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伝説のレーシングドライバー浮谷東次郎も手を焼いた「トライアンフTR4」【東京オリンピック1964年特集Vol.21】

掲載 更新 25
伝説のレーシングドライバー浮谷東次郎も手を焼いた「トライアンフTR4」【東京オリンピック1964年特集Vol.21】

前回東京オリンピック開催年、1964年を振り返る連載21回目は、driver1964年8月号に掲載した「トライアンフTR4」について。当時そのステアリングを握ったのは、伝説のレーシングドライバー、浮谷東次郎だ。

※該当記事は、ページ最下部に
スポーツカーの楽しさを伝えたトライアンフ
1964(昭和39)年のdriver誌8月号では、前回のパブリカ コンバーティブル(連載第21回)とともに、もう一台のオープンカーを採り上げている。イギリスの伝統的スポーツカー、トライアンフTR4だ。

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エンスー度が高くない筆者は、車名とクルマはとりあえず一致するものの、トライアンフの歴史については寡聞にて知らない。調べてみると、現存する2輪ブランドとは1930年代に分離。4輪ブランドは終戦のころ、同じくイギリスの自動車メーカーだったスタンダードの傘下に入った。試乗記のトビラを飾るエンブレムは、なるほど「STANDARD TRIUMPH」である。

●TRは「TRIUMPH ROADSTER」の頭文字

ただ、同社も1960(昭和35)年にはレイランドに買収され、この時はすでにその傘下だ。イギリス自動車産業の凋落は、すでに始まっていた。
「スタンダード・トライアンフ社のTRシリーズは、10年前の54年のTR2から始まる。(中略)こうしてトライアンフTR2/3は、延々7年間も続くことになる。そして、突然その静粛を破って、TR4が61年に現れる」(文中より、以下同)

●左からスピットファイヤー1500(74年製)、TR4A(66年)、TR4A(65年)、TR3A(60年)、TR3(57年)。driver1990年7-5号より

試乗レポートは浮谷東次郎。浮谷は「精鋭ロータスに乗る」(連載第7回)でロータスを愛車とするレース仲間の協力を仰いでいるが、今回のTR4も同じく癸生川 忠成(けぶかわただしげ)氏のオーナーカーだ。

車両価格はベースモデルの2Lでも168万円。この個体はマカオGP出場を目指し、さらに本国で100万円以上もの改造が施されたという。当時販売中の車種で言えば、クラウンエイト(連載第12回)の車両価格に、クラウン デラックスやセドリック カスタムが1台買える改造費が注ぎ込まれたことになる。当時、日本GP(連載第10回)に出場したようなレーサーや輸入車のオーナーは、やっぱりほとんどの皆さんが相当なおカネ持ち。

浮谷がTR4の出現を「突然その静粛を破って」と言ったのは、そのデザインがジョバンニ・ミケロッティの作に一新されたからだ。ミケロッティはこの時代に一連のトライアンフのデザインを担当。ブリティッシュ・ライトウエイトスポーツで名高いスピットファイアも、その一台だ。また、プリンスの初代スカイライン スポーツ(1962)や日野コンテッサ1300(1964)を手がけたことでも知られる。

当時でもすでに古典的スポーツカーだったTR4
TR4は今から見れば古典中の古典。しかも、レポートには半世紀以上前の当時で「今日ではすでに古典的スポーツカーの粗野なライドを示す」、と評されている。これは乗り心地について。戦前に基本設計されたハシゴ型フレームやシャシーは、TR3からほとんど変わっていなかったのだ。

ハンドルは軽くクイックで、「スポーツカーとしての高度の水準からみても、TR4のステアリングは一流」。しかし、箱根旧道の下りでは強いアンダーステアを露呈した。パワースライドを使うとオーバーステアへ急激に変化するため、なかなか扱いにくい。

「TR4は、やはりアンダーステアのハンドリングの範囲内におさえて走るべきスポーツカーなのだろう」

そして、試乗車はノーマルのサスではないという前提で、ハンドリングは「一応満足できるものがあった」という評価。TR4の運動性能を公道で存分に引き出すには、伝説のレーシングドライバーも手を焼いたようだ。

浮谷が感じたアンダーステアには、パワートレーンにも一因がある。

試乗車のエンジンは2.2Lで、ノーマルでも100馬力・17.5kgmを発揮。そこへヘッドを中心に本格的チューンアップが施され、パワーは135ps/6580rpmに達している。一方、オープンボディは全長が4mを切り、車重も1トンに満たない軽さ。このボディのサイズ感やパワーウエイトレシオは、現行のマツダ ロードスターSにとても近い。加速性能は当時でかなりのものだったに違いない。

●「外誌のロードテストによると、このスペシャル・チューンのTR4は、0~96km/hまで8.6秒、0~160km/hまで22.8秒の加速を持つ」(文中より)。マツダ ロードスターSの本誌テストデータは0~100km/hが8.61秒で、実際の加速性能も互角なのだ

「スピードメーターをのぞくと、自分で予想していたスピードより1~2割も速いスピードが出ているのに気づく」

しかも、ボディの全幅は現在の軽自動車並みに狭く、タイヤグリップももちろん低い。アンダー・オーバーのハンドリング特性もむべなるかな、なのである。

試乗記でもう一つ興味深いのは、フルシンクロの4速MTにオプションで付けられたというオーバードライブ。なんと電気式で、2~4速で作動するという。つまり、2速でスイッチを操作するとギヤ比は2-3速の中間、3速なら3-4速の中間、4速ならいわば5速代わりという具合だ。

この年代のクルマに、こんな副変速機的メカがあったとは! どういう機構かわからないが、個人的にはホンダの初代シティに85(昭和60)年投入された「ハイパワーシフト」(1985年)が頭に浮かんだ。ご存じの方がいたらご教授願いたい。

スタンダード・トライアンフを買収したレイランドは、68(昭和43)年にブリティッシュ・モーター・ホールディングス(BMH)と合併し、国有企業のブリティッシュ・レイランド(BL)が発足。イギリスで主要な10ブランドが一傘下に収まり、トライアンフもその一つになった。それでもイギリスの自動車産業界は低迷の一途をたどり続けた。
79(昭和54)年、BLはホンダと技術提携。初代バラードの現地生産版として、トライアンフ アクレイムが誕生する。それが同ブランド最後の乗用車となった。

●写真は初代バラード 1300 FG

〈文=戸田治宏〉

※該当記事は、下記参照

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みんなのコメント

25件
  • 最初っからEV専用じゃないし日本導入はガソリンからってアナウンスしてたじゃん。
    別にMazdaファンじゃなくてもちょっと調べればわかる事なのにね。
  • 今更マイルドハイブリッドでお茶を濁さないで、本命のロータリーエクステンダーを出すべきではないか。
    EVもリース販売だけとか、売る気が無いんだったらもう販売なんかしなくてもいい!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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