生産台数は802台しかない
イギリスの高級車……というよりも、全世界で高級車といえば誰もがその名前を挙げるロールス・ロイス。今回は、2024年10月9日~10日にRMサザビーズがアメリカで開催したオークションに出品された1988年式の「シルバー スパー」のモデル概要とオークション結果を紹介します。
3万7000台も売れたロールス・ロイス! 10年の予定が30年以上も貢献した「シルバーシャドウ」とは一体どんなクルマだった?
アップデートを繰り返しながら2000年まで生産
その堂々たる佇まいは、現代においても十分に魅力的なものであるが、その一方で維持費の高いという噂も飛び交う、この時代のロールス・ロイス。はたしてオークションに参加するビッター(入札者)はそれにどの程度の評価を下すのだろうか。興味は尽きない。
「シルバー スパー」は、それまでの「シルバー レイスII」の後継車として、1980年のパリ・サロンで発表されたモデルだ。同じく「シルバー シャドウII」の後継車として誕生した「シルバー スピリット」のロングホイールベース版として位置づけられるもので、両車のホイールベースの違いは100mm。ちなみにシルバー スパーには、さらにホイールベースを延長したリムジンも存在したのだが、その話はここでは割愛させていただくことにする。
シルバー スパーの生産は、最終的には2000年まで継続されるから、ロールス・ロイスは20年近くもその生産を続けてきたことになる。もちろんその生産期間中にはアップデートも加えられ、一般的にシルバー スパーは1980年から1989年まで生産された第1世代を筆頭に、1989年から1993年までの第2世代、1993年から1995年までの第3世代、そして1995年から2000年までの第4世代と大別される。
ちなみに第2世代と第3世代のシルバー スパーには、それぞれ「II」、「III」のサブネームが加わるが、最終の第4世代はシンプルにシルバー スパーと呼ばれる。ベースのシルバー スピリットが、同世代で「シルバー ドーン」と名称変更されたのとは対照的である。
エンジンは6.75リッターV8ターボを搭載
実際に、シルバー スパーIIIから、最終型のシルバー スパーへの進化で行われたアップデートは、さほど大規模なものではない。サイドの三角窓が廃止され、ドアミラーの取り付け位置もAピラーの付け根に移動。前後バンパーはカラード化され、さらにロールス・ロイスの象徴ともいえるフライングレディのマスコットとフロントグリルは、いずれもそのサイズが20%、2インチ縮小されている。
前後に装着される16インチ径のホイールも、そのデザインが一新され、フロントバンパーはカラード化されたほか、新たにエアダムが装備されるようになった。300ps仕様の6.75L V型8気筒ターボチャージド・エンジンを搭載し、最高速では235km/hと運行性能を向上させたシルバー スパーには、これらのアップデートは必要にして不可欠なものといえたのかもしれない。
この1988年式シルバー スパーは、シルバーパールのボディカラーにサンドストーンのファインライン(ピンストライプ)を施して工場から出荷されたモデル。インテリアはサンドストーンレザーでトリミングされ、サハラの羊毛、ラグとパールウッドおよびソフトレザーのアクセントが施されている。
左ハンドル仕様であることからも想像できるように、このモデルはアメリカ仕様として生産されており、ファースト・オーナーにはカリフォルニア州ラホーヤに本社を置く著名な高級車ディーラー、シンボリック・モーター・カー社を通じて販売された記録が残っている。
現在の走行距離は約7万9334キロ
その後コロラド、ニュージャージー、そして2015年に改めてコロラドに在住するオーナーの手に渡った後、新しいラジエターやエアコンベルト、エアポンプベルト、オルタネーターベルト、ツインドライブベルトの交換などを含む整備が行われ、現在の走行距離、4万9584マイル(約7万9334km)を刻むに至っている。
このオークションに、主催者のRMサザビーズは、1万5000ドル~2万ドル(邦貨換算約223万円~297万円)のエスティメート(予想落札価格)を最低落札価格なしの条件で掲げたが、ハンマーが振り下ろされたのは、そのレンジを超える2万7500ドル(邦貨換算約409万円)という数字にまで入札が進んだ時だった。同社の調べによれば、この最終型のシルバー レイスの生産台数はわずかに802台。すでに希少性という意味でも、それは独自の価値を生み出しているようだ。
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みんなのコメント
国内のロールスロイス専門の某ミュージアムに、このヴィッカース末期の車両を「要らないのがあるけどあげましょうか?」と言われたことがあります。
中古市場の相場はこの通り、しっかり直してあっても500万がいいところ。
ところが、止めてるだけで車重のためにすぐ抜けるエアサス150万円を筆頭に、あれやこれやと直す費用が5~6百万は当たり前でかかってしまう、と。
工賃も取れずで、直して売るのも赤字だから寝かせているしかない車両があって困っている、とのことでした。
たぶん、全国あちこちにそんな事情の個体が眠っていると思います。
ターボ付きはベントレーでは?
詳しい方、教えてください。