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【2023年インディカーをゼロから学ぶ】ダブルポイント廃止でより混戦模様の王者争い。オーバルに専念の琢磨にも期待

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【2023年インディカーをゼロから学ぶ】ダブルポイント廃止でより混戦模様の王者争い。オーバルに専念の琢磨にも期待

 3月3~5日にセント・ピーターズバーグで開幕戦を迎える2023年のNTTインディカー・シリーズ。ここでは2023年シーズンのインディカーをより楽しめるよう、基本的なレギュレーション、シーズンエントリー状況や、開催スケジュールといった各種情報を改めてお伝えする。

 2023年シーズンのNTTインディカー・シリーズでは引き続き、ダラーラDW12のワンメイクシャシーで競われる。ダラーラDW12は2012年に導入され11年目を迎えるシャシーだが、例年細かなアップデートが施されており、2020年シーズンからはエアロスクリーン型ドライバー保護デバイスを装着し、見た目も大きく変化を遂げた。

HPDがインディカー用ハイブリッドパワーユニット搭載の『CR-Vハイブリッド・レーサー』を開発

 エンジンは引き続き、ホンダとシボレーの2メーカーが供給する2.2リッターV6ツインターボを使用。来シーズンからは2.2リッターV6ツインターボにハイブリッドモーターを組み合わせたパワーユニットが導入される予定だ。
 

 
 2023年シーズンからは燃料が100%再生可能燃料に変更。2019年より85%のエタノールに15%のハイオクを混合したE85燃料が使われてきたが、今後はシェルがインディカー用に開発したサトウキビの廃棄物から作られる第二世代エタノールと他のバイオ燃料を混合した燃料を使用する。

 タイヤは、今シーズンもブリヂストンの北米子会社であるファイアストンがワンメイク供給し、ストリートとロードコースではハード目のプライマリータイヤとソフト目のオルタネート・タイヤの2スペックが使用される。プライマリータイヤは通称“ブラックタイヤ”、オルタネートタイヤはサイドウォールがレッドに彩られていることから“レッドタイヤ”とも呼ばれる。

 5回あるストリートコースでは、昨年投入した天然ゴムに代わって砂漠で育つグアユールの木か抽出した原料を使用する“グリーンタイヤ”を導入。これも新燃料と同じくサスティナブルへの取り組みだ。
 


 
 レース中のオーバーテイク機会を増やす試みとして、『プッシュ・トゥ・パス』が導入されていることもインディカーの特徴だ。これはロード、ストリートコースでのレース中、1回の使用で20秒間ターボ過給圧を増加させ、その間、出力が約60馬力向上するというシステムだ。サーキットごとに使用時間は異なるが、レース中、合計200秒間使用でき、各ドライバーはここぞという勝負所で使用する。

 レース終盤では、どのドライバーがどのくらい『プッシュ・トゥ・パス』が残っているのか、そしてどこで使用するのかもレースを観るうえでチェックしておきたいポイントだ。

 また、インディカーではピットストップ戦略が大きな鍵となる。燃料補給、タイヤ交換をスムーズに実施することはもちろんのこと、ロード/ストリートではブラック(ハード)とレッド(ソフト)というコンパウンドの異なる2種類のタイヤの使用義務があるため、どちらのタイヤでスタートするのか、摩耗の早いレッドタイヤをどこで投入し何周走るのかも順位を左右するポイントとなる。

 さらに、アクシデント発生時に導入されるローカルイエロー(ロード/ストリートのみ)やフルコースコーション導入のタイミング次第ではピットインでポジションを大きく上げる、もしくは下げることもあるため、各チームはフルコースコーション導入も見越した上でピットストップのタイミングを見極めなければならない。

