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平川亮の「思ったより大変だった」トヨタGR010ハイブリッド初テスト。困惑したブレーキ、雨で得た感触

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平川亮の「思ったより大変だった」トヨタGR010ハイブリッド初テスト。困惑したブレーキ、雨で得た感触

 WEC世界耐久選手権に参戦するトヨタGAZOO Racingは第2戦明けの6月15~17日、ポルトガル南部のポルティマオでGR010ハイブリッドのテストを行なった。

 事前にTGRからアナウンスされたとおり、このテストでは平川亮がGR010を初ドライブしている。テスト前にはドイツ・ケルンのTGR-E(トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ。旧TMG)でシミュレーターテストも経験、その後テストに向けた期待も語っていた平川だったが、果たして初体験のル・マン・ハイパーカーはどのような感触だったのか。そして平川自身が切望する将来のステップアップに向けて、どのような経験を積むことができたのか。

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 テスト後、帰国し隔離期間中の平川に、リモートで話を聞くことができた。

 今回のテストは第2戦ポルティマオ8時間レースの翌々日、火曜日から3日間、1台の車両により行なわれたという。メキシコでのフォーミュラEに参戦するセバスチャン・ブエミを除くレギュラードライバー5名と平川、6名が参加してのテストとなった。

* * * * * *
平川亮:初日は午前4時間、午後4時間という走行枠があり、(小林)可夢偉さんと(ホセ・マリア)ロペスと僕、3人だけで乗りました。まずはクルマに慣れるために。自分は全部で30周くらいしたと思います。

──2日目以降は?
平川:2日目の朝からは34時間耐久テストでした。トラブルが出ない限りずっと走り続けるという、ル・マンを想定したものです。僕はそのなかでダブル・スティントを3回やったので、200周近くは走りましたね。

──とういことは、夜の走行も?
平川:はい。1回目の走行は朝、2回目が夜の11時とか12時くらいでした。3回目は昼になったんですけど、そこは雨の走行となりました。日本だと雨は珍しくないですけど、向こうはあまり降らないので、いい経験ができたと思います。

──GR010ハイブリッドの印象と、どのように慣れていったのかを教えてください。
平川:前のクルマ(TS050ハイブリッド)からは規則によってかなり車重が重くなり、パワーも少なくなっているし、ドライだとモーターが使える速度域も規制されているので、雰囲気は全然違いました。一番はクルマが重たいことです。あとは第1戦のスパでもブレーキロックして飛び出したりしていましたよね。そこからはだいぶ良くなったとは聞いてますが、まだそこのブレーキの制御がうまくいっていなくて、どうしてもフロントがロックしやすい部分があったり、思ったよりロックしたり、思ってないところでロックしたり、というのがありました。正直、最後までそこの感覚は分からなかった、というのが正直なところですね。

──規則が変わって制御も変わり、まだチームとして煮詰めている段階ということですね。
平川:はい。ロックしてフラットスポット作ってしまうと、ダブル・スティントも走りきれなくなってしまうので、様子を見ながら……という感じで走っていました。最後の雨はウエットタイヤの比較テストのような状態になったのですが、雨の中では感覚が掴みやすくて、最後にちょっと“分かった”かなという感じはしました。

──初日に30周程度ということでしたが、ニュータイヤでアタックする、みたいな状況は?
平川:基本、やってないですね。予選タイムはチームの中でも気にしていないですし、コンスタントに速いラップで走るのが目標なので。翌日のダブル・スティントとかを想定して走った感じです。

──平川選手の意見を反映してセットアップをしていく……という作業もなかったでしょうか?
平川:初日だけだと全然(クルマが)分からなかったというのが正直なところで、操作にも慣れなきゃいけないし、コースも……4年前に走ってはいるんですけど、そこから時間も経っていて思い出すのにも必死でしたし、全然そういうことを言える雰囲気でもなく。他のドライバーはレース(第2戦)もやっていたのでそこから続いていましたが、自分はテストからの参加なので追いつくのに必死でした。

──今年は他のドライバーもダブル・スティントが厳しいと語っていましたが、タイヤ2スティント目の感触はどうでしたか?
平川:スパでは結構大変だったようですが、幸いポルティマオは落ちがないサーキットで、そこは同じようなスピードで走れるので慣れやすかったですし、今回のテストでも問題視されていなかったです。どちらかというとブレーキとか、クルマのセッティングとか、いろいろな制御のセッティング作業をやっていた感じですね。

■テスト走行中、ピットから届いた“必要のない司令”
──レースウイークからチームに帯同されていましたが、いざテストで乗るとなったとき、緊張感はありましたか?
平川:いつもよりはあったと思いますけど、乗ってしまえば、別に「緊張して何かができなくなる」とかはなかったですし、普通に落ち着いてやれました。

