ランエボといえば泣く子も黙るスポーツセダンだが、ひとつだけ例外がある。ランエボIXに存在した「ランサーエボリューションワゴン」がそれ。いっけんビジネスワゴンにも見える外観だが、ナメてかかるとやけどは確実。その中身は知恵とこだわりの詰まった、まごうことなきランエボだった!
文/ベストカーWeb編集部、写真/三菱自動車
なめてかかるとヤケドするぜ!! 史上最速AWDワゴン高騰中!! ランエボワゴン伝説を語ろう
■チューニングカー並みのリア補強策
ランサーエボリューションワゴン
10世代24年に及ぶランエボの歴史は、2つの変異種を生んだ。ひとつはランエボVIIに設定されたオートマ仕様の「GT-A」、もうひとつがランエボIXに追加された「ランサーエボリューション ワゴン」だ。
なかでもワゴンは外観からしてまるで異なるランエボだけに、「突然変異」的な印象が強い。しかし開発陣はこの異形のランエボを生み出すために、セダンボディのランエボと寸分も変わらない知恵と情熱を注ぎ込んだ。
もともとランサーワゴンは、ランサーのFFモデルである「フィオーレ」の追加モデルとして、1985年に生まれた。その系譜は1992年にリベロが受け継ぎ、さらに2000年にランサーセディアへと引き継がれるのだが(※2003年に再びランサーと改名)、こいつを「EVO化」するとなると、ボディの剛性も強度も圧倒的に足りない。ご承知のとおりワゴン車はボディ後端に大きな開口部ができるため、ランエボの280psを4WDで受け止めるにはまるで歯が立たないのだ。
開発陣はどうしたか。いったんセディアワゴンであることを忘れ、既存のランエボIXから発想を組み立て直した。具体的にはフロントセクションまるごとと、そこから延びるフロアにそっくりランエボIXの骨格を使い、そこにセディアワゴンのルーフとサイドパネルをくっつけたのだ。
それだけじゃない。開発陣は応力のかかるABCD各ピラーとルーフの接合部をすべて補強したうえで、50か所ものスポット溶接増し打ちを実施、さらにリアサスの床回りに頑強なクロスメンバーを追加し、リアのショックアブソーバー取り付け部までがっしりと固めた。もはやチューニングカー並みのリア補強策である。
■ハンドリングはむしろセダンより上!?
リアの補強が重量バランス的なメリットも生んだ
執念の塊のような開発過程を経て、ようやくランエボ ワゴンは、ランエボの血統を受け継ぐ資格を得た。ボンネットの下に収まったのは、もちろん4G63型2L・MIVECインタークーラーターボ。トランスミッションはワゴンという用途を考え、6速マニュアルに加えて5速ATも用意された。エンジン出力は6速MT(GT)が280ps/40kgm、5速AT(GT-A)が272ps/35.0kgmだ。
ちなみに両車の違いは、フロントのナンバープレートの位置で判別できた。GTが向かって右にナンバープレートをオフセットしたのに対し、GT-Aはオーソドックスなセンター配置だったのだ。いっぽうランエボの誇りともいうべきブリスターフェンダーはワゴンにも踏襲されている。張り出したリアフェンダーはそのままボディ後端へと伸び、ルーバー調の樹脂パーツで末端が処理されている。
サーキットやワインディングに連れ出したランエボワゴンはどうだったか。車重がセダンの1390kgから1500kgへと増加していたため、単純なパフォーマンスでは「素」のランエボIXには敵わなかったが、リアセクションの補強が意外な恩恵を生み出した。ボディ後方が重くなった分、フロントヘビーだったランエボの重量バランスが改善され、操縦性という点ではむしろ望ましい特性が実現したのだ。実際、このランエボワゴンではスーパー耐久マシンも作られ、2007年には北海道・十勝で行われた24時間レースに参戦、クラス5位に入る活躍も見せた。
ランサーエボリューションワゴンは、現在でもマニアから熱い視線を浴びている。カーセンサーを見ると、2023年1月16日現在で34台の中古車が販売されており、価格も166万~529万円と強気の相場だ。人とはちょっと違ったランエボがほしい。そんな人には格好の1台といえよう。
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みんなのコメント
昔似たようなポジションの260RSも昔買ったことがある。
中身はまるっきりGT-Rなのでエンジンは2.7Lに、TO4Zタービンで650馬力くらいのバカ速ワゴンにした。
今って似たようなコンセプトの車ってあるんかな?
アウディのRSくらい?