 ドライバーの腕やマシンのセットアップだけではなく、ピットストップのタイミングを見極めることもインディカーを制する重要な要素となる。


■ダラーラDW12主要諸元表
メーカーダラーラ(イタリア)モデル名ダラーラ IR-12(DW12)素材炭素繊維、ケブラーなどの複合素材重量約1630ポンド(ロード/ストリートコース)、約1620ポンド(ショートオーバル)、1590ポンド(スピードウェイ)(燃料、ドライバー等は含まず)全長約201.7インチ全幅最大76.5 インチ, 最小75.5 インチ全高約40インチ軸距117.5~121.5インチフロントホイール直径15インチ、幅10インチ、最低重量: 13.48 ポンドリヤホイール直径15インチ、幅14インチ、最低重量: 14.7 ポンドタイヤ銘柄ファイアストン製ファイアホークフロントタイヤフロント 最大26インチ、最小25インチ @ 35 psiリヤタイヤリア 最大 27.5インチ、最小26.5インチ @ 35 psiブレーキPFC製CR90モノブロックアルミキャリパー、カーボンブレーキディスク&パッドギアボックスXトラックス製ギアボックス 6速パドルシフト燃料タンク18.5USガロンエンジンメーカーホンダ、シボレーエンジン形式2.2L V6 ツインターボエンジン最低重量248 ポンドターボボーグワーナー製EFR 7163ツインターボチャージャーエンジン回転数最大12,000 rpm(レブリミッター装備)最大ブースト圧1300 mbar(スーパースピードウェイ)、1400mbar(インディ500予選)、 1500mbar (ショートオーバル、ロード/ストリート)、 1650mbar (プッシュ・トゥ・パス使用時)馬力550-700 馬力(サーキットごとのターボブースト圧で異なる)燃料E85燃料(エタノール85%、ガソリン15%のブレンド)インジェクター1気筒あたり最大2つのインジェクター、1つは直接噴射用、最大燃料システム圧力は300バールECUマクラーレン・アプライド・テクノロジーズ製TAG-400iスロットルドライブバイワイヤ制御 ポートスロットル

■佐藤琢磨はオーバルに専念

 2022年シーズンは、最終戦までシリーズを代表する2チーム、チーム・ペンスキーとチップ・ガナッシ・レーシングのドライバーたちがチャンピオンを争い、チーム・ペンスキーのウィル・パワーが2014年以来となる2回目のシリーズチャンピオンを獲得した。

 チーム・ペンスキーは、ディフェンディングチャンピオンのパワーを筆頭に、2017、2019年の王者ジョセフ・ニューガーデン、そして昨年3勝を挙げシリーズ4位となったスコット・マクラフランの盤石の体制で今季も挑む。
 

 
 一方、ライバルのチップ・ガナッシ・レーシングは、シーズン中に2022年王者のアレックス・パロウの移籍問題が生じたが、パロウは残留。インディカー最強ドライバーとして君臨するスコット・ディクソン、昨年のインディ500王者マーカス・エリクソンの3名に加え、ルーキーのマーカス・アームストログをロード/ストリートコースで起用。

 そして、アームストロングとマシンをシェアしオーバルレースにチップ・ガナッシから参戦するのが佐藤琢磨だ。

 参戦14年目はオーバルレースのみのフル参戦とはならなかったが、名門チームへ移籍して挑む第107回インディ500では今年も優勝争いが期待される。琢磨の今季の最大の目標は、2017、2020年に続く3度目のインディ500制覇だ。

 琢磨が参戦するのは、インディ500のほかに4月のテキサス戦、7月のアイオワ2レース、8月のゲートウェイ戦の合計5レースだ。インディカーでの7勝目も期待したい。
 

 
 2チームのほかに注目なのがアロウ・マクラーレンSPだ。年々チーム力をアップさせているマクラーレンは、パト・オワードとフェリックス・ローゼンクヴィストに加え、2023年は長年アンドレッティ・オートスポートで参戦していたアレクサンダー・ロッシが加入。新たなチームで再び輝きを見せることができるだろうか?