──念願のハイパーカーを「楽しめる」という状況ではなかったのでしょうか。
平川:いろいろと(操作など)やることがあったりとか、ブレーキのこととかも想定外で、1~2周目でフラットスポットができたりとかもあって、最初は全然自分の中でうまく走れてなかったんですが、逆にそれで集中できた部分はあるかもしれません。自分の中では初日で慣れる予定だったんですけど、とにかく思っていたよりも大変だったので、慣れるように頑張って、集中して走ったという感じです。

──周囲のドライバーや、スタッフとのコミュニケーションはいかがでしたか。
平川:レースウイークは、スタッフもドライバーもレースに集中しているので、こちらからはあまり話しかけないようにしていました……まぁ、もともと自分からしゃべるタイプではないですけど(笑)。レースが終わってからは、エンジニアを探してしゃべったり。エンジニアの方々もかなり(4~5年前のLMP1テスト時とは)変わっていて、誰が何を担当しているかというのが分からなかったので、その辺を探っていくところからでした。ドライバーは前と(ほとんど)変わっていませんし、日本人のふたり(※可夢偉・中嶋一貴)にはいろいろと聞いて頼りになりましたし、そこは問題ありませんでした。

──テスト後、チームからは平川選手の働きぶりについて、評価やコメントはあったのでしょうか?
平川:正直、それがないので、僕が不安です(笑)。

──そうなんですね。平川選手としては「オーディションされている感」はありましたか?
平川:もちろんあったと思います。たとえば、(運転中に)「ディスプレイの明るさを変えてくれ」とか、「サインボードを見て、読んでくれ」とか、(テスト・プログラム自体には)必要がなさそうなことを試されたな、という感じはありました。ただ、自分としてはオーディションどうこうというよりは、チームにとってはル・マンに向けた大切な時間なので、そこで少しでも力になれるように働いた、という感覚です。

──テストを終えてみての手応えなど、改めて総括していただくとすると、いかがでしょう。
平川:正直、ブレーキなど、クルマに慣れ切ることができなかったというのが唯一、ちょっとあんまり……。耐久テストも慣れないままスタートし、夜も慣れないままで、次はいろいろやろうと思っていたら最後雨だったりと、自分としてはできなかったことも多いんですけど、別に大きなミスもなかったですし、前に何回か(LMP1を)テストさせてもらった4~5年前と比べたら、全然うまくやれたと思います。

──ドイツに行ってから2週間以上という長いヨーロッパ滞在でしたね。
平川:ドイツは、僕が行ってから店が開きだしたので、なんとか救われた感じでした。ポルトガルに着いてからはチームと一緒なので、別にどこにも行かないし、食事は(サーキットに)チームのでっかいホスピタリティがあるし、その辺は困らなかったです。

──なるほど。
平川:ただ、PCR検査がしんどかったです。一番の不安はそれでした。正直、クルマに乗ることよりも。日本出る前にやって、TGR-Eに入るのにもやって、ポルトガル入国のためにやって、サーキットに入る前にもWECの検査があって。帰国前と日本到着後の検査も含めたら、全部で6回。もう、陽性になってしまったらすべてが終わるので、絶対に感染しないようにとずっと気をつけていて、そこが一番のストレスでしたね。

──ご無事で良かったです。
平川:本当に良かったです。

* * * * * *
 国内のトップを極めた者にとっても、ハイブリッド・システムを積むレーシングカー、ましてや規定変更に伴い生まれたばかりの、煮詰まり切っていない車両の初めてのテストドライブは、簡単ではなかったようだ。

 平川はいつものように淡々と話してくれたが、最後に口にしたPCR検査への緊張感からも想像できるように、並々ならなぬ決意を持って臨んだはずだ。それだけに『最後までマシンに慣れなかった』ことには、悔しさも残しているように感じられた。

 平川はこの先のテスト等の予定について「話を進めてはいるけど、正直、決まっていません」と語ったが、次なるチャンスが得られ、より熟成の進んだマシンで、さらなる走行機会を積んだうえで、その“将来”に向けた評価がされることを期待したい。

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みんなのコメント

3件
  • 平川を以てして。

    習熟レベルに関するコメントから熱い戦いの舞台に向けた緊張感が伝わります。

    壊してはならない、だがクルマの限界を正確に理解することも求められる、走行後には有意義なデータをチームに提供しなくてはならない。

    なにしろ遅いのは話にならない。

    平川選手、魅せてほしいと願います。

  • 平川選手は若いけれど武士のような風格をたたえ誠実な中に熱い心を感じさせる、僕が大好きなレーシングドライバー。

    村田監督も熱い気持ちを胸に秘めた寡黙な男、二人の相性は良さそう。

    昨秋の富士のコース脇でガードレールを叩く彼の姿をスタンドからまともに見てしまった、帰路の車中でのやり切れなさ。

    今春の富士では予選から切れ味は鋭かったが決勝でのラスト数週の追い上げに気迫を感じた、いい仕事をしている。

    国内ではGTでチャンピオンを取り、3年も待って次の舞台で輝く姿を見るのが待ちきれない、彼の想いはかなう。

    心から応援している。

※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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