8月27~28日にスラクストンで争われた2022年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第8戦は、序盤戦で車両火災に見舞われ困難なシーズンを過ごしてきた、シリーズ“復帰組”のダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が、予選ポールポジションからのレース1完全制覇を成し遂げ、終盤にして復活の今季初優勝。続くレース2では、僚友の王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)も“チームプレイ”の末に勝利を挙げ、選手権リーダーの4冠王者コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)に6点差まで肉薄する結果に。さらに最終ヒートではジョシュ・クック(リッチエナジー・BTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)も勝利し、23点差のランキング5位としてタイトル戦線に喰い下がる展開となっている。
スラクストンでの週末を前に、この高速トラックでの8月最終週が「今季最後のイベント出場になるかもしれない」と語っていたダン・ロイド(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・TradePriceCars.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)は、クラウドファンディングを活用した多くのファン支援パッケージに加えて、エクセラー8のメインパートナーであるブリストル・ストリート・モータースからも追加サポートの申し出を受け、まだ「修理費完済に向け追加の裏付け」が必要な条件付きながら、無事に「残る2戦への出場見通しがたった」ことをアナウンスした。
6月の大事故から復活優勝のドラマを演じたロイド「今季BTCC最終2戦を欠場する」可能性を示唆
「まだやるべきことは山積みだが、先週得たサポートのおかげで肩から重荷が取り除かれたと感じている。パッケージに対するレースファンの反応に完全に圧倒されたと言っても過言ではないし、彼らが僕に示してくれた信頼に非常に感謝している」と、関係者全員への謝意を語ったロイド。
一方、クプラ陣営として4台体勢を敷くチーム・ハードは、この1戦限りのスポット契約として、かつて名門ウエスト・サリー・レーシングで戦ったトム・オリファントを招聘した。
「イギリスには数週間滞在する予定で、パドックで友人や同僚に会うためスラクストンに来る予定だった。その幸運なタイミングでトニー(・ギリアム代表)から電話を受けたんだ」と、2021年最終戦以降は婚約者とともにオーストラリアで過ごしていたオリファント。
■「ポール獲得は僕らが成し遂げてきた進歩を示している」とカミッシュ
こうしてタレントが強化されたグリッドで迎えた週末は、シーズン序盤戦を牽引したトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・TradePriceCars.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)のプラクティス最速で幕を明けると、続くFP2ではBTCC400戦目を迎えたゴードン・シェドン(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が最速を記録。各セッションともFFホットハッチ勢優勢で進むと、予選ではクックのBTCホンダを退け、カミッシュのフォードが0.017秒差でポールポジションを奪っていった。
「本当に素晴らしい感覚、こんなにセンセーショナルなものだったなんて!」と、自身2020年のシルバーストン以来の最前列獲得となったカミッシュ。
「正直なところ、これがどんな感じか忘れてしまうことがあったよ。でも(前半戦の不振で)僕の選手権は終わっているし、どうアッシュ(サットンの愛称)を助けることができるかに集中しているにも関わらず、僕としては1回も頭(こうべ)を垂れたことはなかった。これは重要なことなんだ」と続けたカミッシュ。
「すべては自分の中にあり、ドライビングの方法を忘れたわけじゃないことをつねに意識した。クルマについて学び、新しいエンジニアとの関係を築くのに時間が掛かったが、ポール獲得は僕らが成し遂げてきた進歩を示している」
「ここは国内最速のトラックであり、コーナーのいくつかは6速ギアでほぼフラットアウト、マシンは大きく暴れ回る。この種のトラックではラップタイムを削り取るため、つねに限界に接し続ける必要がある。それが僕らの成し遂げたことであり、明日のレースでも再現できることを願っている」
そう語ったカミッシュの言葉どおり、ポールシッターは混沌としたオープニングラップを最大限に活用し、レース1での“ライト・トゥ・フラッグ”を成し遂げる。
まずフロントロウに並んだクックのシビックが出遅れると、2列目にいたサットンとFR最上位のジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)がホンダに襲い掛かる。
スリーワイドでアウト側に弾かれたクックは、続くコーナーでサットンとのポジション争いに敗れ、グラスエリアに飛び出し大きくポジションダウン。さらにその間隙を突いたシェドンがチャンピオンのサットンを出し抜き、フォード勢を分断する2番手を奪取する。
これ以降のポジション変動はなく、オープニングラップで2秒以上のマージンを得たカミッシュが圧巻のパフォーマンスでBTCCキャリア通算9勝目を飾った。
■サットンがBTCC出走200戦目を勝利で祝う
「良い結果を得るには、長い時間が掛かるように感じるものさ。面白いレースのひとつだったし、後続からのプレッシャーがないときは少し気を紛らわすこともできる。ギャップが詰まったと感じれば、どうやってリズムを取り戻すかも久しぶりに試すことができた。(3位のサットンと)ダブル表彰台を獲得できたので、週末の素晴らしいスタートになったね」と余裕のコメントを残したカミッシュ。
続くレース2もNAPAレーシングUKのエントリー名を掲げるモーターベース・パフォーマンスの勢いは衰えず、カミッシュとサットンがワン・ツー体勢を維持する。4周目には2番手のチャンピオンがシケインでミスを犯してコースを外れたものの、幸いシェドンとヒルの前で復帰することができ、ラスト2周のターン1でスロットルを緩めたカミッシュは、僚友にポジションを譲る“チームプレイ”を貫徹。サットンは自身のBTCC出走200戦目を勝利で祝うことができた。
「もしチームメイトが必要だとすれば、それはダンのような奴だ。彼はパフォーマンスを証明した週末に、僕のための走りをしてくれたんだ」と、僚友の献身に感謝の言葉を述べたチャンピオン。「スタートでファステストが記録できたから、背後のシェドンとヒルをバトルに誘い込む状況を演出しようと思った。そこで2台の勝負になってから『よし、今だ!』と思ってスパートした。ダンが(レース1で)必要としていた勝利を手にしたことも本当にうれしく思うよ」
一方、エースから謝意を伝えられたカミッシュも「素晴らしいレース2だった」と満足げな表情を浮かべた。「僕らはセカンドヒートでも前線からリードし、それを持ち帰ることに疑いの余地はなかった。勝利を譲ったことは正しい選択だったし、これが違いを生む(サットンの逆転タイトル防衛に繋がる)なら、すべて価値があるだろうね!」
週末最終ヒートのレース3は、この週末を通じて「グリップがない」と嘆くターキントンも含め、リバースポールを得たステファン・ジェリー(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)と2台のBMWがフロントロウに並んでスタート。しかし2列目にいたクックがオープニングでWSRのエースを仕留めると、2周目終わりにジェリーも仕留めてゲームセット。14周を走破してBMWを従える勝利を手にした。
これで選手権首位ターキントンが227点とし、以下222点のイングラム、221点のサットン、213点のヒル、そして204点のクックと続くオーダーとなったチャンピオン争いは、9月24~25日の第9戦シルバーストン、ナショナル・レイアウトで天王山を迎える。
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