この記事をまとめると
■シリンダー内を高圧縮して燃焼させるディーゼルエンジンは音や振動が弱点とされている
これだけクルマの技術が進歩してもディーゼルエンジンの「ガラガラ音」が消えないワケ
■確かに2010年代頃までのディーゼルエンジンの音はかなり大きかった
■最近のディーゼルエンジンは静かでパワフルで楽しい乗り味になっている
「カラカラ」というエンジン音が商用車っぽかった
ディーゼル乗用車は、カラカラという音がする。そんなイメージを持っている人は最近、かなり減ってきているのではないだろうか。または、いまでもそうした印象を持っている人が、最新のディーゼル車に乗ると、「本当にこれがディーゼル?」と驚くはずだ。
改めてディーゼルエンジンの基本構造について簡単に触れると、エンジンのシリンダー内部をガソリンエンジンに比べて高圧縮した状態で、燃料を噴射することでシリンダー内部の燃焼を起こす仕組みだ。スパークプラグによってシリンダー内部の混合気に点火し燃料させるガソリンエンジンに比べて、ディーゼルエンジンは燃焼の際に発生する音や振動が大きいとされてきた。
時計の針を少し戻すと、筆者が初めて実車でディーゼル乗用車に触れたのは、1970年代中盤のメルセデス・ベンツだった。一般路での走行では、いわゆるカラカラ音がかなり大きかったことを思い出す。
1980年代になると、コラムシフトの日産セドリックディーゼルにも触れる機会が多かったが、タコメーターが装備されていなかったため、カラカラ音の大きさでシフトアップのタイミングを見計らっていたほどだ。
1990年代になると、ドイツや欧州を巡る機会が増え、メルセデス・ベンツ、BMW、フォルクスワーゲンなどのディーゼルエンジン車を頻繁に乗ったが、燃料噴射機構の発達によって、エンジンからの振動音が1980年代に比べるとかなり少なくなった印象を持った。
2000年代、欧州ではディーゼル乗用車が主流となる国が多かった一方で、日本では1999年8月に、当時の石原慎太郎東京都知事が「ディーゼル車NO作戦」と称してディーゼル車規制を始めた影響で、国内メーカーのディーゼル乗用車は次々と姿を消した。日本市場では一部のドイツ車でディーゼル乗用車が輸入されたが、販売数は限定的だった。
音も静かで振動も少ない最近のディーゼルエンジン
日本市場でディーゼル乗用車の新しい時代の幕開けとなったのは2012年だった。マツダのSKYACVTIV-Dは、ディーゼルエンジンの常識としては異例となる、圧縮比を下げてもシリンダー内の燃焼を有効に行い、しかも後処理の装置が簡素化できるという画期的な技術だ。エンジン音もかなり低くすることに成功した。
その当時、マツダ関係者によると「ドイツを含めて、情報交換や技術交流を念頭に、世界の自動車メーカー各社から問い合わせが多く来た」と話していたことを思い出す。
SKYACVTIV-Dはその後、より効率的な燃焼を実現し、またエンジン振動を機械的に弱める技術を採用し、さらに車体構造で音や振動への対策も進んできた。
直近では、CX-60に採用した3.3リッターディーゼルのプロトタイプを、マツダのテストコースで試走した際、1970年代から段階的に体感してきたディーゼルエンジンの進化が「ここまで来たか」と思わず車内で声が出てしまうほど、静かでかつパワフルで楽しい乗り味になっていた。
その他、ディーゼルエンジンの音や振動の少なさでは、BMWの優秀さを改めて実感することが多い。
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