 アロウ・マクラーレンSPはインディ500でトニー・カナーンの起用も決定している。このレースを最後にインディカーを去ると発表しているベテランドライバーのカナーン。ラストレースでの奮闘にも注目したい。
 

 
 ロッシが抜けたアンドレッティ・オートスポートは、コルトン・ハータ、ロマン・グロージャン、デブリン・デ・フランチェスコに加え、AJ.フォイト・レーシングからカイル・カークウッドが移籍する。

 カークウッドは、インディ・ライツ(今季からインディNXT)時にアンドレッティ・オートスポートでチャンピオンを獲得。古巣へ戻っての活躍が期待されている。

 ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したクリスチャン・ルンガーはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングから引き続き参戦。ルンガーとルーキー・オブ・ザ・イヤーを争ったマーカス・マルーカスもデイル・コイン・レーシングと変わらない体制だ。

 予選で速さを見せたカラム・アイロットが所属するフンコス・ホーリンガー・レーシングは、2023年から2台体制となり、もう一台をアルゼンチン国内で通算15回のツーリングカー王者獲得経験を持つアグスティン・カナピノがドライブする。チーム力拡大によるアイロットの走りにも注目だ。

 レース開催サーキットのバラエティさもインディカーの魅力のひとつだ。

 世界3大自動車レースに数えられるインディ500を筆頭に、オーバル、ロード、ストリートのさまざまなサーキットでレースが繰り広げられる。それぞれ、走り方や作戦も大きく異なるから、インディカーはファンを飽きさせることのないシリーズとも言えるだろう。
 2023年シーズンのNTTインディカー・シリーズも引き続き17戦で開催。ベルアイルパークで開催されていた6月のデトロイトGPは、デトロイト市街地での開催に変更となっている。

 また夏は過密なスケジュールとなっており、9週間で8レースが実施される。ここで波に乗ることができるかが、チャンピオン争いにも大きく影響してくるだろう。
 

 
 インディカーのポイントシステムは、1位が50ポイント、2位が40ポイント、3位が35ポイントで決勝順位によってそれぞれポイントが与えられる。さらにリードラップを記録したドライバーに1ポイント、最多リードラップを記録したドライバーに2ポイント、ポールポジションを獲得したドライバーに1ポイントと1レースで最大54ポイントが獲得できる。

 また、今シーズンからインディ500で設定されていたダブルポイント制度がなくなったため、1レースでチャンピオン争いを大きくリードすることはさらに難しくなっている。

 毎年コンペティティブなレースが繰り広げられるインディカーレース。昨年は9レースで9人のポールポジションが生まれるなど予選から激しい争いとなっている。今年もその戦力図は変わらないだろう。

 チーム・ペンスキーとチップ・ガナッシの2強の王者争いとなるのか? それともアンドレッティ・オートスポート、アロウ・マクラーレンSPのドライバーたちがかかわってくるのか? まずは開幕戦で誰が好スタートを切るのか注目してほしい。


■NTTインディカー・シリーズ2023年レースカレンダー
日程開催場所コース3月5日セント・ピーターズバーグ市街地ストリート4月2日テキサス・モータースピードウェイオーバル4月16日ロングビーチ市街地ストリート4月30日バーバー・モータースポーツパークロードコース5月13日インディアナポリス・モータースピードウェイロードコース5月28日インディアナポリス・モータースピードウェイオーバル6月4日デトロイト市街地ストリート6月18日ロードアメリカロードコース7月2日ミド・オハイオ・スポーツカーコースロードコース7月16日トロント市街地ストリート7月22日アイオワ・スピードウェイオーバル7月23日アイオワ・スピードウェイオーバル8月6日ナッシュビル市街地ストリート8月12日インディアナポリス・モータースピードウェイロードコース8月27日ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイオーバル9月3日ポートランド・インターナショナル・レースウェイロードコース9月10日ウェザーテック・レースウェイ・ラグナセカロードコース

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