型。R100GSで採用されたパラレバーでは、ドライブシャフトが収まるスイングユニットと平行するようにトルクロッドを備えて、シャフトドライブ特有のネガを軽減しています。

R80G/Sの時代から車体右側にレイアウトされていたスイングアームユニットは、2014年に水冷エンジンへとフルモデルチェンジした際に駆動系も見直され車体左側へ変更されましたが、この機構は現行のシャフトドライブモデルの多くに引き継がれ、熟成と進化を続けています。

「クロススポーク」と呼ばれる独自のスポークホイール構造もR100GSで初めて採用された装備です。
通常のスポークホイールではホイールハブからホイールリムの中心部(タイヤ内部)へとスポークが伸びていきますが、クロススポークでは独自のリム形状とすることでスポークエンドをタイヤ内部ではなく、ホイールリムの淵にレイアウト。タイヤとリムの気密性を保つことのできる革新的な構造のおかげで、スポークホイールであってもチューブレスタイヤの選択が可能となりました。

チューブレスタイヤが履けるということは、万が一タイヤがパンクしてもパンク修理が容易になるということ。
あらゆる道を走破するアドベンチャーバイクにとって、チューブレスタイヤが履けることは大きなアドバンテージなのです。

「アドベンチャー」のルーツ、大容量タンクのR100GSパリダカールを追加

R80G/S時代に約20Lだった燃料タンクは、R100GSでは26Lへと容量を大幅に拡大。航続距離を飛躍的に向上させていました。さらにR100GSには、R100GS Paris-Dakar(パリダカール)という34Lタンクを採用したモデルも存在していました。

ちなみに現行R-GSモデルのタンク容量はR1250GSが20Lで、R1250GS Adventureが30L。エンジン・テクノロジーの進化に伴って燃料消費率の低減が進み、かつてのような大容量ではなくとも航続距離が稼げるとはいえ、大陸を股にかけ冒険旅行には大容量タンクが不可欠です。

BMWファンからは通称「パリダカ」とも呼ばれるR100GS Paris-Dakarは34Lタンクのほか、大型フェアリングやクラッシュバー、パニアケースを備え、現行型まで続くGS Adventureシリーズの原点とも言えます。

今もBMW R100GSがリスペクトされる理由

このように、パラレバーやクロススポークホイールの採用、さらには現代のGS Adventureにも通じる装備を持つ「パリダカ」のラインアップなど、R100GSが各社のアドベンチャーモデルや現代のBMW GSに与えた影響は計り知れないものです。

クラシックGSというと、どうしても初代モデルであるR80G/Sがクローズアップされがちですが、R100GSはR80G/Sで実現したトラベル・エンデューロという概念をさらに発展させて、現代のアドベンチャーバイク=ビッグオフの礎を築いたマイルストーン的なモデルといって間違いないでしょう。
それからすると、R100GSカラーをまとうR1250GS、R1250GS Adventureの記念モデル「Edition 40 Years GS」は、40年以上に及ぶ歴史の中でも重要なモデルとして、GSファンからは一目置かれる存在になるかもしれません。

1980年登場のR80G/Sではなく、なぜBMWはGS40周年記念モデルの元ネタにブラックとイエローのR100GSを選んだのか──。
表向きはかつてのモデルに敬意を払ったとも言えますが、その裏側には「このセグメントを切り拓いてきたのは、ほかの誰でもなく我々である」というようなBMWの自負も見え隠れしている……そんな風に考えてしまうのは筆者だけでしょうか?

レポート●土山 亮 写真●BMW/八重洲出版 編集●上野茂岐

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