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アルピナB8グランクーペ試乗 職人芸が薫るアルピナの頂点 同居する直進と旋回の妙

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アルピナB8グランクーペ試乗 職人芸が薫るアルピナの頂点 同居する直進と旋回の妙

ハイエンドモデルの風情

BMWアルピナに抱くイメージは人それぞれ。

【画像】職人芸薫るアルピナの頂点【B8グランクーペの内装/外装】 全105枚

個人的には3シリーズベースの4ドアリムジンこそ、このエクスクルーシヴなメイクスの「定番」だと考えている。

筆者がアルピナに触れはじめた時期がE36の頃だったからというタイミング的なものもあるのかもしれない。

だが今回、B8グランクーペをドライブして、その考えが初めて揺らいだのである。

現行のB8グランクーペは4ドアクーペであり、ひと世代前はB6を名乗っていた。エンジンは4.4LのV8、ホットインサイド・ターボで最高出力は621psに達する。

トランスミッションは8速オートマティック。アルピナらしく表現するならスイッチトロニックで、一方パワートレインは現行アルピナらしくAWDとなる。

試乗車の外装は慣れ親しんだアルピナグリーンだが、インテリアは明るめの2トーン・レザー(フルレザーメリノ)でオーダーされており優雅な雰囲気。ステアリングはさらに上質なラヴァリナレザーでトリムされている。

周知の事実だとは思うが、アルピナは「ニュルで速くてナンボ!」みたいなライバルたちと比べると、レーシーからラグジュアリーまでのカバレッジが広めだ。

中でも最高峰に位置するB8グランクーペはラグジュアリー寄り。

だからこの明るい内装色は、クルマの性格を熟知している人の選択に違いない。

今回は街中と高速道路を半々で走る試乗コース。普段づかいからアルピナの真骨頂であるハイスピードまでチェックできるはずだ。

同居する直進と旋回の妙

居心地のいい室内と、扁平タイヤを感じさせない乗り心地。

アルピナの特徴の1つはゆっくりと走っているようなシーンで「超高級、驚速車」のオーラを消せるところだ。

だからスピードを出すまでウズウズが止まらない、みたいなことがない。

もちろん渋滞に出くわしたら、BMWの特権であるハンズオフのACCが楽ちんドライブを担保してくれる。

ホイールベースが3m超えと知って警戒していたのだが、後輪操舵が思った以上に上手く小まわりを実現してくれる。

後ろを振り返るとリアシートの足元がはっきり広いのもロングホイールベースのおかげ。

だがやはりアルピナの真骨頂は高速道路だった。

エンジンが唸るわけでもなく、風切り音がうるさいわけでもなく、いつのまにか流れをリードしている。

ビシッと直進し、ピッチングの類がほとんど感じられないのは、件のホイールベースとまるで「ちょっとエアサス」みたいに感じられる絶妙なレート設定のスプリングとダンパーの妙だ。

もちろんB8グランクーペは直進一辺倒な頑固者ではない。

インターチェンジのカーブなどではひらりと軽快なコーナリングも披露してくれる。

後輪操舵は低速時は大きく曲がる逆位相、高速では安定重視の同位相が常識だが、むしろ定常的にコーナリングしている場合には後輪が逆位相なのでは? と疑いたくなるくらい舵角が少なく、しかしシャープに曲がっていく。

二兎を追ってどちらも得る、走りの部分はまさに万能選手である。

隠された部分に宿るチューニングの本質

B8グランクーペのスペックを色々と調べていて、このクルマのことがより好きになった。

エンジン関係で目に付くのはALPINAのロゴが小さく入った大きなインタークーラー、そしてV8エンジンのオイルパンはアルピナ自製のアルミ製だという。

後ろの方から車体下を覗けば、デフケースもアルミ製の大型フィンが付いたよく冷えるタイプになっている(M8にも似たものが付いていたので、これはアルピナ製じゃないかも)。

現代のエンジン・チューニングというとコンピューターいじってターボの圧上げて、みたいな手法が真っ先に思い浮かぶが、昔は違った。

まずベース車の弱点を強化しつつ、そこで生まれたキャパシティのぶんだけパワーアップを施す。

インタークーラーの効率を上げるのは負荷少なめの手堅いチューンだし、オイルの冷却に万全を期す手法は、カタログ上では誇りにくいが信頼性に効く。

B8グランクーペのベースとなったBMW M850iの最高出力は530ps。そこから91psを上乗せするための手法は驚くほど本質的なのである。

何しろアルピナはサーキットの1周が速いだけではだめで、アウトバーンでずっと最高巡航速度 (B8は324km/h)を保って走れなくてはならない。そのための創意工夫が、見えない部分に数多く含まれている。

BMW Mのエンジンを得てすこぶる元気なB3よりB8の方がアルピナの伝統に忠実? 

電動化の前に乗るべき1台があるとすれば、それはB8グランクーペだ。

アルピナB8グランクーペのスペック

価格:2557万円
全長:5090mm
全幅:1930mm
全高:1430mm
ホイールベース:3025mm
車両重量:2140kg
パワートレイン:V型8気筒4400ccターボ
最高出力:621ps/5500-6500rpm
最大トルク:81.6kg-m/2000-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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